どのような力をつけるのかを意識した教材研究

昨年度のことです、私立の中高等学校で新人研修の内容の相談と学校全体の授業参観を行いました。

教科指導部主任は中教審答申などもよく読み込んでいます。11月の新人研修では「主体的」「対話的」「深い学び」の3つをキーワードにして授業公開を行ってもらおうという提案です。
具体的に次のようなものです。

「主体的」
・生徒が興味・関心を持って課題に向き合っているか
・どのような時にそれがたかまるか
「対話的」
・「教師×生徒」「教材×生徒」「生徒×生徒」の間に対話が見られるか
「深い学び」
・深い学びにつながるための設問、課題であったか
・生徒に何をどのように発言させる必要があるか

この視点を元に、教科会では、

1.授業のゴールの明確化
2.生徒はなにができればよいのか
3.生徒のどのような姿を見たいのか
4.そのために何を課題として与えるのか

について話し合ってもらいます。
授業公開の2週間前には、授業を見せていただき事前にアドバイスをすることになりました。新人の研修ではありますが、新人の授業を通じて多くの先生に新しい取り組みや工夫について考えていただく機会になることを願いました。

この日は若手の高校1年生の数学の2次方程式の授業を見せていただきました。
グループの形で問題を解かせます。時間が来れば答合わせをしますが、わからなければ友だちに聞くようにと、グループの隊形にしてから活動の指示をします。ちょっとざわついている子どもがいるので、「聞いていますか?」と注意をしますが、口調がちょっと上から目線なことが気になります。「聞いてね」と声をかけることから始めた方がよいと思います。解くべき問題の指示の後はいつも通りの指示なのでしょう。話を聞かずに問題を解いている子どもが目立ちます。子どもたちにどうあってほしいかをきちんと意識して授業規律を確立してほしいと思います。

問題のレベルが彼らには低いのでしょうか、子どもたちは相談することなく黙々と問題に取り組んでいます。ある程度時間が経つと解けてしまってすることがなくなっている子どもが目立ちます。ムダ話をしたり、机にふせったりする姿が目立ちだしました。できた子どもへの指示が必要です。
せっかくグループの隊形で問題に取り組むのであれば、みんなの知恵を集めなければ解けない課題を設定することを考えるとよいでしょう。子どもたちが自然に頭を寄せ合うような課題に挑戦させてほしいと思います。

答の説明を子どもたちに発表させます。一問ずつ各グループに割り当て、全員で前に出て説明をします。説明するのは問題ごとに一人ですが、何回か回ってくるので、毎回異なる人が説明します。発表する問題が決まると子どもたちは相談を始めます。
一問ずつ発表するグループが変わるので、そのための準備や移動にムダな時間がかかります。あまりに簡単な問題は説明するほどでもありません。説明で何がポイントなのかもはっきりしないので、評価や価値付けもありません。この単元、この教材では何が大切なのか、どのような考え方を身につけさせたいのかを授業者が明確に持っている必要があります。
因数分解で1元n次方程式が解けるのは、「0 Deviser(2数とも0でないのにかけて0になるような数)」がないこと、つまり「かけて0なら必ずどちらかが0」になるからです。例えば、一元2次方程式(x-2)(x-3)=0の解がX=2,3という説明で、xに2を入れると0になるから、3を入れると0になるからは、正しくないのです。確かに2と3は解になっていますが、それは十分条件であって、必要条件についての説明にはなっていません。方程式を解くとは、その方程式を満たすすべての解を求める(必要十分条件)ことです。こういったことをきちんと押さえていないのです。

子どもたちは、一生懸命取り組んでくれますが、数学的にどのような力をつけるのかが授業者の中で明確になっていなければ、「活動あって学びなし」になってしまいます。問題演習であっても、教材研究はとても大切なのです。
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