介護支援員の研修で講師を務める

昨年度、市の介護支援員の研修で「コミュニケーションとクレームの対応」について講師を務めさせていただきました。
私自身介護に関しては素人なのですが、今回はファシリテータの方の助けを借りながら利用者の視点で皆さんと一緒に考えさせていただきました。

どのような仕事でもそうですが、コミュニケーションの基本は「聞くこと」、つまり相手の「伝えたいこと」「望むこと」を正しく理解しようとすることです。最初に、この視点で日ごろ参加者の皆さんが意識していることを聞き合っていただきました。さすがに日ごろから利用者とその家族と一緒にケアプランを作成されている方々ですから、いろいろなことを意識されていました。
コミュニケーションを取る上で大切なことは、常識だと思っていることが人によって異なるということです。ちょっとした行き違いやすれ違いが起こることも避けられません。言った言わなかったの議論をしても水掛け論になってしまいます。相手の伝えたいことを正しく理解できなかった自分が悪かったと考え、次にどうすればよいのかを考えることに切りかえる必要があります。

利用者の方が、「介護はいらない」と言ったとしても、その発言の裏には様々な思いがあるはずです。その思いが何なのかを知る必要あります。そこで、具体的な場面でどのような確認が必要かを聞き合っていただきました。実際にどのような例があったのかを思い出していただき、多くの意見を聞くことができたと思います。しかし、すぐに「どうしてですか?」「○○だからですか?」と聞き返せば、相手の言葉の否定や詰問になってしまいます。まず、相手の言葉を復唱して受容することが必要です。こういったことも実際に練習していただきました。
また、利用者やその家族に自分の言葉が正しく伝わるかどうかはとても大切です。どのような言葉を使えば伝わるのかを意識することが必要です。介護の専門用語を使うことで正確になるのかもしれませんが、相手の方に伝わるかどうかはまた別です。伝わる言葉を選ぶようにしてほしいと思います。そして、正しく伝わったかどうか相手の反応を見てきちんと確認することを常に心がけることが大切です。また、相手の方がなるほどとうなずいても正しく理解しているという保証はありません。相手の反応を見ながら、ていねいなキャッチボールを心がける必要があります。
相手にとって一番よいと思う提案をしても必ずしも納得してもらえるわけではありません。無理に説得しようとせず、相手の希望をまずしっかりと受け止め、尊重するようにしましょう。提案を受け入れられなくても落ち込む必要はありません。考え方は人それぞれです。それよりも、どれだけ相手の方の話を聞くことができたかを大切にしてほしいと思います。

クレームの対応については、具体例を元に考えてもらいました。最終的には、グループ毎、参加者にケアマネージャー、利用者、利用者の家族役になってロールプレイをしていただき、他のメンバーがファシリテータとなって学び合っていただきました。皆さん、自分の経験を最大限に生かし、特に利用者、利用者の家族役は迫真の演技でした。このロールプレイを通じて多くの事例に接することができたと思います。どのグループも、真剣ですが、とても楽しそうだったことが印象的でした。

どなたも、利用者と利用者の家族のことを真剣に考え誠実に接していることが伝わってくる研修でした。だからこそ、最後に私からは「頑張りすぎないでください。利用者とうまくいかなくて担当を変えられても、落ち込まないでください」とお伝えしました。「あなたが担当する利用者は他にもいるはずです。そのこと引きずって笑顔がなくなってしまえば、多くの方に影響してしまいます。人には相性があります。誰とでもうまくいくことはあり得ません。別の方に担当が変わることで、その方も相性のよい方に出会うチャンスができたのだと前向きにとらえてください」そうお願いして終わらせていただきました。

皆さんの話を聞かせていただいて、私にとってもとてもよい学びとなりました。このような機会をいただけたことに感謝します。
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