社会人に必要な力を学校でどうつける

新社会人対象の研修をしていて感じたことを書きたいと思います。

提出期限がある課題をさせた時に、期限までに完成することを目標としているということです。時間が足らなくて内容に少々不足があったとしても、とりあえず形を整え、時間内に完成すれば課題をクリアしたと考えているようでした。発表であれば、その時間に発表できればよしということです。出来栄えは二の次で、提出、発表することが目的となっています。また、グループの課題ではすぐに役割分担をして個人作業で進めます。効率的に完成させることを優先しているのです。
仕事となれば、これでは困ります。内容、結果に責任が生じます。少しでも良いものにすることが求められますし、そもそも求められるレベルに達していなければ話になりません。提出すること、発表することが目的ではありません。このことを理解していないのです。
締め切り直前に提出され、手直しさせるにも時間がないため徹夜でやり直した。せめて、修正する時間を見積もって仕事をしてほしいという上司の嘆きも耳にします。
だからと言って「最近の若い人は……」と非難するつもりはありません。逆に彼らに申し訳ないと頭を下げたくなるのです。それは私たちが彼らに与えてきた教育の結果だと思うからです。

学校では、課題を期限までに提出させることに重きを置いていることが多いのではないでしょうか。提出期限までに出さない子どもに対して、何とか提出するようにしつこく働きかけ、時には居残りさせても完成させようとします。とりあえず提出することが目標となっています。手抜きに対して再提出させることはあっても、基本提出すればそれでOKで、評価はA、B、Cといった簡単なものがほとんどです。評価して、それをもとにより良いものに仕上げさせるといったことはまずありません。
まずはきちんと提出させることが基本だ、課題をきめ細かく評価するというのは時間的に無理だという声が聞こえてきそうです。その通りだと思います。ただ、課題に取り組むにあたって、修正・改善するという活動を取り入れてほしいのです。総合的な学習の時間などはそのよい機会だと思います。発表がゴールとなる活動では、途中に中間発表を入れて評価し合い、ブラッシュアップする時間を設けるのです。活動の最後に反省しても、次にそれを活かす機会はなかなかありません。中間発表を入れることで修正・改善するという過程を組み込むのです。

また、グループで何かを創りだす活動に関しては、協力することのよさをきちんと価値付けしていないことが多いように思います。課題を達成することが目的化して、課題達成のために何をやったか、よりよいものにするためにどのような工夫をしたかが問われていないのです。結果を評価することはあっても、過程を問う場面に出会うことはあまりありません。子どもたちが仲間と一緒に取り組むことのよさを意識する場面が必要なのです。
課題に取り組むことで自然に気づくことができるのが理想ですが、それほど簡単ではありません。課題の与え方にそれなりの工夫が必要になります。そこで、作業を分割するというのが一つの方法になります。目的・目標をグループで共有する時間をつくる。続いて、それを達成するためにどんなことが必要か、どんな工夫をするのかといったことをグループで相談し、それが終わってから作業を分担するのです。
仲間と知恵を出し合うことで新たな気づきがある。互いの考えをキャッチボールすることでより考えが深まる。そういう体験を意図的に積ませることが必要です。

私が出会った新社会人はとても優秀でした。研修を通じて目に見えて成長します。今までこういったことを考える機会がなかっただけなのです。
学校教育では、社会で必要な力をつけることが求められています。先生方がその力を意識し、教育活動のどの場面で身につけさせるのかを考えてほしいと思います。
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