実験の意味を子どもたちに考えさせる

前回の日記の続きです。

3年生の理科の授業は仕事と力学的エネルギーの関係の実験の授業でした。
子どもたちのよい行動をほめることできますが、緊張していたのか表情がちょっと硬いことが気になりました。指示に対して全員ができるまで待てるのもよいと思います。全員参加を意識しています。
仕事の定義の確認をしますが、一部の子どもの発言を受けて進んで行きます。復習場面では、時間短縮をしたいこともあり、一人指名発表のあとすぐに確認して終わることが多いように思います。しかし、既に学習したことだからこそ多くの子どもが参加できるはずです。挙手ではなく意図的に指名したり、まわりと確認させたりすることで、より多くの子どもが活躍できるようにしたいところです、
中学校の範囲では仕方がないことなのですが、運動エネルギーと位置エネルギーの説明が、どうしても感覚的になってしまいます。同じ位置にある同じ物体でもその時の速度が異なればその物体の持つエネルギーは異なります。同じ速度、同じ位置にあっても質量が異なればやはりエネルギーは異なります。一つの例ですが、エネルギーという言葉をこういった状態の違いを表わす共通の尺度としてとらえ、実験を通じてそれがどのようなものかを考えていくといった進め方もあると思います。理科ではその概念がなぜ必要になったのか、現象をどのようにとらえるのかといった科学的な見方・考え方を意識してほしいと思います。

この日の実験は、鉄球を斜面で転がして木片にあててセンサーで鉄球の速さを測り、木片がどれだけ動いたかを調べるというものです。鉄球の速度や木片の動いた距離が何を意味するのか、なぜ測定するのかはよくわかりません。鉄球や木片は重さが異なる物が用意されていて、授業者は「一番考えやすいもの」を選ぶようにと説明しますが、子どもたちはまだ何も考えていません。授業者が実験器具の使い方、手順をすべてていねいに説明します。結果の記録の仕方も表を与えて指示します。実験の説明に多くの時間を割きましたが、何を知りたいのか、どんな予測がたつのか、どんな実験をすればそのことが分かるのか、どのようにまとめたらよいのかといった、実験の持つ意味、結果をどう処理して考えるかといったことに時間を使いたいところです。
子どもたちは指示された通りに実験を進めますが、考えることなく作業をしているだけで結果がどうなるか予想をしたりしているわけではありません。授業者が実験中に「やりながら耳を傾けて」と注意事項を追加で説明しますが、実験に集中している子どもたちの耳には届きません。大切な説明であればいったん実験を止めてからするべきだったでしょう。この説明の後、子どもたちのテンションが上がっていきます。授業者が子どもの作業に割り込み、集中を乱したことが原因かもしれません。実験が終わるころにはかなり高いテンションになっていました。

実験終了後、得られたデータをどう整理するのかはとても大切な活動です。しかし、そもそも何のために実験をしているのが明確でないままでは、考えることはできません。結局グラフにすることも、その書き方の説明も授業者が行います。グラフを元にして考察をしますが、注目する視点を子どもたちが考える場面はありません。活動主体の授業になってしまいました。

実験は手順をしっか理解させないと失敗してしまいます。そのため、どうしても事前の説明が長くなる傾向があります。時間がかかる実験も多いので、やることで精一杯ということも珍しくありません。しかし、実験そのものが目的化しては本末転倒です。手順の説明は動画やICT機器を活用するなどして、短い時間でわかりやすく伝える工夫をし、何を知りたいのか、そのためにはどんな実験をすればよいのかといったことに多くの時間を割いてほしいと思います。授業者は子どもたちの関係はよいので、このことを意識することで、授業は大きく進歩すると思います。
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