子どもたちが根拠を持って考えるために何が必要かを考える

前回の日記の続きです。

7年生(中学校1年生)の国語の授業は、バラバラにした説明文を正しい順番に並べ替えるものでした。
前時に並べ替えを終わって提出させています。それを配ってもう一度見直すところから授業は始まりました、配る前に説明文を読む時のポイントを確認します。
挙手をさせずに最前列の子どもを指名します。その子どもの発言を受けて、「始め」「中」「終わり」と板書をします。子どもたちは落ち着いてよい雰囲気なのですが、指名された子どもは授業者に向かってしゃべり、発言者の方を向かない子どもや、集中していない子どもも目につきます。「始め、中、終わり」は小学校の言葉なので、中学校の言葉で何と言うのかを問いかけます。数人の挙手ですぐに一人を指名しました。発言者はノートを見ながら答えていましたが、ノートを見れば答がわかるのに他の子どもがノートを見ようとしていないことが気になりました。手が挙がらない子どもたちにノートを確認させたいところです。
授業者と子どもの関係はよいのですが、子ども同士のかかわりがまだ弱く、発問に対する参加意識も低いように思います。時間のこともありますが、復習場面では、同じ答でもよいので、テンポよく何人も指名して参加させたり、まわりと確認をしたりといった活動を入れたいところです。

確認したポイントを基に、前回やった並べ替えをもう一度見直すように指示します。子どもたちは自分のワークシートを眺めていますが、ポイントと並べ替える作業との関連が具体的にどういうことかがよくわかっていません。中には、教科書を読んで正解がわかっている子どももいます。子どもたちは理由の欄を埋めようとしますが、何を書けばよいのか困っているようにも見えました。5分ほど時間を与えましたが、時間を持て余しているようでした。
例題を使って、ポイントを基に考える場面があると子どもたちの様子は変わったのではないでしょうか。例えば、違いが文頭の「したがって」と「なぜなら」だけの原因と結果を表わす2組の文を用意して、「接続語に着目する」というポイントを使って順番を考えるといったものです。2つの文の関係と接続語の果たす役割から、根拠を持って順番を決めることができることを実際に経験させるのです。また、説明文のポイントと合わせて、段落の役割、内容にどんなものがあるかを「具体例」「根拠」「原因」「結果」・・・と子どもたちから出させておくと、自分が並べ替えた文章の構成を見直し、根拠を持って説明できるようになると思います。

続いてグループ活動をするのですが、グループで順番を決定することがゴールになっています。グループで話し合うにしても、子どもたちはその根拠を明確にできていません。答を知っている子どももいますから、これが正解だと言われると反論もできません。授業者は根拠にこだわらせようとしていましたが、子どもたちはどのようにして決定するかの明確なプロセスを持っていませんでした。落ち着いて話し合ってはいましたが、説明文の構造や最初に出したポイントを根拠にして結論を出している場面はほとんど見られませんでした。「○○の順番じゃないかなあ」と言う子どもが、「違う」と一言で否定され、しかたなく自分の答を書き直している場面もありました。
「筆者の考える順番以外でもよい」「筋の通る並べ方は一通り?」と問いかけ、これが正解だと決めるのではなく、これもよいのではと言う視点で比較させても面白かったかもしれません。「友だちの説明を聞いて、最終的な自分の並べ方を決定する」と、個人の結論を出すためにグループ活動を使ってもよかったかもしれません。全体の場で、自分の考えを変えた子どもにその理由を聞くことで根拠についてみんなで考えやすくなります。また、この段落とこの段落は絶対にペアになるというものをまず考えさせ、全体で共有しておくことで、文章全体の構造を考やすくするという方法もありそうです。

文につけた記号を使って、各グループの答を板書させます。全体で確認するにも記号だけなので内容の確認ができません。どうしても子どもの顔は上がりません。各文を大きく書いた短冊を用意して、話題になっている段落だけでも貼って、黒板を見ながら話を聞けるようにしたいところでした。

まず、先頭の段落を決めた理由を聞きます。発言者の声が小さいのですが、授業者は手を耳にあててしっかり聞こうという姿勢を伝えます。他の子どもたちに聞こえたかどうかも確認しました。全員に聞いてほしいと思っていることが子どもたちにも伝わります。
「自分の経験をもとに話題を出している」という説明でしたが、授業者はすぐにそれを板書します。ここは、「話題ってどこのこと?」と具体的に本文につなげる、「話題を出していると最初なの?」と根拠をより詳しく聞く、「なるほどと思った?」と他の子どもに納得したかどうかを確認し、納得した子どもによくわからない子どもへの説明を求める、といったことが必要だったと思います。根拠を大切にするためには、根拠とはどのようなものか、どう説明すると伝わるのかを子どもたちに経験させていくことが必要なります。

理由は同じかと他のグループに聞きますが、なかなか反応がありません。一人の子どもが挙手をして答えますが、視点は同じように話題づくりというものでした。
ここで、違う答のグループに対して、今の説明を聞いてどうかを問いかけました。ここからが子どもたちの考えを深める場面ですが、声が出ません。「やっぱり考えは変わらない?」「強い理由がありますか?」と続けますが、反応がありません。ここは考えを変えたかどうかは別にして、「こちらを選んだ理由を聞かせて?」とストレートに聞くとよかったでしょう。正解である多数派の子どもたちに、この理由を聞いて納得したか、考えは変わらないかを聞いたほうが、説得しようとしてより根拠を明快にできたかも知れません。ちょっと結論を急ぎ過ぎのように思いました。

結局、先生がこういった段落を序論と言うと結論づけました。論理が逆転しているように思います。「序論とは何か?」「なぜ最初にこういう段落が必要なのか?」といったことをきちんと整理しておいてから、この問題に取り組むべきでしょう。
「わかった」と違う答のグループに納得することを求めますが、なかなか反応しません。また正解のグループの子どもたちは、スッキリしたという反応ではありませんでした。最後は先生が説明して納得させようとするのでは、子どもたちは無意識のうちに先生の求める答探しをしてしまいます。

2番目の段落の理由を発表させます。子どもの説明はちょっと言葉足らずでした。授業者は質問しながら、「ああ、わかった」と言って「皆さんどうですか?」と聞きます。うなずいている子ども見つけて「うなずいてくれています」とつなぐのですが、そのまま授業者が説明しました。せっかく子どもがつながりかけているので、できればその子どもを指名してもう一度説明させ、子どもの言葉で全員が理解するようにしたいところです。「他に根拠がなければこれでいいですか?」と一問一答になってしまいました。

次の段落の理由で、「この」という指示語に注目した意見が出ました。同じ所に注目したグループはないかと聞きますが、このグループだけだったようです。他のグループの理由を聞き、発言を「壺と言う言葉でつながっている」とまとめて、だから答はこうだと結論づけました。先ほどのグループの意見は無視された形になってしまいました。このグループの一人が、他のグループの意見を聞いている時に、作業用のシートを指さしながら前にいる友だちに何か話していました。この子どもが何をしていたのか、何を考えているかを聞きたいところでした。
「どちらも壺という言葉でつながっている」という意見は、2つの段落が近いことの根拠にはなりますが、その順番を決定する要素ではありません。「何について書いてある?」「この2つの文の関係は?」「どちらが先?」といった問いかけで、文の関係を意識させることが必要だったと思います。最初に示した説明文のポイントを意識することなく、表面的な理由だけになってしまい、答を導き出せればよいという答探しになってしまいました。

授業者は根拠を問いかけているのですが、時間があまりなかったこともあり、どうやって考えたか、どんな議論があったかという過程を聞くことができませんでした。挙手をする子どもはごく数人です。多くの子どもたちが根拠もって考えられる、参加できるようになるために何が必要なのか、何を共有すべきなのかを明確にする必要があります。
説明文の構造、構成要素を意識させ、段落の内容を基にどれにあてはまるのか、それはどの言葉からわかるのか、キーワードは何かといったことをまず考えさせるとよいと思います。考えるための足場をつくることで、根拠を明確にすることができるはずです。

授業者は子どもの言葉を聞くことや全員を参加させること、根拠を大切にしようとしています。こういったこと意識して授業をしているのはとても素晴らしいと思います。以前と比べて確実に授業改善がされています。だからこそ、より高い壁にぶつかります。授業者はうまくいかなかったと反省されますが、失敗を気にせずに次はこうしようと前向きにとらえてほしいと思います。焦らずにこの姿勢で授業を続けていけば、きっと子どもたちは先生の求める姿を見せてくれると思います。

この続きは次回の日記で。
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