スモールステップと子どもをつなぐことを意識する

前回の日記の続きです。

2年生の数学は少人数による平行線を題材にした図形領域の学習の場面でした。
教科書、ノートを閉じさせて平行線の性質の復習をします。2つの直線が平行な時に何が等しくなるかを問いかけます。指名された子どもは「同位角と錯角」と答えますが、言葉だけで確認することはあまり意味がありません。同位角と錯角というのは平行線に対しての用語ではなく、3つの直線がつくる角の関係を表わす用語です。図で角を示して、その角の同位角はどれか、錯角はどれかということをきちんと確認することが必要です。図と用語と性質を合わせて理解することが大切です。平行線の性質ならば、図で角を示して、「これと大きさの等しい角はどこ?」「それは何角?」と次に次に答えさせるといったやり方をするとよいでよいでしょう。
また、教科書、ノートを閉じさせると、思い出せない子どもは答が示されるのを待っているだけになります。結果として数学は覚えることが大切だと思う子どもが増えてしまいます。そうではなく、自分の手や頭を使って考えることが大切だと気づかせてほしいと思います。忘れないことを大切にするよりも、忘れても教科書やノートで確認すればいいと、自分の手を動かす方が復習としても効果が高いと思います。

1組の平行線に1本の直線が交わってできる同傍内角の和の性質を説明するのが最初の課題です。「これを知っておくとこの後の問題がサクサク解ける」と子どもたちに意欲づけをします。問題を解くことが目的化していることが気になりました。数学的な見方・考え方につながるようなことで子どもたちの主体的な活動を引き出したいところです。結果を覚えることも大切ですが、わかっていることを根拠にして説明(証明)する。そうすると、その性質を使えるようになる。道具が増えると便利になる、できることが増える。こういうことをもとに子どもたちの主体性を引き出せるとよいと思います。

同傍内角の和が180°になると与えて、どうしてそうなるのかを言葉で書くように指示します。天下りで課題を与えるのではなく、どのように線を引いても180°になることを確認し、「いつでも言える?」「絶対?」と揺さぶり、「いつでも180°になることを説明して」とすることで、課題の必然性が生まれます。また、数学においては、式や図も立派な言葉です。「根拠を明確に示す」「記号を使って、図をうまく使う」「式を使ってわかりやすくする」「書かれたものだけで言葉による追加の説明が必要ないように書く」といった課題の与え方の方が、活動の方向性がはっきりすると思います。

ノーヒントと言って個人で考えさせますが、180°になることの理由がわかることと、言葉で説明を書くこととの間にはギャップがあります。理由の見通しを持つ場面、理由がわかる場面、言葉で説明できる場面を意識して構成するとよいでしょう。まわりと相談させて見通しを持たせるといったことが必要に思います。
机間指導しながら個別に授業者が説明をしますが、そうするのであれば、まず全体で平行線の性質から言えることを確認し、「180°ってどんな角?」といった発問をして見通しを持たせることが必要でしょう。言葉で書くことがこの時間のねらいであれば、グループなどを活用して、180°になることの説明を共有する場面が必要だと思います。言葉での説明はそれからの課題でしょう。

机間指導で個別に説明をすることにかなりの時間を使ったあとで作業を止めます。最初に示した言葉で説明を書くことではなく、どんな考え方をしたかを黒板の図を使って説明させました。考えを共有するのであれば、もっと早い時期に共有すべきでしょう。指名された子どもの説明に錯角が等しいことの理由が抜けていいたので、「なんで?」と問いかけて「平行だから」と本人に修正させました。こういったかかわりは大切です。「○○さんは錯角が等しいといったけど、理由わかる?」と、発言者だけでなく他の子どもに問いかけることも視野に入れるとよいでしょう。
子どもたちはとても集中して発表を聞いています。発表が終わると自然に拍手が起こりました。授業者は補足がないかを子どもたちに問いかけますが、反応はありません。結局授業者が発表者の考えをもう一度説明しました。そうではなく発表者の考えを他の子どもにもう一度説明させるとよかったと思います。せっかく子どもたちが一生懸命聞いていたのですから、もったいないと思いました。

子どもたちに考えを発表させて進めようとするのですが、どうしても授業者が説明をしたり、ヒント与えたり、どういうことかを発言者に問いかけたりします。大切なことはすべて授業者がしゃべってしまいます。子どもたちの発言量が絶対的に少ないのです。そうではなく、その役割を子どもたちにまかせるとよいでしょう。

言葉で説明する、書けるようになることがねらいなのであれば、そこに至るスモールステップを意識するとよかったと思います。「見通しを持つ」「説明ができる」「説明を言葉でわかりやすく書く」といった一つひとつのステップを全体で共有する場面をつくることで、もっと多くの子どもが自分の考えを持てたはずです。
また、一部の子どもの考えや発言を受けて、授業者が説明することが多いのですが、子どもたちは集中して授業に参加することができているので、発表者と同じような考えの子どもがいないか問いかけたり、発表者の考えを他の子どもに説明させたり、説明不足の部分を他の子どもに補わせたりといった、子どもをつなぐことを意識すると授業はと大きく進歩すると思います。

この続きは次回の日記で。
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