子どもたちに教科でつける力を考える

前回の日記の続きです。

高校1年生の数学は統計の代表値の学習でした。
復習として三角比の小テストを行っています。0°≦x≦180°の三角比の値を埋めるのが問題です。驚いたのは、だれも単位円を使って値を求めようとしていないことでした。三角比の値は覚えるような物ではありません。定義がわかっていればその場で確認すれば済むものです。それを小テストとして何度もやっているようですが、0°の時は、30°の時はと覚えている子どもがほとんどなのです。問題を解くのに覚えていれば少しは早くできるかもしれませんが、数学的には意味のあることではありません。授業者が数学とはどのようなものと考えているのか、疑問を感じずにはいられませんでした。
小テストの後、代表値の学習に入ります。中学校でも平均などの代表値は学習しているので、教科書を見て自分たちで問題を解かせました。子どもたちはやることが明確なので、積極的に取り組みます。しかし、ただ与えられたデータをもとに計算をするだけ、新しい気づきや考えることはありません。答が出れば互いに笑顔で確認をする場面も見られ、よい雰囲気の学級でしたが、子どもたちは問題の答を出すことが数学の学習だと思っているようでした。解けてしまった子どもはすることが無くて手持ちぶさたです。単なる作業の連続で数学の学習にはなっていません。
標本数が偶数の資料の中央値の問いは、「教科書の何行目を読むと……」と説明します。天下りでこうだと教えるのではなく、どうするとよいだろうと合理的に考えさせることが数学的な見方・考え方につながります。この考えを発展させれば連続的に分布する場合の中央値も自分たちで定義できます。社会に出れば定義を考える場面はたくさんあります。そういった時に数学の学習がとても役に立つはずです。現実の世界と数学の世界を自由に行き来できる子どもを育ててほしいと思います。
代表値の学習では、「平均値」「中央値」「最頻値」と代表値は何種類もあるけれどどうしてなのか。ある事象を考える時に有用なのはどの代表値だろうといったことを考えることが大切です。こういったことを考えずにこの値を求めなさいと言われても、表計算ソフトなどがこれだけ普及した現在、子どもたちにその必然性はありません。計算できることよりもその意味がわかることの方がより重要です。
授業者が、まず教材の意味を理解していなければ子どもたちがそのことに気づくことは困難です。数学とは子どもたちどんな力をつける教科なのかをしっかりと考えてほしいと思います。

来年度から言語技術の学習を取り入れようと動き始めています。このことについて相談を受けました。こういった新しい試みに関する相談が増えています。担当者はどのように進めてよいか不安で、どうしようかと悩む日々だと思います。学校全体でコンセンサスを取ることもなかなか容易ではありません。ご苦労のほどがうかがえます。しかし、この経験が教師としての力を伸ばすことにつながります。校長や私のような者がこうしなさいと指示することは簡単です。そうではなく、自分で考え悩み、時には失敗もし、そこから学ぶことで、足が地についた実践となっていきます。こうした先生方の努力が学校全体の力となっていきます。側面からですが、私もできるだけの支援をさせていただきます。皆さんの成長を楽しみにしています。

先日行われた、来年度の中学校入試の適性検査の問題の報告を受けました。どのような子どもに育てたいか、学校の目指すものが伝わるような問題でした。「資料を見る力やそこから疑問を見つける力」「教科を横断して考える力」「プログラムのようなアルゴリズムや問題解決の視点を見つける力」などを見る問題でした。もちろん、まだまだ改善点もあると思いますが、先生方の思いがしっかりと観て取れました。抽象的な理念も大切ですが具体的な例を挙げることで、学校の目指すものがより多くの方に伝わると思います。問題をホームページで公表するとともに、その意図を説明するようにアドバイスしました。学校がよい方向に変わっていくエネルギーを感じました。
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