一人一台のタブレット活用で意識してほしいこと

先週、私立の中学校高等学校を訪問しました。今年度、中学校の1年生全員に導入するタブレットの活用に関する研修に参加するためです。

研修は希望者のみでしたが、多くの方が参加されていました。積極的に取り組もうという意欲が感じられます。校長からのこれまでの経緯と今後の進め方についての説明に続いて、私から導入について意識してほしいことをお話しさせていただきました。既に先生方の検討委員会からは、方向性が職員会議で報告されています。中学校の教育改革の流れと一体でタブレットの導入が考えられています。これからの子どもたちに育てたい力を明確にし、それを元にどのような取り組みが必要かを示しています。授業を今後どのように変えていくべきかから出発し、その道具としてタブレットをとらえています。まずタブレットありきという流行に乗った目先だけをとらえたものではなく、しっかり足が地についていることに安心しました。

タブレットを使った実践はいろいろと発表されていますが、正直これだというものはないことからお話ししました。特に高等学校や私学では、学校ごとに子どもの実態は大きく変わっています。その学校に応じた活用方法を見つけることが必要です。何が正解かはやってみなければわかりませんが、どのような子どもたちを育てたいか、どのような子どもの姿が見たいかがはっきりとしていれば、実践の成否は自ずと見えてきます。先生方がその結果を互いに共有して改善していけばよいのです。先生方のその姿こそが、見たい子どもたちの姿そのものだと思います。

実践にあたっての視点をいくつか示させていただきました。今までの授業の延長線上に、タブレットやICTを使うことで効率的に進めることができることがたくさんあります。そこで浮かした時間を子どもたちが思考し考えを深める時間にすることができます。また、子どもたちが思考するための道具としての活用もあります。その時注意してほしいことは、タブレットやICTを使って得た結果ではなく、どのように使ったか、何を考えて使ったかといったその過程やきっかけを共有することが大切だということです。そして、授業に限定せず、情報活用の道具として日常的に使うようにすることも大切です。情報モラルや情報の裏を取るという姿勢など多くのことがこれからは求められます。その基礎を日常生活の中で身に付けることを意識してほしいと思います。

先生方は発信力をつけること大切にしたいと考えておられますが、発信力はただ発信すれば身に付くのではありません。受け手を意識すること、受け手の立場で考えることが大切です。いろいろな場面で発信以上に聞くことを重視し、受け手が発信から何を受け取れた、受け取れなかったかをきちんと共有することが必要です。発表した後、その発表がどうだったかを聞き手に評価してもらい、それを元にブラッシュアップする。再び発表してまた評価をしてもらう。こういったサイクルを回すのです。発信して終わりではなく、発信することから次の学びをスタートするという発想を持ってほしいと思います。

このようなことを話させていただきましたが、先生方からは反転授業やデジタル教材の扱いについて質問をいただきました。自分たちがこれからやろうと前向きになっているからこその質問でした。教材のデジタル配信などは、教材の質が高いことと、子どもたちに学ぼうという主体性が無ければ効果は期待できません。特に後者こそが先生方の役割として大切にしてほしいことです。

この日は、募集や入試関連の新たなシステム構築についての打ち合わせにも参加させていただきました。実際にどのような仕事をどのようにこなしているのかについての情報を聞くことができましたが、担当の先生の、自分にしかできないことに専念したいという言葉が大変印象に残っています。すべてを一度にシステム化できるわけではありませんので、優先順位を考え、戦略的にロードマップをつくっていくお手伝いができればと思っています。
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