子どもたちにどのような力をつけたいかが問われる

私立の中学校高等学校で、先週行われた公開授業研究に参加しました。

高等学校2年生の簿記の授業は、手形の仕訳についての学習でした。
子どもたちに問いかけたり、考えたりする場面が非常に少ないことが気になります。スライドをスクリーンに映しながら説明をしますが、顔が上がらない子どもが目につきました。
簿記の検定試験対策なのでしょうか、仕訳の仕方が中心で約束手形が経済活動にどのような意味を持っているのか、なぜ必要なのかについてはあまり触れられません。
学校教育はさておいて、一般の会社では簿記はコンピュータを使うことで素人でもさほど問題なくできます。それよりも、数字の持つ意味を理解できることの方が重要です。数字を見て、どこがおかしいか気づけるといったことが求められると思います。
約束手形の仕組みは知識ですので、教える必要があります。それを基に子どもたちに売掛・買掛と同じ点、違う点を考えさせるといったことをしてほしいと思います。
振出人、受取人、支払期日といった用語を先に説明して、手形の写真を見せますが、子どもたちは受け身で見ているだけです。そうではなく、手形にはどんなことを書かなければいけないか考えさせるとよいでしょう。写真を見ながら子どもたちが必要だと思ったことがどこに書かれているか確認し、支払う人、買った人といった子どもの言葉を振出人と言うと教えればよいのです。
仕訳も授業者が教えるのですが、売掛・買掛がわかっていれば、約束手形の決済には当座預金を使う(必要)ことさせ教えれば、自分たちで考えることができるはずです。気になったのが、仕訳で当座預金が相手方勘定になることの説明や、当座預金の果たす役割についてほとんど触れられなかったことです。約束手形を発行するには当座預金口座が必要ですが、その開設に審査があることが、約束手形の信用につながっていることは教えておくべきだと思います。
資産勘定や借方・貸方の意味がわかっていれば、手形の仕訳をどのように扱うべきか、論理的に答が出ます。子どもたちで考えられることは考えさせ、結論ではなく過程を大事にするよう意識してほしいと思います。
演習をさせますが、多くの子どもはやり方を示された後なのでスラスラできます。できる子どもはすぐに終わって自分で答を確かめています。正解だとわかっているので答の解説も聞いていません。仕訳できることが目的となっています。覚えることが学習になっているのが残念です。解答の確認は子どもたちで十分できると思います。もっと子どもたちを活動させてほしいと思います。
子どもが仕訳をする時間以外は、授業者が一方的にしゃべっています。それにもかかわらず、子どもたちはよく授業に参加していました。しかし、子どもたちがこの状況に対して不満を持つようになれば、一気に授業が崩れる心配があります。子どもたちが考え、互いにかかわるような活動を授業に組み込むことを意識してほしいと思います。

高校3年生の選択の政治経済の授業は生徒7人と先生によるゼミ形式のものでした。
授業者は子どもたちに文献を読ませたいと考えています。この日は、子どもたちが読んできた本について、互いに発表して聞き合う場面でした。
子どもたちの準備したものには、かなり差がありました。本の細かい内容についてびっしりと原稿を準備してそれを読み上げる者、本の内容を簡単に発表する者、単なる感想で終わる者、視点も量も様々です。原稿をしっかりと準備している者は顔を上げずに読んでいることが気になりました。子どもたちは発表者を見てしっかりと聞いているのですが、視線がからみません。友だちの発表についてどんなことを考えているのかを知りたいと思ったのですが、基本、授業者が質問して答える形なので、そういった機会はあまりありませんでした。
発表する内容については、テンプレートを与えてもよいと思います。視点や、量をあらかじめ決めておくのです。聞く側の視点についても与えておくことが必要かもしれません。発表のスキルも意識させたいところです。また、子どもの活動に対しては評価や価値付けが必要です。発表の後で拍手が起こることがありましたが、全員でないことが気になりました。儀礼的であるのなら、全員に拍手するべきです。よいと思うところがあったから拍手したのであれば、きちんと何がよかったのかを聞く必要があるでしょう。
授業者がコメンテータで進行役でしたが、発表とそれについてやり取りの時間が1人につき10分あるかないかでした。兵器の話に関連して、子どもから「電磁パルス」という言葉が出たり、経済の問題に関連して「不良債権」が話題になったりしますが、それについて深める時間がありません。結局、授業者が問いかけながら説明して終わってしまいます。子ども自身で調べたり、意見を交換したりする時間をつくりたいところです。
グローバル化で国内の仕事がなくなるという発表がありましたが、子どもたちはなぜそうなるのか疑問を持ったかどうか気になりました。しかし、授業者は子どもから疑問を出させるのではなく、自分で質問し、自分で説明をしました。子どもたちが主体となることを願っていると思うのですが、「授業者の知識自慢」に見えるような授業になってしまったのが残念です。進行役として発表を焦点化し、それについて子どもたち調べたり、考えたりして、全員で深めていくような進め方をするとよいと思います。
また、ある程度慣れてくれば、交代で子どもたちに進行役、コメンテータ役をそれぞれさせてもよいでしょう。人数も少ないので教師主導のミニ授業ではなく、子ども同士で運営できるところまで目指してほしいと思います。
次回から、論文を読むことに挑戦します。野心的な試みでよいと思いますが、子どもたちに論文を読む必然性がないことが気になりました。例えば、この日の発表で子どもたちが疑問に思ったことやもっと知りたいと思ったことを、論文をもとに考えるといったやり方もあると思います。
意欲的に授業改善に取り組んでいる先生です。子どもたちに経験させたいことを柱にして一連の授業を組み立てていますが、子どもたちの主体性やそれを通じてつけたい力も意識すると、授業がシャープになると思います。今後が楽しみです。

この続きは次回の日記で。
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