全体を見ることを常に意識する

2学期に小学校で行った授業アドバイスです。

3年生の初任者の授業は国語でした。
子どもたちをほめて授業規律をつくることができるようになってきました。以前と比べると子どもたちの集中も増しているようです。
前時までの音読をほめた後に、「どんな場面が心に残りましたか?」と問いかけます。その後続けて、すぐには思い出せないだろうから、教科書を見てもいいと1分間時間を与えますが、指示と課題が交互に繰り返され錯綜しました。徹底させようとして少ししゃべりすぎです。課題の提示や指示は1回で徹底させることを意識するとよいでしょう。不安なら、子どもを指名して、「今から何をする?」と確認すればよいのです。
時間が来て挙手させますが、4人しか手が挙がりません。それでも「○○さん、すぐに手を挙げてくれたね」と間を空けずに指名します。子どものよいところをほめて指名することは悪いことではないのですが、このような誰でも指名すれば答えてほしい場面は、挙手に頼ることは避けた方がよいでしょう。意図的にどんどん指名していけばよいと思います。
指名した子どもは、授業者の方を向いて発表します。授業者も発表者の方を向いたままで他の子どもの様子を見ていません。子どもの多くは発表者に注目していません。授業者は発言をしっかりと受け止めますが、すぐに「○○さんは今……と言ってくれた」と、発言の内容を子どもたちに伝えます。これでは子どもたちは発言を聞く必要がありません。聞く必然性を与えることが大切です。
続いて「よく似たところが心に残っている人?」とつなぎました。「自分の言葉でいいのでもう一度言ってください」と指名します。「同じです」を許さずに自分の言葉で言い直させることは大切です。発言に自分の言葉が付け足されたことを、「付け足されたね」と評価しました。こういったことができるようになったのは大きな進歩だと思います。ただ、常に授業者が評価するだけで、教室全体でその内容が共有されているわけではありません。「どこがつけ足されたかわかる」と他の子どもにつなぐことも必要です。また、本文と子どもをつなげることも重要です。「○○さんの言った場面は教科書のどこかわかる?」と全員で本文を確認させるとよいでしょう。
発言を受け止め、価値付けすることはできるようになってきています。教室全体を見て、子ども同士をつなぐことや発言の内容を共有することが次の課題でしょう。

特別支援学級は、ハンドベルの合奏の場面でした。
子どもたちをほめながら、やる気を出させています。「おれ、できんは」と弱音を吐く子どもに対しても「きらきら星の時より出番多いもんね」と受容しながら、励ますことができていました。
ただ、気になる子どもや反応する子どもばかりに注意が行ってしまい、全体を見ることができなくなっています。出番がない時にもしっかりと友だちの様子を見ている子どもがいましたが、その子どもに気づいてほめることができなかったのが残念です。普通学級を担任している時も、同様の傾向がありました。子どもを受容して関係をつくることができるようなってきたので、全員の様子を常に意識することが次の課題です。

6年生の体育の授業はマット運動で、最後に演技をして見せる場面でした。
4人につきマット1組なので、活動量はある程度確保されていました。見学者が前に座っていますが、役割を与えられていないのですることがなく、顔が伏せ気味なことが気になりました。
グループ毎に先頭の子どもが演技をしますが、待機している子どもたちは後方からなのでよく見ることができません。1組目の子どもの演技に対して一部の子どもから拍手が上がりますが、全体には広がりませんでした。また2組目以降では誰も拍手をしませんでした。形式的な拍手にはあまり意味はありませんが、この場合授業者は子どもたちにどうしてほしいと思っていたのかが気になります。このことを意識しないと漫然と授業が過ぎていきます。一方、前に座っている子どもの一人は、積極的に演技者に励ますような声をかけています。こういった行動を授業者には評価してほしいところですが、気づいていなかったようです。
体育では、演技者以上に待機している子どもの活動が大切です。また、個人の演技も評価しないとうまくはなりません。漫然と待機して演技を眺めるのではなく、声をかけたりアドバイスをしたりといった役割を与えることが必要です。マットの横などの見やすい位置から観察させるとよいでしょう。毎回アドバイスをさせるのであれば、4人を2人ずつのバディに分けるという方法もあります。演技者に対してバディが観察して、終わるとアドバイスする。その間に次の組が演技をし、アドバイスをした子どもが次に演技をする。この繰り返しで進めるのです。
授業の終わりのまとめをするのに、全員が散らばったままでした。既にチャイムが鳴っているので焦っていたのでしょうが、いったん集合させるべきでしょう。特に気になるのが見学者です。離れたところに座っていて、授業者の背中を見ることしかできません。ほとんどの見学者の頭が下がっていました。授業に参加する意識を持たせるためにも、見学者は授業者の前方に移動させるべきでしょう。
後片付けは素早く行います。見学者の何人かは積極的に片づけに参加しますが、何もせずに歩いている子どももいます。できることは参加させたいところです。
4人のグループで大小2枚のマットを片付けますが、大きいマットを3人で持って運ぶので、小さいマットのところに行った子どもは1人でどうしていいか困っています。自分1人でマットを引きずって片づける子どももいましたが、2人の子どもがマットに手をかけたままその場に所作なく立ち止まっていました。そのうちの1人には、大きいマットを片づけたメンバーがすぐに走り寄って一緒に片づけましたが、もう1人の子どもはしばらく1人で寂しそうにしていました。他のグループの子どもがその子どもの横を通り過ぎますが無視しています。授業者は倉庫の方で片づけの指示をしているのでそのことに気づきません。1人の子どもが最後に気づいてくれて、やっと2人で片づけました。今までもこのようなことがあったのではないかと思います。「4人で大きいマットをまず片付けてから、小さいマットを片付ける」、「小さいマットは引きずってもよいので、1人で片づける」、どちらでもよいので、明確に指示する必要があったと思います。
体育の授業は広がって行うので、どうしても全体を把握することが難しくなります。この授業者であれば、子どもたちに起こっていることに気づけば適切な対応を取ることができると思います。常に全体の様子を意識して見ることを忘れないでほしいと思います。

この続きは次回の日記で。
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