研究発表をチェックポイントとして、次に進んでほしい

この秋に研究発表を控えた中学校で授業アドバイスを行ってきました。昨年度からかかわらせていただいている小規模の学校への最後の訪問です。

この日も、ほぼ全員の授業を見せていただきました。
全体的に子どもたちの授業規律がしっかりとしてきたように感じました。先生方が子どもたちを受容できているので、教室に安心感が出てきていました。
これまでの私のアドバイスを意識して授業を組み立てる先生がたくさんいらっしゃったことを、とてもうれしく思いました。

3年生の社会科では、政治に世論が反映されているかについて、ワールドカフェ方式を使って話し合っていました。
ワールドカフェ方式とは次のようなものです。小グループで対話し、そこででた意見やアイデアなどを記録して、しばらくすると1名を残してグループの再編を行います。残った人が記録をもとに新たな参加者にこれまでの意見やアイデアを説明し、それをもとに話を深めていくものです。メンバーを再編することで新たな考えを出やすくし、話し合いを活発にして深めることをねらっています。
子どもたちはまだこの方式に慣れていないのか、うまくかかわれていないグループが目立ちます。前回に話し合ったことを新しいグループの人にきちんと伝えられないため、話が積み上がっていかないようです。残った人が説明するだけでなく、記録をもとに新しく来た人が「それってどういうこと?」と聞き返すことも必要です。そういったコミュニケーションのスキルも意識して身に付けさせることが必要だと思います。
また、根拠となることが曖昧なまま話し合われていることも気になりました。子どもたちは「こうじゃない?」と想像や思い込みで話をしています。「本当にそうか、調べてみよう」といった活動も組み込めるとよいと思います。時間的に難しいようであれば、子どもたちが想像しそうなことに対して授業者が予め資料を用意しておいて、途中で提示してもよいかもしれません。
新しいやり方を授業に組み込んですぐに結果が出ることは稀です。上手くいかないから諦めるのではなく、どこを手直しするとよくなるかを考え、ブラッシュアップし続けてほしいと思います。

2年生の理科は、動物の分類の授業でした。
子どもたちが与えられた動物を分類するという授業です。生物分野は教えることが中心となりやすいのですが、考える場面を組み込もうという授業者の意欲を感じます。
分類をするにあたって、子どもたちから「骨のつくり・形」「呼吸」「卵・子」「肉食・草食」といった観点を事前に出させましたが。「体のつくり」と「習性・行動」の2つの視点がでていますが、意識して区別されていません。「分類はなぜ必要なの?」と問いかけ、目的を明確にすると視点がはっきりしてくると思います。
「どういう順番で分ける?」と発問しますが、子どもたちは授業者の言う「順番」がどういうことを意味するかよくわかっていないようでした。具体的に例示をして納得させてから進めるとよかったでしょう。
子どもたちは、指定された動物の呼吸の仕方といった特徴がよくわかっていません。動物の性質そのものがわかっていないので分類を考える以前にそこで困っています。調べる環境を用意するか、観点毎に動物の性質を全体で確認しておくことが必要でしょう。
子どもたちに考えさせようというのはとてもよいのですが、それは子どもたちのどういう姿に現れるのかを明確にしておくことが必要です。その姿を見るためにどのような活動をするのか、その活動をさせるためにはどのような知識やスキルが必要かを考えてほしいと思います。

1年生の英語は子どもたちが活動するための仕掛けがたくさんありました。授業者の受容的態度と相まって、子どもたちが意欲的に参加していました。
英語での表現活動が、ルールに従って言葉を置き換えることが中心で、文法的な説明の多いことが気になりました。英語表現を使って”situation”を伝える、相手の言葉からその”situation”を理解する活動を意識するとよいと思います。パズルのように単語を組み合わせるのではなく、”situation”を言葉にすることを活動の中心にしてほしいと思います。

特別支援の担当の先生はとても受容的な方でした。
この日は、ウエイトレスの仕事を練習する場面でした。将来の自立を見据えたこのような取り組みはとてもよいと思いました。授業者は子どもの話を真剣に聞こうとするため、表情がかたくなる傾向がありました。子どもの行動を見守っているような場面では素敵な笑顔が見られます。子どもを受容する言葉やほめ言葉も聞かれますので、笑顔を常に意識するだけで、もっと柔らかい空気をつくり出すことができると思います。
知的レベルがかなり高い子どもなので、しっかりと言葉のやり取りもできます。そのためか、授業者からの質問がこの子どもにはやや難しいと感じることが時々ありました。子どもの反応を見て質問のレベルを変えることを意識するとよいでしょう。

2年生の数学は関数の応用の授業でした。
子どもたちは互いによくかかわりながら問題に取り組むことができます。授業者がつくり出す教室の雰囲気はとても明るく楽しいものです。
発表の場面は解けた子どもの説明で進みます。その発言を受けて授業者が説明していきます。わからなかった子どもは友だちの発言を一生懸命聞いているのですが、授業者が説明して板書を始めるとそれを写すことに集中します。結論を受け入れることに終始しました。解答の発表ではなく、どこに注目した、何を手掛かりにしたといった考える過程を子どもたちに発表させ共有させるとよいでしょう。

1年生の体育はバレーボールの授業でした。
前回と比べて、子どもたちが授業者の説明に集中していました。よく顔が上がっています。授業者が子どもたちに集中させることを意識している結果だと思います。
子どもたちが、他のチームのプレイを見ている姿が少し気になりました。あまり関心を持っていないように見えるのです。体育の授業では直接身体を動かしていない時にどのような活動をさせるのかが重要です。見るポイントを与えて、他のチームの活動に対して声をかけさせたりアドバイスさせたりすることが必要です。常にポイントを意識することになるので、自分がプレイする時にも自然に意識できるようになります。

3年生の国語は詩の鑑賞でした。
鑑賞の基本となるのは、詩の内容の正しい読解です。授業者は子どもたちが一読してよくわからないことを取り上げ、それを解決することから始めていました。子どもの疑問から授業を進める、よいやり方だと思います。ただ、個々の子どもから出てきた疑問を授業者が受けて、授業者の判断で課題としていきます。まず、「○○さんが疑問に思っていることは何かわかった?」「どう、あなたたちは答えられる?」と、疑問を他の子どもたちに共有させることが大切です。そうでないと、子どもたちとってそれは他者の課題です。授業者が提示するのと変わらなくなってしまいます。自分の課題になっていないので、考えようとせずに、発言する子どもと授業者とのやりとりの結果が出るのを受け身の状態で聞いています。結論が板書されるとそれを写すことに意識が向いてしまいます。発言者の視点や根拠を確認しながら共有し、すぐに結論に向かうのではなく、見通しを持たせてもう一度個に戻すとよいでしょう。
授業者はベテランで、いつ見せていただいても、しっかりとした教材研究にもとづいた授業をされます。私が学ばせていただくことがたくさんあります。伝えたいことを一人でも多くの子どもたちに気づかせ、自分の言葉で話すことができるようにするという、一段と高いレベルを目指してほしいと思います。

学校全体で授業力が上がってきているのを感じます。研究発表をゴールにするのではなく、チェックポイントととらえ、さらなる向上を目指してほしいと願います。
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