次年度へ向けての課題が見えてくる

小学校で授業アドバイスを行ってきました。今年度3回目の訪問です。14人の授業を少しずつ参観したあと、授業研究で助言をしました。

全体的に、初めて訪問した時と比べて授業規律はよくなっていると感じました。先生方が意識して授業をしていることを感じます。ただ、全体的に子どもたちの笑顔が少ないと感じました。できていない子どもに注意をして授業規律を徹底してきたのかもしれません。そんな中で、6年生の子どもたちはどの学級もとてもよい表情で、笑顔もたくさん見ることができました。先生方の表情が柔らかく、子どもたちをよく受容していたことがよい結果につながっているのだと思います。授業規律に限らず子どもたちのよいところをほめ、価値付けすることを意識することで、教室によりよい雰囲気を作ることができると思います。
また、子どもたちは指示によく従うのですが、低学年では何をすればよいのか戸惑っている場面も目にしました。ちょっと複雑な指示は、言葉だけではなかなか理解できません。全体で一度具体的にやってみると指示内容がよくわかると思います。いくつかのことを指示するのであれば、指示をした後、一つずつ子どもたちに何をするのか確認するとよいでしょう。子どもに確認したあと、板書しておくことも有効です。子どもたちの状況に応じた工夫をしてほしいと思います。

グループ活動を意識している授業がたくさんありました。このことはとてもよいのですが、結論をグループでまとめて発表するというパターンがほとんどです。そのため、ペンを持った子どもが発表で使うボードを独占していることがよくありました。他の子どもはそれを見ているだけだったり、他のグループの同じように参加できない子どもとしゃべったりしています。互いにうまくかかわれない場面を多く目にしました。
また、意見が分かれた時には何をもとに決定すればよいのかがはっきりさせてないことが多いようにも思いました。結論を言い合うだけで根拠を聞き合うことがありません。自分の思いついた結論を主張するだけなので、子どもたちのテンションが上がってしまうことがよくありました。話すことが中心になって、友だちの考えを落ち着いて聞こうとする姿勢が育っていません。しかし、中には、互いにしっかり聞き合えるようにと、発表者をあらかじめ決めずにグループの意見を誰でも言えるようにと指示している学級もありました。よい指示だと思います。
全体での発表も結論を共有するだけで、その根拠を共有する場面があまりありませんでした。グループ活動では、友だちの考えを聞き合い、自分の考えを深めていくことが大切です。グループで結論を一つにまとめずに、個々に自分の考えを持たせることを大切にしてほしいと思います。全体の場では、結論だけを聞くのではなく、「どんな意見があった?」「なるほどと思ったのはどんな意見?」「その理由は?」といったことを共有するとよいでしょう。もし、一つにまとめたいのであれば、決定するための視点を明確にして、その結論に至った過程を問うことが大切です。

学習内容がよくわからなくて困っているために、子どもが受け身になっていると感じることがありました。説明を聞けばわかるようになるわけではありません。わかるようになるためにどのような活動が必要なのか、どのような場面をつくる必要があるのかを考えることが大切です。子どもたちの視点に立って、どこでつまずくのか、そのつまずきを克服するためには先生がどう指導するのか、子ども同士がどのようにかかわるとよいのかを意識してほしいと思います。

どの先生からも、子どもたちの発言を大切にしようとする姿勢を感じました。しかし、挙手指名に頼っているので、積極的な子どもしか発言しません。自信がなくて発言できない子どももいますので、机間指導などで○をつけたり、積極的に「いいね」「よく考えたね」と声をかけたりして自信を持たせることもしてほしいと思います。挙手が少ないようであれば、すぐに指名せずに周りの子どもと確認させるとよいでしょう。確認することで安心して手が挙がるようになります。また、机間指導などで子どもの実態がわかっていれば、挙手に頼らずに意図的に指名してもよいでしょう。また、子どもの発言を受けて授業者がすぐ説明したり板書したりすると、友だちの発言を聞かなくなってしまいます。全員参加を意識して、「同じように考えた人いる?」「今の意見なるほどと思った?」と他の子どもをつないで、聞くことに価値を持たせるようにしてほしいと思います。
もちろん、このことを大切にして授業を進めている先生もいらっしゃいます。発言に対して「同じように考えた人?」と全体に問いかけて挙手させていました。ポイントとなる発言は、挙手で終わらずに何人も指名して言葉にさせるとよいでしょう。言葉が足されたり、違う表現がされたりするので、それを評価し取り上げることで、より深く考えさせることができるからです。また、結論だけでなく、根拠もつなぐようにするとより考えが深まります。
この先生は、子どもの言葉を受け止めて、いい考えだと評価することもできていました。子どもたちが育ってくれば、「今の考えどう思う?」と子ども同士で評価させることで、子どもたちの中によい視点が広がっていくと思います。こういったよい取り組みが学校全体に広がっていくことを願います。

授業の基盤となる授業規律がしっかりしてきました。そのおかげで、次の課題が明確になってきたように思います。次年度は4月のスタートから授業規律を意識することで、今年以上に早く徹底できるはずです。基盤ができることで、次の課題である、グループ活動や子どもの言葉を活かして考えをつなぐといった、全員参加の授業が実現しやすくなると思います。次年度学校がどのように変化するか、今から楽しみです。
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