子どもの目線で授業を見直す

先週、私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。

子どもたちは全体的に落ち着いていて、笑顔も多く見ることができました。先生と子ども、子ども同士の関係もよいのですが、逆に上手くいっているために、先生方の授業改善の意欲が減少しつつあるように見えます。もちろん、色々と工夫をしている方もいらっしゃいますが、一方的な講義型の授業をしていても子どもたちがそれなりに参加してくれるので、問題だとは感じていない方が目立ってきているのです。そういう授業でも子どもたちは騒いだりはしませんが、かなりの割合で集中を失くしています。
今年度末から全学年でiPadの活用が始まります。これがよいきっかけになって、先生方の授業改善に対する意欲が復活することを願っています。

若手の国語の高校2年生の授業です。漱石の「こころ」で、Kがお嬢さんへの思いを私(先生)に告白する場面でした。
教科書には一部分しか掲載されていないからと、授業者がKの性格について一方的に解説します。本文の表現やKの行動を紹介して考えさせるのではなく、授業者の言葉(読み取り)で延々としゃべり続けます。情報量が多くて子どもたちが理解できていないのですが、それを感じて、すぐに同じようなことを別の言葉で言い換えます。子どもたちに理解させたいと思う気持ちが強いため、かえって余分な情報が増えて混乱させているのです。子どもが自分で考える場面が必要です。
説明し終わると、ワークシートを配ります。問いがB4用紙の裏表にびっしりと書き込まれています。これからは、この問いに答えていくことで授業が進んで行くようです。
問いに対して、一人の子どもが正解を答えると「そうだね」と言って、その何十倍も言葉を足して説明します。また、「おれが言ったことの中に答がある」という言葉を何度も使います。「私(教師)の求める答を探しなさい」と言っているようなものです。指名した子どもが期待した答を言ってくれないと、ヒントをいくつも言って無理やり答を誘導しようとします。子どもは授業者の説明がオーバーフローしていて、何を言われているのかよくわからないまま適当に答を言うので噛みあいません。本文をしっかりと読ませて、考える時間を与えることが必要です。
4択の問題では、その答の根拠になる文をわざわざヒントとして抜き出してありました。根拠となる文を見つける力をつけることが大切なのですが、その部分を一方的に与えているのです。指名した子どもが正解を選ぶと、授業者は正解とは言わないけれど実にうれしそうにその根拠を聞きます。根拠といっても、授業者が抜き出しヒントの一部分と選択肢の言葉が近いというだけです。授業者はそれを受けて、正解であると説明しますが、他の選択肢がどうであるかの吟味はしません。これでは子どもたちは授業者の与えたヒントをもとに正解探しをするようになってしまいます。
授業の大半が一方的な説明で、さすがに子どもたちは途中で集中力がなくなっていきます。授業者は、沈黙が怖いのでどうしてもしゃべってしまうと言っていましたが、子どもを信じて考えを持てるまで待つことが大切です。
授業者は子どもに文章を読み取る力をつけ、思考力をつけたいと語っていましたが、授業の実態と余りに乖離していました。子どもの目線で自分の授業を見つめ直すことが必要です。厳しいかもしれませんが、授業をICレコーダーで記録し、子どもになったつもりで聞いてみるようにアドバイスしました。子どもの立場で自分の授業を見ることで、何が問題か気づけると思います。

この続きは次回の日記で。
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