何をもとに、どう考えさせるか

前々回の日記の続きです。

6年生の社会は元寇の学習で、蒙古襲来絵詞を前にして日本軍と蒙古軍の違いを発表させる場面でした。
授業者は子どもにたくさん挙手をしてくれてうれしいといった言葉を投げかけます。表情もよく、子どもたちが学習に積極的に参加する雰囲気がありました。
ただ、子どもの発言をハンドサインで賛成と確認はするのですが、多くの場合それで終わってすぐに次の子どもに意見を聞きいていました。子どもの意見や、絵と資料をつなげたりして、考えを深める場面をつくってほしいと思います。

子どもから弓矢の違いが出てきました。日本軍の弓は遠距離戦、蒙古軍の弓は近接戦用ですが、子どもたちではそのことは絵からすぐにわかるわけではありません。教科書や資料の説明を見ているだけです。すぐに賛成のハンドサインが挙がりますが、全員ではありませんでした、まずどこを見たのか、どこに書いてあったのかを確認して全体で共有する必要があります。その上で、絵ではどのような違いがあるのかを読み取らせるといったことが必要でしょう。弓の形状の違いや矢の長さの違いに気づくことができるはずです。そのことと弓矢の特性の関係を意識できるとよいと思います。小さい弓だと連射しやすそう、大きい弓だと力が強そうといったことが子どもの口から出てくれば、そのような視点をほめ、「絵から多くのことが学べる」と資料の価値を子どもたちに伝えるようにするとよいでしょう。

「弓矢に関連したこと」と授業者がつないだ時に、鎧の違いが発表されました。鎧も武具ということで関連したと考えたのだと思いますが、とにかく発表したかったのかもしれません。気になったのが、授業者がこれを受けて、服装について書いた人と挙手で確認をしたことです。弓矢に関連することと言ったのに、次の発表を服装と言ってしまうと、関連していなくても発表してよいと授業者が自身で言っているように聞こえます。ちょっとしたことですが、一言、「鎧も弓矢と同じように武具だね」とか「鎧と弓矢はどんな関連かな?」といったことを確認しておく必要があるように思いました。

子どもの発言は細かい重さの違いまで含まれていました。ここで隣同士、絵を見て違いを確認しますが、絵からの情報の方が少なくなっています。絵から違いを見つけ、その違いから日本軍と蒙古軍の軍隊の特性について子どもたち自身が考える方が、資料を読み取る力をつけることにつながると思います。蒙古軍が近接戦を想定した軍隊であることは教科書や資料集に書いてあります。そこを先に見てしまえば子どもたちが「装備の違いはなぜだろう?」と疑問を持たなくなってしまいます。ここでは、教科書や資料集は子どもたちの絵からの気づきを補足するために使うとよいと思います。

授業者が鉄砲(てつはう)について子どもたちにどのようなものかを問いかけますが、これは知識です。知っている子どもしか答えることができません。問いかけるのであれば、少し時間を与えて調べさせるとよいでしょう。中には憶測で「今の大砲のような物」と答える子どももいますが、そのまま受容しました。何人か答えた後で「みんな正解」と言ってしまいます。授業者は本当に大砲のような物と思っていたのでしょうか。もし、そうであれば教材研究不足です。何となく流してしまったのかもしれません。鉄砲(てつはう)はどちらかといえば手りゅう弾のような物と考えられます。子どもの知識に対して、どこで知ったのかその根拠を確認することも必要でしょう。ここは子どもに答えさせるのではなく、写真などを使い授業者が説明すべきだったと思います。

元寇には2回戦があったと言って、防塁の写真を見せます。授業者は何だと思うと問いかけます。子どもたちは写真を見て考えるのではなく教科書や資料集で答を探そうとしています。答探しをさせるのであれば、最初から教えればよいのです。どこにあるといったこの写真に関する情報を与えたり、特徴を言わせたりして、何に使われたのか考えるといった、資料から読み取る経験させる必要があります。

授業者は挙手した一部の子どもの発言を受けて、教科書で確認をしました。子どもたちが資料をもとに考えているようで、実は知識を調べて覚える授業になっていました。
子どもたちに、何をもとに、どう考えさせるのかを意識した授業の進め方を考えるようにしてほしいと思います。子どもたちを笑顔で授業できる先生です。このことと、子どもの意見を共有してつなぐことを意識すれば大きく進歩すると思います。

この続きは次回の日記で。
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