私立の中学校高等学校での研修

私立の中学校高等学校の研修に参加しました。この日は若手9人が同時に研究授業を公開しました。
授業のほんの一部しか見ることができませんでしたが、わずかな時間でも先生方の工夫や思いが伝わります。子どもたちは、どの学級でもとてもよく育っています。この子どもたちだからこそ、先生方の授業の工夫が活きると思いました。

中学1年生の社会科は、日本の食糧自給率に関する資料を見て気づいたことを発表する場面でした。授業者は子どもたち発表させると、それが資料のどこにあったかを確認し、互いに気づいたことをきちんと資料に戻って共有させています。子どもたちの発表からは、比較したり変化をとらえたりといった資料を見る視点が育ってきていることがうかがえます。授業者は余分な情報を足さずに子どもたちから出てきたものを板書し、そこから何が言えるかを問いかけます。資料をもとに考える授業の形ができています。子どもたちは読み取ったことをもとに思い思いの考えを発表し、授業者はそれをつなげていこうとしています。全員参加で考える授業が意識されていることがわかります。次の課題は、子どもたちの言葉をつなげながらどう焦点化していくかということです。授業者の着実な進歩が見られた場面でした。

中学2年生の数学は等積変形の応用の場面でした。愛知教育大学の飯島教授が作成した幾何ツール(G.C.)を使った授業でした。
子どもたちにリアリティを持たせるために「形の悪い土地を、境界線を変えることで同じ面積の使いやすい土地にする」という課題にしていました。単に「五角形の土地を同じ面積の四角形の土地にしなさい」といった課題よりもずっとよいと思います。しかし、使いやすい土地とは何かが明確でないので、「境界線を折れ線ではなく直線にする」といってもピンときません。課題としては難しくなりますが、全体が台形の土地なので、平行な辺と垂直な線分を境界にすることが子どもたちとってより自然ではないでしょうか。そういうところから考えさせることができるとよかったと思います。
幾何ツールは、境界の折れ線の頂点を自由に動かすことができ、その時の面積が表示されるものをダウンロードして使いました。授業者は同じ面積になる点を画面に残すように指示していましたが、それではこのツールを使う意味はあまりありません。具体的な使い方の指示はできるだけ少なくして自由に思考錯誤させ、考え方、方略を共有することが大切だからです。
iPadが1人1台ある環境なので、グループの隊形でも個別に作業しています。この課題であれば、最低限の機能の説明をした後、グループに1台にして活動させるとよいでしょう。全員で額を寄せ合いながら、友だちがやった操作に対して口や手を出すことで思考の幅が広がり、深い学びにつながります。発表も単なる結論ではなく、どのような操作をした、なぜそうしようと思ったのかといったことを聞き合い共有するのです。
ICT機器を活用した授業については、先生方もまだまだこれから試行錯誤して学んでいく段階です。子どもたちのどんな姿を見たいかを意識しながら、いろいろと工夫をして授業に臨んでほしいと思います。

中学1年生の体育の授業はマット運動でした。1人1台のiPadで自分たちの演技を撮影し、その場で振り返って修正しようというものです。残念ながらその場面は見ることができませんでしたが、子どもたちはとてもよい表情で授業に参加していました。
今の子どもたちの特徴でしょうか、身体が固く、なかなか自分の体を上手くコントロールできません。準備運動をさぼらずにやっているのですが、手足を先まできちんと伸ばせなかったりするので、だらだらしているように見えてしまいます。一つひとつの運動のポイントが意識されていないので、そこを意識して練習させることが必要だと思います。4月の段階で鏡を前にして自分の姿を見ながら練習するといったことが必要に思います。

中学3年生の国語はプレゼンテーションの授業でした。この時間はiPadのキーノートを使ってのグルーごとの発表でした。発表が終わった後に授業者が全体の講評をしました。時間のこともあってか一方的に授業者が話したのですが、子どもたちに聞き手として感じたことを発表させ、整理しながらプレゼンテーションに求められる視点に気づかせるとよかったと思います。下を向いてしゃべると声がくぐもって聞きにくいといった講評でしたが、まずはプレゼンテーションが何を目的としたものかを子どもたちに意識させることから始める必要があります。友だちのプレゼンテーションで何が伝わったか、それはどこがよかったからかといったことを子どもたちに共有させたいところでした。

高校1年生の世界史の授業は第1次産業革命でした。子どもたちがワークシートの項目を調べている場面でした。熱心に調べていますが、単に質問の答を探して穴を埋めているだけです。グループの隊形であっても、単なる作業になっているので友だちに相談する必然性はありません。このことに多くの時間を費やすることはあまり得策だとは思えません。高校生ですので、調べたことから何がわかる、何が言えるといったことを考えることに時間を多く使ってほしいと思います。調べることを、答を探すのではなく、答を考えるための情報を探す活動にすることを目指してほしいと思います。

高校1年生の国語は、対比を意識して文章を読む授業でした。ワークシートをもとに、筆者が西洋と日本の人たちの感性の違いをどう考えているかを比較します。子どもたちが自然に相談する姿を見ることができます。この授業に限らず、色々な教科で相談する場面が多いことがうかがえます。自分の考えを発表する場面では、よい表情とともに多くの手が挙がっていました。とてもよいことだと思います。授業者は子どもの発言を活かそうとしますが、自分の都合のよい言葉に言い換えてしまいます。発言をそのまま復唱しながら他の子どもにつなぐことで、子どもたちの考えを深めることを意識してほしいと思います。
授業者がしゃべる量を減らそうと意識しているのは伝わりましたが、まとめになると熱が入って一方的にしゃべってしまいます。子どもたち自身でまとめさせることをしないと、自分で考えることをしなくなります。「今日の授業でどんなことがわかった?」「どんなことを考えた?」と問いかけることが大切で。

高校1年生の数学は、三角比の拡張の場面でした。
授業者は三角比を拡張する必然性のないまま、拡張した三角比の値を求める作業をさせます。子どもたちは指示されたことにきちんと取り組みますが、考える要素はあまりありません。授業者は値を求めるポイントを座標と説明しますが、そもそも座標で考える然性がありません。なぜこのような拡張するのかが子どもたちの中に落ちる場面が必要でしょう。
単に三角比をこう拡張すると教えるのではなく、直角三角形以外の三角形を扱うことを考えたり、正弦定理や、余弦定理、2辺と夾角から三角形の面積を求めることなどを考える過程で90°より大きい内角の扱いを考えたりすることで、三角比の拡張の必然性に気づかせたいところです。拡張をすることによってより広い範囲の問題に対応するという、数学における大切な見方・考え方を身に付けさせる教材です。数学的な見方・考え方を強く意識してほしいと思います。

高校1年生の数学は、2次方程式の解と2次関数のグラフの関係を使って、与えられた問題の解き方を考える場面でした。
問題を解く前に、「頂点のx座標が正」となるグラフを選ぶといった練習をさせています。言葉での表現とグラフでの表現を自在に行き来できることはとても大切な力です。多面的にみられる力をつけたいという授業者の意識が感じられました。
子どもたちにとって難しい問題でしたが、どの子もよく授業に参加していました。互いに相談したり、考えをつぶやいたり、積極的に発言したりする子どもが多いことが印象的でした。どの子どもも友だちの発言をよく聞き、「日本語で話してよ」といったことも口にすることができます。友だちにわかりやすい説明を求めることができる雰囲気はとても素晴らしいものだと思います。互いの説明がうまく伝わらないのは、子どもたちの言葉が感覚的で数学用語が使われていないことが一因です。「aが・・・」をきちんと「x2の係数が・・・」と言い直させると言ったことが必要です。共通の言葉としての数学を意識し価値付けすることが大切です。
この授業のように子どもたちがよく考え、自分たちの考えを言い合えるようになってくると、次の課題は焦点化です。授業者が無理やりその方向に持って行くのではなく、子どもたちと対話しながら自然に議論の的が絞られていくのが理想です。焦点化ができれば、もう一度子どもたちに考える時間を与えることで深い学びにつながっていきます。すぐには難しいと思いますが、一段と高いところを目指して挑戦し続けてほしいと思います。

高校3年生の英語は朗読劇の発表の場面でした。
子どもたちは友だちの発表を真剣に聞いています。今回は役ごとに感情を込めて読むのですが、時間が足りないこともありそこまでは至っていません。発表までに、スモールステップで目標をつくる等の工夫をするとよかったと思います。

授業後、教科ごとに全員が分かれて授業研究が行われました。時間の関係で3か所しか回れませんでしたが、とてもよい話し合いができていると思いました。教科の先生それぞれが新しい授業スタイルに挑戦している教科では、自分のこととして今回の授業について自分のこととして真剣に考え、授業に活かそうとしていました。他教科の先生も多く参加している教科では、多様な視点で話し合いが行われていました。また、この時間の授業だけでなく、そこに至るまでのステップを意識して、どのような単元構想にすべきかを話し合っている教科もありました。学校全体で、時代に応じて授業を変えていかなければいけないという意識が共有されつつあるということを強く感じました。
個別の検討の後、各授業について話し合われたことを全体で発表しました。最後に私から、子どもたちの成長と先生方の授業に対する工夫について解説させていただきました。学校全体がよい状態になってきているからこそ、ここに留まることなく次のステップに向かって新たなスタートを切ってほしいことをお伝えして終わりました。
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