タブレット導入のための研修

昨日は、私立の中学校高等学校で研修会に参加しました。今年度中学校に1人1台のタブレットPCを導入するにあたっての研修です。

今回、私からは、1人1台の環境をどのように活かすかという視点でお話させていただきました。
せっかくの1人1台環境ですから授業での利用だけでなく、日常的な利用を心がけることが大切です。子どもたちの生活の中で情報活用が自然に行われるような取り組みをぜひ考えてもらいたいと思います。タブレットが子ども同士や子どもと先生との日常的な交流にも使われ、これからの時代即した活用をされることを願います。

1人1台の環境であると、子どもたちの学力に応じて問題が出題されるドリル型の教材の活用が思い浮かびます。個に応じた学習という言葉は、教師にとって魅力的なものです。しかし、子どもたちに主体的に取り組ませるための動機づけや、よくわからなくて困っている子どもに対しての支援の仕組が必要になります。システムをつくった側はそういったことができるようになっていると言いますが、まだまだ課題はたくさんあるように思います。使い方のルールや教師のかかわり方といった運用面を工夫することで、システムの足りないところを補う工夫をしてほしいと思います。

現在システムがすぐに手に入るわけではありませんが、子どもたちがタブレット上で作業をする時に、どこにどのくらいの時間がかかったかといったログを取れるようなことも考えると面白いと思います。子どもたちがどこに時間をかけているのか、どこで思考が止まっているのかといったことを知ることができると、授業改善に大いに役立つからです。システムに頼らくなくてもできることはあると思います。このような視点も持っていただきたいと思います。

1人1台の環境で注意してほしいことは、グループ活動などで子どもが分断されてしまうことです。相談しなくても情報を得ることができるので、自分のタブレットで作業を続けてかかわることをしない可能性があります。調べることを分担して結果だけをもらうというような形では、グループで学習する意味はあまりありません。調べたことを基に、互いの考えを聞き合う場面が必要です。
問題によっては、ネットを使えば答がすぐ手に入ります。数学でも、全く同じ問題の答がネット上にあったりします。そのような環境で子どもたちに力をつけるためには、ただ問題を解かせるのではなく、調べるだけでは答が出ないような課題の設定や工夫、答がわかった後に考えることを仕組むといったことが必要です。こういった点で工夫をしなければ、今までの授業よりも、かえって子どもたちが考えることをしない授業になってしまう可能性もあります。

子どもの活動や成果物をデジタル化して保存しておく、いわゆるポートフォリオをつくることも考えてほしいと思います。学習の履歴を保存することで、自分の成長を意識することができるからです。また、担当教師が替わっても、その子どもの進歩を評価することができます。子どもの成長、進歩を見ることが大切だとはよく言われますが、現実には長期にわたる成長を見ることは簡単ではありません。デジタル化しておくことはこの点で大きなメリットがあると思います。
子どもたちは自分のできなかった過去を忘れたい、見たくないものだから、学習の履歴を保存することは辛いのではないかという意見がありました。子どもに寄り添った意見にも思えますが、少なくとも学校での学習に関して言えば教師の子どもへの接し方しだいだと思います。できなかったことをネガティブにとらえさせていることが問題です。子どもの辛い気持ちに寄り添った時に、教師がどのように働きかけているかが問われるのです。できなかったことは事実かもしれませんが、それをネガティブにとらえない、評価しないことが大切です。次にどうすればよいかを一緒に考え、たとえ少しでも進歩すれば一緒に喜ぶ。教師がそういう接し方をしていれば、できなかった時の記録を見て、「昔はこんなこともできなかったね。それに比べてずいぶん進歩したね」と笑えるようになるはずです。タブレットはあくまで道具です。それを活かせるかどうかは使う側の問題なのです。
また、個人のデータを貯めていった時に、タブレットの容量が足りなくなるのではという質問が出ました。確かにその通りです。しかし、それだけ使われたとすれば、タブレットの導入は成功したということだと思います。個人のパソコンにバックアップする、クラウド上のストレージを個別に持たせるといった方法や、学校でデータサーバを準備して卒業時に必要な子どもにはメディアにコピーして渡すというように対応はいくつかあります。現実に容量が問題となりそうであれば、その時の状況に応じた対応を考えることでよいと思います。まずは、どう使うかを考えることが優先だと思います。

研修終了後、何人かの先生から、「結局、自分たちがどんな授業をしたいかの問題だね」という言葉を聞きました。その通りだと思います。1人1台のタブレットを導入することが、先生方の授業改善のきっかけになることを期待しています。
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