先生方とたくさん話をした1日

私立の中学校高等学校で、終日先生方からの相談を受けました。

中学校の数学担当の2人からは、子どもたちの数学の学習状況について報告と相談を受けました。
「中3については数学に対するエネルギー、学力ともに低下している」「中2については中間層から上は学力が伸びてきているが、下位層は低位のまま変化がない。その一方で数学に対するエネルギーは全体的に低下している。子どもたちに学習することを求めすぎたせいだろうか?」「中1はあまり変化がなく伸びが感じられない」ということでした。
節目節目で子どもたちの状況をチェックして次に生かそうとする姿勢は素晴らしいものです。成績を伸ばそうと頑張りすぎたことが、子どもたちのエネルギーを低下させたと、自分たちでしっかりと分析できていました。このことはよくあることで、決してマイナスばかりではありません。要は頑張りが結果につながり、きちんと価値づけられているかどうかなのです。特に数学は、努力が結果となるのにタイムラグのある教科です。取り組んでいることの意味をしっかり価値付けし、結果が出るまで励ます姿勢が大切です。
また、この日の授業でポイントなることは何か、課題を解決するために必要な既習事項は何かといったことを明確に構造化し、授業の振り返りで子どもたち自身の言葉で整理することも求められます。
誤答分析も大切になります。子どもたちのつまずきの原因は何かを明確にして、どう解消するかを意識した授業づくりが必要です。また、1学級当たりの生徒数が少ないので、個別指導に頼る傾向がありますが、今後生徒数は増加する見込みです。子ども自身が課題解決することを意識した授業構造にしてほしいと思います。
挑戦してすぐに結果が出ることは稀です。しかし、つねに改善しようという姿勢で授業に取り組んでいれば、必ず結果は後からついてきます。若い先生方なので、これからに大いに期待したいと思います。

社会科の若手からは、この1年間を振り返って課題と感じていることについて相談を受けました。
「以前は、試験に出る知識を一方的に教えていたが、子どもたち考える力をつける授業への転換を図っている。そのためには、色々な意味で子どもたちに聞く力をつけることが大切だ」と考えています。大切な視点に気づけています。ポイントとなるのは、子どもたちに「聞くことの価値に気づかせる」「聞いていてよかった」と思わせることです。そのためには、結果である答を聞くのではなく、解決の過程を聞き、自身の問題解決に他者の意見を聞くことが役立つことを実感させることが重要になります。また、それ以前に聞こうとしないようであれば、聞いていること、聞く姿勢をほめることから始めるとよいでしょう。答がわからないために参加できない子どもには、「今の意見どう思った?」「納得した?」「どこでそう思った?」と、聞いていれば答えられることを問いかけることが有効です。しっかりと聞いていれば活躍できることを経験することで聞くことに前向きになっていきます。また、グループ活動で自分の意見を持たせてから互いに発表させると、自分の考えを強く主張する傾向があります。一方、自分の意見がまとまっていない子どもは、聞く以前に参加できなくなることがよくあります。まず友だちと考えを聞き合ってから自分の考えをまとめるようにすると、聞くことの有用性を感じることができます。
この他にも、「来年度は担任を持つ可能性が高いが、授業でもまだまだ大変なのにやっていけるのだろうか」と不安を口にしました。難しく考えずに、毎日子どもたちをよく見ることから始めるようにアドバイスしました。まずは毎朝の挨拶で、子どもたち全員の顔を上げさせ、元気な顔を見てうれしいことを伝えることから始めるとよいでしょう。
担任として子どもたちに1年後にどうなってほしいのかを意識することも大切です。そのために、「学期ごとにどうなっている必要があるのか」「ではこの月には」「今週は」とスモールステップに分解して、ていねいに積み上げていくことを意識してほしいと思います。
行事予定に設定された面接期間以外にも、プチ面接をたくさんするとよいこともアドバイスしました。日ごろから声をかけることができればよいのですが、中学高校では、担任が学級の子どもたちとかかわる機会は思いのほか少ないものです。「どう、元気にやっている」と一言二言を交わすだけでもよいので、全員と面接する機会をできるだけ多く持つとよいでしょう。時間の節約と子どもたちの人間関係の把握を兼ねて、「最大5人程度」「誰と一緒でもよい」「もちろん一人でも可」とグループで面接をしてもよいでしょう。この時は「最近○○さんは△△で頑張っているように見えるけど、どう?」と子どものよいところを具体的にほめながら他の子どもに問いかけると、自己有用感が高まると同時に、よい行動が広がります。気になる子どもだけを呼んで面接することは、他の子どもから何だろうと思われることになりますので、そういう点でも全員とプチ面接するという方法が有効になります。
1年を振り返り次年度に向けて準備を始めています。成長しよう、したいという意欲を強く感じました。壁はあるでしょうが、この姿勢で乗り切ってくれることと思います。

社会科の中堅の先生からは、子どもたちと取り組んだSDGsの活動報告と来年度への展望、発表予定の論文についてお話をうかがいました。
お話でとても印象に残っているのは、「子どもたちを信じて、子どもたちにまかせることで自分の想像以上の発想が子どもたちから出てくる」という言葉です。「自分の仕事は子どもたちと外部をつなぐ、子どもたちの発言、発信をどれだけ拾うかで、あとは子どもたちが自分で広げ深めてくれる」とうれしそうに話してくださいました。
学校がよい方向に変化していく中、新しい授業スタイルに挑戦することで、今までとは違う世界が見えてきたようです。授業を楽しんで前向きに取り組んでいる姿をとてもうれしく思いました。

英語の先生からは、「日ごろのグループ活動等で子どもたちから、聞こう、相談しようというエネルギーが感じられない。この姿をどう変えていけばよいか」と相談を受けました。
子どもたちにとって自力で課題解決するにはギャップが大きすぎることが原因の一つとして考えられます。自分でなんとかできると思えないために、答が出てくるのをただ待ってしまうのです。対策としては、課題に取りかかるための最初のハードルを下げることがあげられます。課題の英文を読む前に、使われている単語や文法事項、文章のテーマを理解するための知識等を与えておくと敷居が低くなり、取り組む意欲が高まります。
また、自分で英文を読んで考えをまとめてからグループで相談したり聞き合ったりしようとしても、とりあえずは書けてはいるのであえて質問したり、修正しようとはあまり思いません。まず本文の意味や内容についてグループで聞き合うことから始めると、考えをまとめる材料となるので聞こうという気持ちになってきます。
また、人の意見を聞こうとするのは、聞いたことを使ってよりよいものにしようと思っていることがその前提としてあります。よくしたいと思わせる必要がありますが、そのためにはゴールが明確で自分で達成できているかどうか評価できることが重要です。評価を意識させるためには、過去の例など具体的なものを使って評価をして見せるといったことも必要です。
常に自分の授業の課題を意識されている方です。なかなか授業がよくならないと言っておられますが、毎回課題がシャープになってきています。子どもたちの状態がよく見えているからです。このことからも、これからの進歩が期待できると思います。

来年度の総合的な学習(探求?)の時間の子どもたちの研究発表について、どのような力が必要か、どのような力をつけることを目指すかについて相談を受けました。
つけたい力の要素として、「資料を読み取る力」「資料を解釈する力」「解釈したことを構造化する」を付け加えること、挙げられた要素をもとに、各教科で「大切にしている力」「力をつける活動」を明確にし、教科横断を意識することをお願いしました。つけたい力とその構成要素を見える形に整理しようとしていることはとてもよいことです。最終的にどのようなものができるか楽しみです。

国語の若手の先生からは、他の国語の先生の授業を参観させてもらって気づいた自分の課題について相談を受けました。
参観した先生方は、「子どものどんな発言もニュートラルに受けているのに自分できていない」ことに気づいたと言うのです。他の先生は、ずれた発言も正解も同じように受容できているのに、自分はどうしても都合のよい発言に強く反応してしまうということです。他の先生の授業からこのことに気づけるということは立派だと思います。意識することが改善の第一歩です。また、他の先生の授業から学ぶことの大切さに気づけたことも進歩だと思います。
また、教材研究についてもどうすればよいのかよくわからないと相談されました。まず教材を読むことが大切ですが、読む時の視点がまだ定まっていないのかもしれません。書籍で勉強するにしても、高校向けは受験対策的なものが多く、あまり役に立たないように思います。一度基本に立ち返るという意味で、小学校国語の書籍を紹介しました。ばかにせずに読んでみると気づくことがたくさんあると思います。

中学校の先生からは、今月開催を予定している「Open Day」の取り組みについて報告を受けました。
学校の取り組みを保護者や学外の方に知っていただくことをねらった、生徒たちの活動報告を中心とした学校公開です。大学進学ではない、今この学校が目指している新しい教育の価値観を保護者に伝えたいという思いもあります。それを踏まえて、子どもたちのプレゼンをどの様なものにするかいろいろと考えておられました。私からは、1年前と現在のBefore Afterを意識したものにするとよいのではとアドバイスさせていただきました。
また、以前に訪問した先進校の方にディスカッションに参加してもらい、この学校の取り組みを評価するという企画もあります。「自分たちの目指すもの」=「評価の観点」を明確にしたアンケートをリアルタイム集計し、その結果を発表しながら話し合うのも面白いのではないかと提案しました。あいにくこの日は先約があって私は参加できないのですが、面白いものになると思います。当日の様子を聞くのが楽しみです。

中学校入試の適性検査の問題を見せていただきました。
実物をもとに考え表現するものやプログラミング思考を扱ったもの、言語能力を問うものなど、よく練られた面白いものでした。以前、プログラミング思考の問題で手がつかない子どももいることから、スモールステップで問うこともしてはどうかとアドバイスしましたが、その点も考慮されたものでした。適性検査の問題が、この学校の特色、目指す力を伝えるものになっていると思います。時間いっぱい、どの子ども諦めずに手がしっかりと動いていたようです。子どもたちも問題を楽しんでいたようで、先生方も手ごたえを感じていました。新しいことにたくさん挑戦して忙しい思いをされていますが、考えることが楽しいと笑顔で話してくださいます。話を聞く私もいつも元気をいただけます。

この他にも、広報担当の先生とパンフレットについてお話をさせていただいたり、スクールカウンセラーの方から先生方がよい方向に変わってきたと報告をいただいたりしました。
終日多くの先生方と楽しくお話させていただきました。学校がこれからもよい方向に進んで行くという手ごたえを感じた1日でした。
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