どこでつまずいているのかを意識して活動を考える

昨年秋の小学校の訪問です。

1年生の算数は、和が10を越える2数の足し算の場面でした。
全体的に子どもたちは落ち着いてよく集中しています。授業者と子どもたちの関係のよさが感じられます。
8+5の足し算をするのに、「さくらんぼしたい」という言葉がキーワードとして出てきます。授業者はすぐに「10を越えるときに使うね」と説明をしましたが、「どうしてさくらんぼしたいの?」と子どもに問いかけて、子どもから理由を引き出すことをしたいところです。
子どもたちに「10を越えそうか?」と問いかけると、「越えそう」という声が返ってきますが、全員ではありません。しかし、授業者は「10を越えそうだね。越えそうならどうする?」「10をつくる」と、手順を追っていく説明していきます。こうやって手順を教えていくと、手順を覚えることが算数の学習になってしまいます。ここは、これまでやってきているはずの10の補数を意識させ、そこから手順を子どもたち自身が考えるようにするとよいと思います。
10を超えるかどうかは感覚でなく、「いくつ足すと10になる?」と補数を確認して、足す数はそれより大きいかどうかを問いかけます。「大きければ?」「10を越す」といったやり取りを何度もするのです。1桁の数字を見るとその補数が常に連想されるようにすることが大切だと思います。

授業者は「あといくつで10になるの?」と問いかけますが、子どもの反応は思わしくありません。補数をつくることはまだあまりやっていないようです。1桁の数に対してその補数をつくる練習をして定着させておかないと、考え方がわかっても計算ができません。
そこで、授業者はブロックを使って計算をさせます。ブロックを準備するように指示するのですが、子どもがブロックを取り出している時に、問題から8個と5個が必要だと説明します。これでは徹底しません。まず、説明をし、指示を徹底させてから活動させることが必要です。
これまで、さくらんぼ図を使ってきて学習しているようです。考え方はわかっているのであれば、子どもたちがつまずいているのは補数をつくる部分でしょう。ブロックを使って補数をつくることだけを練習してもよいと思います。

ブロックを使って、足す数を補数の2と残りの3に分けます。分けた2をどうするかを問いかけていきます。挙手に頼らず何人も指名しますが、答えられない子どもも目立ちます。子どもたちは授業者の指示に従って作業しているだけなので、何のために補数の2をつくったのかがわからなくなっているのです。「どうして2と3に分けたの?」といった根拠を問いかける場面がもっと必要でしょう。

子どもたちはわかりたいと思ってしっかりと参加しているのですが、結局授業者の与える手順を覚えることになってしまいます。この時間のポイントは、「足す数の補数を見つける」「足す数を補数と残りの数に分ける」「足される数と補数で10をつくり、残りの数を足す」という手順を覚えることではなく、根拠を持ってこの手順を再現できることです。そのためには、根拠を問いかけ、確認していくことが必要です。
もう1つのポイントは補数をみつけられることです。手順を理解しても、ここでつまずいては何ともなりません。これには練習が必要です。この2つのポイント意識をして、子どもがどこでつまずいているかを見取り、必要な活動を組み立てることが求められます。
子どもたちの授業規律や学習意欲は比較的よい状態ですので、こういったポイントしっかりと意識して教材研究をし、授業を組み立ててほしいと思います。

この続きは次回以降の日記で。
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