教科で身に付けさせたい力が何かを考える

前回の日記の続きです。

2年生の数学は文字式の活用の授業でした。文字を使って、奇数や偶数の性質を説明する場面です。

授業者は子どもたちとうまく関係をつくることができています。子どもたちが積極的に授業に参加する雰囲気がつくられています。
最初に、奇数と偶数について知っていることを子どもたち言わせます。子どもたちの知識を確認して、この日の課題を考える足場にするのはよいことです。ここで注意しなければいけないのは、定義と性質の違いです。小学校ではこのことを混乱して教えている例がよくあります。ある数が偶数になるとことの根拠は最終的に偶数の定義です。定義と性質が混乱してしまうと循環論法に陥ることもよくあります。また、仮定と結論の関係も大切です。逆が必ず成り立つ保証はありませんから、偶数の性質を持っているからといってその数が偶数になるという根拠にはなりません。言葉にして説明するかどうかは別にして、因果の方向性を意識させることも必要です。

子どもたちは自信がないのか、なかなか手が挙がりません。授業者はペアで相談させたのですが、ちょっと気になる言葉を発しました。「思いついた」ことを話すようにと言葉を足したのです。「思い出した」ならよいのですが、「思いついた」は想像、予想です。その検証が必要になるものです。「どうやって解いたらよいか?」という発問に対する指示ならばよいのですが、ここは「知っていること」=「知識」「結論」ですから、ふさわしくない言葉のように思います。そんな細かいことと思うかもしれませんが、ちょっとした言葉の使い方も、考え方や論理性を育てることに影響するのではないかと思います。

ペアで相談した後は、手がよく挙がります。どうすれば子どもたちの積極性を引き出せるかよく知っています。この場面に限らず、子どもたちをうまく活動させます。残念なのが、子どもたちの発言を価値付けしたり、整理するための切り返したりがあまりできていないことでした。
奇数を「割り切れない」と説明する子どもがいました。言いたいことはわかりますが、「それってどういうこと?」「なにで割り切れないの?」と不足している言葉を明確にさせる必要があります。「割り切れない」に関連して、余りがあることも言わせたいところです。「2で割ると余りが1」を押さえておくことは、奇数を2n+1(nは整数)と表わす時や、3で割り切れない整数を表わす時の布石となります。
「2で割れる」という言葉も出てきましたが、そのまま受容するだけです。ここでは「割れる」という言葉にこだわることが必要です。「3は2で割れるから偶数だよね?」と返すことで、「割り切れる」という数学の言葉で表現し直させたり、「小数はダメ」といった言葉を引き出して、考えている数が整数であることを意識させたりすることが必要です。数学として何が大切かを常に意識してほしいと思います。
また、子どもたちから出てくる偶数や奇数の性質に対して、「いつでも?」「絶対に?」成り立つかを問いかけることも必要でしょう。それがこの後、文字式で説明する必然性につながります。授業者は、このあと「文字を使ってもそうなるの?」と問いかけますが、既に小学校で証明されていることが前提になっています。ここでのねらいは、すべての場合で成り立つことは、文字式を使うことで初めて説明できることを理解することです。文字式を使った説明と小学校でやった説明の違いを意識させたいところです。

子どもたちは発言をよく聞こうとしているのですが、授業者が発言をすぐに板書するので、写すことを優先して聞かなくなってしまいます。数学的な見方・考え方を意識して発言を切り返し、つなぐことで整理し、「どうまとめればいいかな?」と子どもたちにまとめさせてから、その言葉を板書するとよいでしょう。

文字式で偶数と奇数を表わすことを考えさせます。子どもたちにどんな文字を使いたいかを問いかけます。「gとk」という答えに対して、なぜその文字を使うのかを問い返しますが、ここは「文字は2つ必要なの?」と、文字を使い分ける意味を考えさせることが必要です。同時に扱うのであれば、文字を変えないと連動してしまうことを押さえる必要があるのです。
偶数は2kで落ち着きましたが、奇数は2g+1、2g-1と分かれました。ここで実際にgに整数を代入して、どうなるのか比べてみるといったことが必要です。この2つの表し方だけでなく、2g+3や2g-3でも奇数を表わせることも確認したいところです。どの表し方でもgをすべての整数とすればすべての奇数を表わせることを確かめることで、文字式を使う意味が見えてきます。奇数は2g+1と表わすと機械的に覚えさせないようにしたいものです。

この学校の先生方からは、子どもたちがなかなか発言できないことが課題として挙げられていますが、この授業では実によく子どもたちが発言していました。授業者の受容的な姿勢や子どもたちを上手にかかわらせることで、子どもたちがいきいきと発言する場面がたくさんありました。ただ、全体の場で挙手して発言することを苦手にしていると感じる場面はまだありました。子どもたちの積極性を引き出すためには、受容することに加えて、発言の価値付けを意識して、自己有用感を高めることが必要だと思います。
気になったのが、授業者が子どもたちつけたいと考えている「数学の力」がずれていたことでした。問題の解き方を子どもたちに考えさせることが中心になっていて、この授業で身に付けさせなければいけない数学の力や見方・考え方はどのようなものかがよくわかっていないようでした。子どもとのかかわり方はとても上手な先生です。数学の教師としての基本に立ち返り、数学とはどのような教科なのか、数学で身に付けさせるべき学力とは何なのかをじっくりと考えてほしいと思います。そこが、明確になれば大きく飛躍すると思います。

この続きは次回の日記で。
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