全員参加を目指してほしい

先日、市の初任者対象の研修を行ってきました。ここ何年かは初任者に模擬授業を行ってもらい、それを元に私が解説をする形式で行っています。今年は小学校5年生の算数の授業をグループで教材研究してもらい、その中から2チムーの代表に模擬授業をしてもらいました。

共通して感じたのは、どの先生も子どもの発言を大事にしようとしていることです。ペアやグループで相談する場面も作ろうとしています。子どもたちの活動場面をきちんと授業の中に組み込もうとしていました。模擬授業からも、日ごろからよい表情で子どもたちとのコミュニケーションを取れる先生方だと感じました。
しかし、一人に発言させるとすぐに自分で説明をするか、逆に次々答えさせるだけになっています。子ども同士をつなぐことができません。「同じ考えの人?」とは聞きますが、挙手をさせるだけで発表はさせないのです。同じ考えといっても、説明させれば何か足されていくかもしれません。また、挙手しなかった子どもに「じゃあ、あなたの考えを聞かせて?」と問いかけるといったことも必要です。結局、一部の子どもの発言だけを受けて、肝心なところは自分で説明してしまうのです。挙手をしない子どもは、友だちの意見を聞かなくても先生の説明を聞いていれば困りません。授業者は全員参加を願っていますが、結果的には参加する必要のない授業になっていました。
ペアやグループで相談させた後、挙手で結論を発表させようとしますが、先生が子ども役でもすぐに手は挙がりません。「答は?」と聞けば、自信がなければ挙手できません。「どんなことを話したか」と過程を大切にして聞く必要があります。

授業のねらいも気になりました。1000円より高いものと安いものを合わせて2000円で買えるかというのが課題です。実際に計算させてから、別の方法を見せてその考え方を説明させ、そのよさに気づかせようとしています。しかし、子どもたちが筆算で計算して答がわかれば、特に見積もる必要はありません。子どもたちは先生が説明しろというので考えますが、自分で説明したいとは思いません。やり方も示されているので、基準との差を差し引いて見積もるという方法を知ることがねらいとなっています。そうではなく、その考え方を子どもたちに自身で気づかせ、説明できることをねらってほしいと思います。
例えば、1000より高いものを2つ提示して、「2000円で買える?」とテンポよく聞き、「買えない」と何人にも言わせ「理由は?」「説明して?」と問いかけます。続いて今度は1000円より安いものを2つ提示して同様に問いかけます。ここで、本時の課題の数値で、「2000円で買える?」と問いかけるのです。子どもたちに即答を求めて次々指名します。中には計算を始める子どももいるでしょう。そういう子どもがいれば「計算しているね、どういうこと?」と問いかけます。子どもから、「1000円より高いのと安いのだからできない」という言葉を出させてから、「本当?できない?」と返して、そこからスタートします。こうすることで、子どもたちが自分で考え、説明しようとしてくれると思います。子どもたちに疑問や課題意識を持たせることが主体性につながるのです。

授業技術のヒントになるように、できるだけ先生方に問いかけ、つなぎながら解説を進めました。アンケートでは、「一問三答やこどもの話を聞くときの目線や場の雰囲気のつくり方など、早く実践したてみたい」、「2学期が始まるのがとても楽しみです」といった感想をいただけました。先生方のエネルギーに少しでもなったのならとてもうれしいことです。私も参加者から多くのエネルギーをいただきました。
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