新人の今後に期待

5月に私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。

新人の数学の授業は高校1年生の2次不等式の導入場面でした。
教室の後方にスクリーンを貼って、パワーポイントを活用していました。面白い配置です。子どもたちは机を廊下と平行にして右半分と左半分が向き合って座っています。互いの意見を聞きやすくし、前方の黒板、後方のスクリーンのどちらも見られるようになっています。
1元2次不等式をグラフで解くための布石として、1元1次不等式をグラフで解かせますが、子どもたちはなぜグラフを使うのかが理解できません。簡単な不等式ですから普通に計算だけで解くことができます。それを天下りでグラフを使って解くと言われても必然性がないので戸惑ってしますのです。いきなりこうしろと方向性を与えるのはちょっと乱暴な気がしました。こういう場合は、過去の経験と結びつけることがポイントになります。この場面であれば、連立方程式をグラフで解くこと(グラフと連立方程式の関係)を思い出させることが一つの方法です。もう一つは2次関数のグラフとx軸との交点と2次方程式の解との関係です。こういった過去の経験とつなげるというのは、大切な数学的な見方・考え方です。
子どもたちに考えさせますが、不等式にyがないのでなんのグラフを考えればいいのか困っています。ここはある程度見通しを持たせたいところでした。「yがないから困る」という子どもの声があったので、その言葉を拾って、「なければつくる」という発想でグラフにつなげてもよかったでしょう。ゼロから考えるより、2次関数のグラフと方程式の関係からグラフを想起させた方が子どもたちとっては想起しやすかったもしれません。
子どもたちの間には自由に相談する雰囲気ができています。友だちと考えることを楽しみと感じている姿が多く見られました。数学以外の授業でもこのような場面が多くあるのだと思います。みんなで子どもたちを育てていると感じられました。
気になったのがまわりを跳び越えて反対側と話す子どもがいることです。仲のよい友だちと相談しているのですが、このことには気をつける必要があります。生活面での人間関係はできるだけ授業には持ち込まないようにした方がよいのです。あまり友だちのいない子どもが授業でも孤立してしまう可能性があるからです。授業では誰とでも関係がつくれることが大切です。社会に出ても求められる力です。グループの活用やまわりと相談するよう働きかけることを意識してほしいと思います。
子どもが授業者に問いかける場面がありましたが、授業者は全体で共有することをしませんでした。多くの子どもに共通と思われることは、いったん作業を止めて全体の問題として考えることが必要でしょう。
子どもたちが苦戦しているので授業者がヒントを出しますが、ヒント出すということは先生の中で明確な答えがあるということです。先生の求める答探しを始めてしまいます。ここは、どこで困っているのかを問いかけ、同じところで困っている子どもをつなぎ、それを全体で考えることや、クリアできた子どもに答でなくどんなことを考えたかを聞くことが必要でしょう。
授業者が解き方につながるヒントを言えば、結局子どもたちは「不等式をグラフで解く時はこうする」と、解き方を覚えようとします。そうではなく解き方を見つけることができる力が数学で求められる力です。その力をつけるための道筋がはっきりしていないため、解き方を覚える授業になってしまったのが残念でした。
また、授業者は「交点を求める」という表現を気軽に使いますが、「グラフの交点とは何か?」をきちんと押さえることが必要です。方程式とグラフの関係という知識の整理をしていないので、考えるための足場ができていないのです。
練習問題では、解き方を理解してもグラフをかけない子どもが一定数いました。グラフをかくこととグラフを使って問題を解決することは別です。しかし、子どもたちはこのことを構造化できません。解くための一連の手続きだと認識するので、既習事項でつまずいているのか、この日学習したことが理解できなくてつまずいているのかもよくわかっていないようでした。授業者は子ども同士で解決させようとしますが、できる子どもが答を教えているだけで、教えてもらう子どもは手順通りに解くことを覚えるだけになっていました。
思考の方法や過程を学級全体で共有する場面をつくることが必要です。数学はどんな力を子どもたちにつける教科なのかを意識してほしいと思いました。
子ども同士がかかわり合い学び合う授業を、自ら考えてつくろうとしています。このこと自体はとても評価できることです。子どもたちと接している時の表情も穏やかで、受容する雰囲気もあります。教師としてとてもよい資質を持っていると思います。ただ、子どもに対して「○○まではできている」といった上から目線での発言が少し目立ちます。また、子どもの発言を価値付けしたり、考えを深めるための切り返しができていなかったりもします。新人ですから当然です。素直に学ぶ姿勢がありますので、こういった基礎となる授業技術を意識して学んでいけばとても素晴らしい教師に成長すると思います。今後がとても楽しみです。

英語の授業は高校2年生のコミュニケーションの授業でした。
授業が開始されても子どもがなかなか落ち着きません。先生の問いかけにも一部の子どもしか反応しないことが気になります。授業を先に進めなければいけないのでしょうが、先生がしゃべりすぎています。一人が答えると授業者がすぐに説明に入ってしまいます。このことが、子どもたちが授業に参加しない原因の一つのように思います。子どもたちはこのような場面では参加する必要を感じていないのです。

単語の確認をしますが、単語単独での練習になっています。単語の持つニュアンスを理解させるためにも、文例を挙げて”situation”で考えるとよいでしょう。接頭辞の”in”に否定の意味があると説明しますが、これも”in”のつく言葉をたくさん挙げさせて納得させるとよいと思います。また、名詞でも動詞でも使われる単語についてはて”context”を意識する必要を説明しますが、これも文例をもとに考えさせたいところでした。
授業は授業者の指示で流れていますが、実際には子どもたちが集中して参加するかしないかを判断しています。単純に単語の確認であれば、わかっている子は手を抜くのです。一方、授業者も子どもの反応を待つ余裕がありません。問いかけてもすぐに指名するのでよくわかっている子どもしか参加できません。考える時間を与えることが必要です。子どもたちは自分が聞く必要があると考えた場面では積極的に参加します。ペアでの活動の時なども積極的に参加します。英語を話せるようになりたいのです。この意欲をうまく活かしたいところです。
英語科としていろいろなスタイルの授業に挑戦していますが、それゆえに授業者はちょっとした壁にぶつかっているようです。授業者の説明とパターン化された練習だけに頼らず、子どもたちが頭を使って言葉を理解する、言葉を生み出す場面が必要です。
まずは、子どもたちが英語を聞いて何を伝えたいのかを理解したいと思う場面をつくることです。そして、伝えたいと思ったことを英語で伝えるような課題を準備することです。主体性を生み出すような課題は難しいと思うかもしれませんが、子どもたちが英語を話せるようになりたいと思っていることが一番の強みです。できるだけリアルに感じられる”situation”をつくってほしいと思います。伝えたいと思えば、タブレットなどを使って自分で言葉を探して自ら学んでいくはずです。子どもたちの意欲を信じて課題等を工夫してほしいと思います。
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