子ども同士がかかわり合い、考えを深めることが次の課題

前回の日記の続きです。

9年生(中学3年生)の国語の授業は、「和語」「漢語」「外来語」の特徴や語感を考えるものでした。
授業者は以前と比べると、子どもをよく見て授業を進めることができるようになっていました。挙手だけに頼るのではなく、子どもの反応を見て指名する場面も見られます。
「ディズニーシーでハッピーな時間を過ごすことができました」という修学旅行の思い出を学年便りに載せるならどう書くかという問いかけで授業が始まりました。自然にまわりと相談する子どももいます。授業者は「ハッピーを幸せと置き換える」という意見がチラチラ出てきたと、子どものつぶやきを拾って紹介します。子どもの言葉を拾うのはよいのですが、少し自分でしゃべりすぎているように思いました。きちんと全体に対して発言させて、授業者ではなく子ども自身の口で共有することを意識するとよいでしょう。
「幸せ」に置き換えた人がなぜそうしたのかを全体に問いかけます。友だちの考えを想像させるというのはよい発想です。反応した子どもがいたのでしょう、挙手に頼らずすぐに指名しました。しかし、質問から間を置かなかったので、他の子どもたちは考える時間がありません。指名したとたんに、他人事になってしまいました。一人ひとりが自分の考えを持てると、友だちの考えを聞きたくなります。子ども同士をつなげるために何が必要かを意識してほしいと思います。

「みんなが見るから」という意見に対して、「どこに載せるの?」「学年便り」とつなぎ、「みんなにに見られるから、学年便りに載せるから、ハッピーではダメなの?」と返します。「ハッピー」はどういう印象なのと問いを変え、挙手に頼らず次々指名していきます。一見するとテンポがよさそうに見えるのですが、個々の意見を全体で共有できていません。一部の子どもと授業者だけのやり取りで進んで行くことになりました。
「幸せ」という言葉と同じ意味の言葉に「幸福」があることを授業者が提示します。最初の文章の「ハッピー」を「幸福」に変えるとどうなるかを問いかけ、「渋い顔をした人がいる」と指名します。「ピンとこない」「おかしい」といった発言が出てきます。それらの言葉を受容しながら何人も指名します。「○○さん、今の意見聞こえた?」とつなぐことも意識しているのですが、やはり子どもたちの顔が上がらず、反応しません。「同じように思った人?」「似た意見の人?」と友だちの意見を聞くことを意識させる必要があると思います。

ここで、この日のワークシートを配ります。ワークシートには「新しく農業を始めるには、地域の(サポート・支援・手助け)が必要です」という文が書かれています。自分ならどの語を選ぶかを決めさせます。条件や目標がはっきりしていないので、根拠を持った答が期待できるものではありません。どれを選ぶかはきれいに分かれました。
選んだ理由を聞きますが、明確な根拠があるわけではありません。言葉には共通に感じる語感がありますが、そのどれを選ぶかは個人の嗜好にもよります。どこに焦点を当てているのかがはっきりしません。語感の共通性を意識させるのであれば、その言葉を選ばなかった人でも言葉から感じるものは同じなのかを聞いてみるとよいと思います。
子どもたちの発言は「伝わりやすい」「雰囲気がつかみやすい」といったもので、はっきりしていません。「それってどういうことだろう?」と問い返して、もう少し詳しく聞くことが必要でしょう。

この場面でも、子どもたちは発言者の方を向きません。授業者は発言者にみんなの方を見るように指示しますが、発言する側だけでなく聞く側をもっと意識させることが必要です。
授業者は言葉を選択することから根拠を発表するまでかなり時間を取りましたが、ワークシートを配る前に問題文を提示して、その場でどれを選ぶかを聞いてもよかったと思います。挙手で意見が分かれることだけを確認して次に進むのです。根拠を持って考えられる課題に時間を使うべきでしょう。
次の課題では、状況を設定して言葉を選ばせます。「友だち同士」「大勢の人の前」「初めて会うお年寄り」という3つの状況です。ここで、選択肢と状況が3つずつであることが引っかかります。当然のように子どもたちは3つの選択肢を1対1に対応させようとします。試験問題を解く感覚です。子どもたちは正解探しを始めます。そうではなく、状況をもっと増やして、同じ言葉を選んだ理由の共通点を考えることで、言葉の持つ語感に気づかせたいところです。「親に話す」といった場面で、「友だち同士」と同じか違うものを選ぶかの理由を聞くことで、語感を違うと感じているのではなく、親との関係が言葉の選択に影響していることにも気づけます。

子どもたちの意見は、選ぶものは違っても感じる語感は大きくは異なっていないように思います。どんな語感の言葉を使うべきかが異なっているのです。ここを焦点化せずに理由を聞いても、深まっていきません。子どもたちの意見を聞いた後、正解はないと説明して、この問いに関する国立国語研究所の調査の結果を発表します。これらの言葉の種類に違いがあると、「和語」「漢語」「外来語」という用語を定義します。語感には触れずに、これらの使い分けを考えてもらいたいのでこのような活動をしたとまとめました。
授業者は文で使われている言葉が、「和語」「漢語」「外来語」のどれかを答える問題に取り組ませます。単なる分類の練習になってしまいました。そうではなく、「和語」「漢語」「外来語」で語感がどのように違うかをいろいろな例で考える活動が必要だと思います。
答の確認場面では子どもの顔が上がらないことが気になりました。わかっているのでちゃんと聞かなくても大丈夫と思っていたのでしょう。

教科書の説明文にはてんぷらなどの外来語だと意識されなくなっているものがあることも書かれています。こういった例を使って、言葉が生きていることや、時代とともに変化し使われている内に手垢がつくことなどにも気づかせる活動を入れたいところでした。

最後に教科書のまとめを読んで、日常生活で「和語」「漢語」「外来語」を使いこなすことを意識してほしいとまとめました。授業者の伝えたいことを自分で説明することになってしまいました。子どもたち自身でこのことに気づくようにしたいところです。選んだ言葉によって、自分と相手との関係性がわかる、相手のことをどう思っているのか伝わるといったことに気づかせ、子どもたちがそういったことを意識して言葉使おうとするようになる授業展開を考えてほしいと思いました。

子どもの言葉をしっかりと受容できるようになり、子どもとの関係も良好です。子ども同士がかかわりながら、自分たちで気づける、考えを深めるような授業にするのが次の課題です。そのためには、教材研究も重要です。子どもたちのどのような活動をさせると、目指す姿が見られるのかを意識してほしいと思います。

この続きは次回の日記で。
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