知識と考えさせることをしっかりと意識して授業を構成する

ずいぶん間が空きましたが、前回の日記の続きです。

7年生の理科の授業は、気体の性質の授業でした。
まずワークシートを配りますが、ほとんど白紙に近いものです。いろいろな考え方があるとは思いますが、情報が多すぎると考えがそれに影響されてしまいます。子どもに自由に考えさせるには、このワークシートのように情報が少ない方がよいと思います。
ワークシートが配られた後、子どもたちの様子が落ち着きません。授業者の板書を写しているのですが、まわりとしゃべっている子どももいます。授業者に注目するように指示をすると声は収まりますが、授業者が話し始めると鉛筆を離さないまま、また写し始める子どもの姿が目につきました。きちんと全員が集中することを求めることが必要です。

身の回りにはどんな気体があるかをワークシートに書かせます。小学校でも学習したと言っているのですが、学習用語の定義は意外と定着していないものです。あいまいな部分も多いと思います。ここでは気体とは何かの定義からもう一確認する必要があると思います。何となくではなく、個体、液体、気体の違いをきちんと押さえておくことが必要です。
子どもたちは個別にワークシートに向かって書き込んでいます。理科室ですから既にグループの形になっています。できるだけたくさん見つけるようにと指示して、子ども同士を相談させてもよいと思いました。
挙手により発表させます。子どもの「窒素」という答えに「窒素」と復唱してすぐに板書します。板書することよりも、「窒素を書いた人?」と全員が書けているか確認することを優先すべきでしょう。また、「身の回り」という条件についても確認する必要があると思います。「窒素は身の回りにある?」「どこに?」「どうやってわかる?」と単に知識として知っているだけで、実はきちんと確かめていないということを気づかせるような揺さぶりも必要だと思います。
授業者が板書している間も手を挙げ続けている子どもがいます。単に指名されたいという意欲の現れなのでしょうか。それとも、日ごろ自信をもって挙手できないのでこの機会を逃したくないのでしょうか。ちょっと気になる場面でした。
一問一答で進んで行きます。二酸化炭素、水素と出てきますが、水素は身の回りの空気にはほとんど含まれていません。二酸化炭素も体積比で0.1%以下です。だからこそ、二酸化炭素は呼吸で吐き出されているといったことと合わせて確認をすることが重要だと思います。また、水も身近な気体です。空気中には数パーセントの水蒸気が含まれています。気体の定義と合わせて押さえておきたいところです。
また、子どもたちからは塩素や一酸化炭素、ヘリウム、アンモニアが出てきますが、これらについてもきちんと確認をしたいところでした。

授業者は板書を終えると、「どんな気体?」と子どもたちから出たてきた気体の確認をしましたが、答えにくい問いかけです。子どもたちからはうまく言葉が返ってきません。「どんなところにある?」「どうすれば出てくる?」といった問いかけにすると、答えやすかったと思います。

酸素と二酸化炭素の性質を書きだすように指示しますが、これは知識です。覚えていなければ書くことはできません。子どもたちの手はすぐに止まります。教科書や資料集を調べる子どももあまりいません。子ども同士のかかわり合いもほとんど起こらず、ムダに時間が流れてしまいます。かなりの時間をかけましたが、全体で確認すると挙手は数人でした。教科書や資料集を調べさせ、早く確認をするべきだったと思います。
子どもたちの発表を授業者はそのまま板書します。多くの子どもたちはそれを写しているだけです。二酸化炭素は水に溶けるということが子どもから出てきます。しかし、気体が水に溶けるということはどういうことかははっきりしていません。授業者は炭酸水の成分表を見せて二酸化炭素が水に溶けていることを示しますが、これでは科学的な説明にはなっていません。「水に溶けるってどういうこと?」「個体が水に溶けるってどういうことだっけ?」と復習したり、少し考えさせたりしてもよかったかもしれません。

気体を区別するのにどんな実験をすればよいのか、子どもたちに考えさせます。子どもたちが挙げた性質から、酸素と二酸化炭素を区別する実験を考えるのです。実験を考えるというのはよい課題なのですが、子どもたちが考えるための視点を整理できることが必要です。そういった力をつけておかなければ、単なる思いつきの実験になってしまいます。気体を区別するためには、気体の性質を元に考える必要があります。そのために、子どもたちから出てきた酸素や、二酸化炭素の性質を、質量(密度)、色、溶解度などの物理的性質、石灰水を濁らせる、物を燃やすといった化学的な性質などで分類し、違いがどこにあるかで区別できることをきちんと押さえることが必要でしょう。

子どもたちは個別に作業をしていますが、なかなか相談することができません。自分の考えを書き終るとじっとしている子どもがほとんどです。一部の仲のいい子どもがグループと関係なくしゃべります。授業者が意図的に相談しなければならない状況をつくることが必要です。
授業者はずいぶん時間が経ってから試験管を見せ、ここに気体が入っているとして、どうやって区別するのかと条件を提示します。そういう条件があるのならもっと早く提示すべきでしょう。子どもたちは、試験管を見せられてすぐにまわりとしゃべるのですが、一通り話すとほとんどのグループの会話は途切れます。話し合いの視点がしっかりと持てていないのです。子どもの動きが止まったら、早目に作業を止めて、子どもたちの意見を聞きだして揺さぶったり、焦点化したりすることが必要だったと思います。

全体に対してどんな方法があるか授業者が問いかけます。挙手するのはいつも同じ子どもたちです。
リトマス紙を使うという意見に対して授業者は、「何を調べるのに使う?」と問い返します。ここは、子ども同士で、なるほどと思ったか確認して、議論させるべきでしょう。酸性かアルカリ性、中性という子どもの言葉を受けて、「リトマス紙がどんな色になる?」と聞き返しますが、授業者と発言者との2人だけの関係になって、他の子どもは他人事でそこに参加しません。「赤から青が酸性、青から赤が中性」と返すと、他の子どもがバカにしたように笑います。こういう雰囲気は何とか変えたいところです。まわりと確認するようにと指示しますが、その後指名した子どもは「わからん」と答えます。知識を単に記憶に頼るのではなく、きちんと資料集などで確認するという手段を与える必要があります。結局、授業者が説明して答を与えました。

二酸化炭素はリトマス紙を赤くするということが、子どもから出てきます。これはかなり乱暴です。しかし、それを受けて授業者は炭酸水が酸性であることを補足して、水に溶かすと酸性になると説明します。授業者の物わかりがよすぎます。炭酸水が酸性であることはここまで一度も押さえていませんでした。子どもたちの思考の根拠がどこにあるのかよくわかりません。子どもの考えの筋道がはっきりしないのが気になりました。
続いて、石灰水に通すと濁る、ロウソクを燃やすとよく燃えるという意見を一問一答で確認し、ロウソクは試験管に入らないので線香を使うことを確認し、この3つを実験しようと次に進みます。3つの案が出てすぐに実験するのではなく、「重さで調べることはできないのか?」といった揺さぶりもほしいところです。また、酸素と二酸化炭素でそれぞれの結果がどのようになるか予想をさせ、「二酸化炭素の入った試験管に火のついた線香を入れるとどうなる?」と言ったことも考えさせたいところです。子どもの意見が分かれれば、実験に対して意欲が増します。
子どもたち自身で考えた実験であれば、通常意欲が上がっていきますが、子どもたちはそれほど真剣に考えたわけではありません。結果を知りたいという気持ちがないので、エネルギーが上がりません。というよりも、何が起こるのかの結果はもうわかっていて、どちらが酸素か二酸化炭素かということを確認するだけです。また、ここに至るまでに、40分以上時間が使われているのも問題です。あまりに時間がムダに過ぎていました。

簡単な実験だったので、子どもたちの後片付けはそれ程手間取るものではありませんでした。しかし、グループによっては一部の子どもだけが後片付けをして、他の子どもはムダ話をしている姿が見られます。こういった点も気になります。子どもたちの中で、キャラクターや役割が固定化しているのを感じます。少なくとも授業において、このことをどのようにして壊していくのかがこの学校の大きな課題です。

結局最後は、実験結果を確認し、授業者が性質の違いから区別ができるとまとめて終わりになりました。子どもたちが実験することで新たにわかったことは何か、この時間でどのような力がついたのかはよくわからないままでした。
与えたり調べたりするべき知識と考えさせることを明確に区別して授業を構成することが必要です。授業者は子どもたちに考えさせたいという思いがしっかりとあるので、このことを意識すれば授業はよい方向に変わっていくと思います。
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