子ども同士がかかわれるようにする必要を感じる(長文)

小中一貫校の中学校(7年生から9年生)で2日間授業アドバイスを行ってきました。今回で2回目です。うれしかったことは前回の訪問で私がお伝えしたことをどなたも意識して下さっていたことでした。素直であるということが、授業力アップの一番の要素だと思います。
今回共通して感じたことが、子どもたちの人間関係が固定化しているということです。小規模で小学校からずっと一緒の学級で暮らしています。誰とならかかわれる、かかわれないがはっきりしているのです。そのため、グループをつくっても、自分のグループとは話をせずに隣のグループの子と話すといった光景を目にします。
ふだんの生活の中での人間関係が授業の中にも持ち込まれているのです。授業では、今そこにいる仲間とかかわり合えるようにすることが大切です。小規模の学校だからこそ人間関係をつくることが求められるのです。

8年生の社会科の授業は、雨温図が中部地方のどの都市のものかを考えることが課題でした。
ウォーミングアップに、県庁所在地を歌で覚える動画を見せます。キャラクターを使ったもので、子どもたちは楽しそうに見ていました。2分足らずのものなので、手ごろな導入だと思います。

3つの都市の雨温図をディスプレイで見せて、それぞれ上越、浜松、松本のどこかと、この日の課題を提示します。授業者は、まずそれぞれの都市が何県かわからないと考えようがないと、調べるように指示します。何県かを調べるのは悪くないのですが、同じ県でも気候が異なるところはあります。本質は位置、地形です。「どんなところにあるのか?」と、あえて曖昧に聞くのもよいかもしれません。山、海のそば、日本海側といった地理的な言葉が出てくれば、それを活かすことができるからです。
作業中に、「地図帳を見ている人」「教科書の中部地方のページを見ている人」と子どものよい行動を紹介します。特に、手がつかない子どもや行き詰まっている子どもがいる時には有効な方法です。地図帳を忘れた子どもが、隣の子どもに自分から見せてもらっていました。よい関係の二人です。
見つけた人は隣の人と確認するように指示しますが、意外と子どもたちが動きませんでした。それほど難しい課題ではないので、ちょっと気になりました。

一問一答でどの県にあるかを確認していきますが、あまり意味があるとは思えません。あくまでも県名にこだわるのであれば、どうやって見つけたかを確認する方がよいよう思います。また、せっかく電子黒板があるのですから、どこにあるのかを地図上で示させてもよいでしょう。何県と答えたからといって、位置を理解しているとは限らないからです。

ワークシートを配り、それぞれの雨温図の特徴を書くように指示しますが、これまでにいくつもの雨温図を見ていて、特徴を考えるための基準を持っているのならよいのですが、そうでなければ、まず、3つの雨温図を比較することから始めるべきだと思います。
子どもたちは手を動かして書き込んでいるのですが、発表となると挙手をしてくれません。1人の子どもが手を挙げましたが、まだ手を動かしている子どもがいるので、少し時間を取りました。「この後自分が判断する時に、友だちの意見を聞いておくときっと得になる」と、聞くことの価値を伝えてから、「教えてくれる人?」と声をかけます。しかし、また1人しか手が挙がりません。「うそ?1人?」と声をだすと、それに反応して手が挙がり始めました。「2人」「3人」と声を出していくと4人になりましたが、そこまでです。最後に手を挙げた子どもを指名しました。子どもたちの積極性を引き出そうとしているのがよくわかりますが、こういった場合、まず、まわりと聞き合って、自分の意見に友だちの考えを付け足すといった場面をつくるとよいと思います。その後で、挙手に頼らず指名して聞くのです。自分の意見を言えないようであれば、友だちの考えでなるほどと思ったものをたずねるといったやり方もあります。発言しやすい状況をつくることで、発表することの抵抗感を和らげることが必要だと思います。

発表された特徴が、雨温図のどこ部分のことか他の子どもに言わせます。なかなか、よいつなぎ方です。指名された子どもがディスプレイの該当部分を指で指します。しかし、多くの子どもが顔を上げません。これは、この学校の他の授業でも目にする光景です。この状態に対して何らかの働きかけをしないと、子どもたちこれでよいと思ってしまいます。ヒドゥンカリキュラムです。小学校部も含めて学校全体でこのことを意識する必要があります。
指を指した後、授業者が「ここの平均気温が……と○○さんは言ってくれたんだね」と説明しますが、この場合は、最初に発言した子どもに、「○○さん、ここのこと?」と確認すべきだったでしょう。
次に指名した子どもは、「3つ目の雨温図で冬の降水量が多い」と発表します。しかし、この場面でも、他の子どもは発表者の方を見ようとはしません。授業者はなるほど受容し、他に3番目について書いた人がいないかとつなぎますが、先ほどから手を挙げている子どもしか挙手しません。こちらからどんどん指名する方がよいかもしれません。
2つ目の雨温図について意見を求めると、少し挙手が増えました。指名した子どもが、降水量が少ないことを言って着席した後、授業者は、前に出て雨温図で説明するように求めました。面白いのが、この子どもが前に立つと、先ほどよりもずっと多くの子どもが注目します。友だちが前で「話をする」と注目するのでしょうか。それともこの子どもが他の子どもと人間関係がよいからなのでしょうか。ちょっと気になるところです。

次に指名した子どもは「気温が0度になる時がある」と答えます。授業者は手でディスプレイの方を指さしている子どもを見つけ、指名します。よく子どもたちを見ています。前で確認をさせて、先ほど発表した子どもにそこでよいかと確認します。ていねいにつないでいますが、子どもたちがワークシートに書いたことをもっとたくさん共有したいところです。手元にタブレットがあるので子どもたちのワークシートを写真にとって表示するといった方法も視野に入れるとよいでしょう。

授業者は子どもたちから出た考えを板書しません。その代わりに「メモを取っていた人はえらい人です」とよい行動を広げていこうとしています。
雨温図の特徴を踏まえて3つの雨温図がどの都市のものかをグループで考えるように指示します。子どもたちが考えるためには、統計的にこういった場所の雨温図はこうなるという情報を与えるとか、雨が降るメカニズムや気温の決定要素を教えて、地形と季節風の関係を元に考えるのかといったことが必要になります。そのために授業者は、日本列島の気候をグループで色分けした地図や、中部地方の地形図と地形の断面図と季節風、降水の関係の図を資料として与えます。
子どもたちはグループの隊形になったのですが、個別に考えています。なかなか相談し始めません。5分ほどして少し子どもたちの間に動きが出てきました。しかし、グループ全体でのかかわりに広がっていきません。自分のグループではなく、他のグループの友だちに説明をしている子どももいます。
授業者は「考えがまとまらない人もいますね」と資料集の○○ページを参考にするといいとヒントを出します。それよりも、「困っている人、グループの人に聞いてごらん」と子ども同士のかかわりをうながしたり、いったん活動を止めて「何が参考になった?」と全体で情報を共有したりする場面をつくるべきだと思います。また、配った資料を根拠にすれば話し合えたと思うのですが、資料の中身をよく理解できていないようです。せっかくの資料も活かしきれていません。資料を理解する場面をつくる必要があったと思います。
結局最後まで子どもたちはほとんど話し合うことができませんでした。グループで学習しているのに、個別の作業になっているのが残念でした。

グループでの活動をやめて、机を元の隊形に戻します。
一つ目の雨温図がどこのものかを問いかけますが、やはり挙手は4人ほどです。指名した子どもが浜松と答えたので、同じ答の人を挙手させます。ほぼ全員が手を挙げます。最初に挙手で答えさせる意味はあまりないようでした。この時手を挙げていない子どもが数人います。授業者はちゃんと気づいてその子どもを指名します。答えるのに口ごもっていると、まわりの子どもが「浜松って書いてあるじゃない」と覗き込んで答えます。結局手を挙げなかった子どもたちも浜松と書いてあったようです。よくあることなのかもしれませんが、挙手して意思を表明しようとしない子どもがいることは気になります。この授業者のように、全員参加を求めることが大切だと思います。

次の雨温図については、どれを選んだかを最初から挙手で確認します。上越を選んだ人を聞いた時に、まわりを見ながら手を挙げたり下ろしたりする子どもが目につきます。自信がなく、間違えることに対する抵抗が大きいことがわかります。授業者は、「いいよ」と受容する姿勢を見せて、挙手をうながします。全員参加をとても意識していることがわかります。受容することから一歩進めて、意見が分かれた時に「いいなあ、意見が分かれるということはどちらが正しいかを真剣に考えることができるよ。違う意見、間違いがあると学びが深くなるね。とってもいいことだね」と価値付けするとよいと思います。
結局、だれも手を挙げませんでしたが、「ここにいます」と隣が上越と書いていると告げる子どもがいます。大勢は上越ではなさそうなので手を挙げなかった子どもは、ただ黙って下を向いています。授業者は、この発言をあえて無視しました。よい対応だと思いますが、こういったところでも、人間関係が難しいと感じさせられました。
最後の一つは必然的に上越になるのですが、一応手を挙げさせます。ほとんどの子どもの手が挙がりますが、ここで挙手させるのであれば、よくわからない、困った子どもに手を上げさせることをしてもよいでしょう。正解から始めるのではなく、困っているところから始めるのです。今回、答がわからなかった子どもがいたかどうかはわかりませんが、困っている子どもを起点にすることで、全員参加させやすくなることもあります。

なぜそうなったのかの理由を問いかけますが、挙手はやはり少ない状態です。ちょっと待ってから指名します。指名した子どもの発言に対して「わかった?」と全体に問いかけますが、挙手する子どもは先ほど理由を聞かれて挙手した子どもと同じです。なかなか子ども同士がつながりません。授業者はいったん発言者を席に着かせます。「わかったという人で○○さんの説明を受けて、みんなにわかるように説明してくれる人?」と再度声をかけると、今度は別の子どもが挙手をしてくれました。指名した子どもはしっかりと発言してくれるのですが、他の子どもの顔は上がりません。授業者は二人の発言を整理するのですが、やはり子どもたちは下を向いたままです。まず、顔を上げて発言者の方に向くことをしっかりと求める必要があります。
授業者は発言をしっかりと受容していますが、うまく他の子どもにつながりません。特定の子どもの発言で進んで行きます。子どもたちの間で「この教科で発言するのはだれだれ」と役割が決まってしまっているのかもしれません。
「梅雨がはっきりしていて気温が高い」「雲が山にぶつかって消える」といった、雨温図が浜松のものであるという、子どもたちから出た理由を整理し焦点化して、まわりと相談するように指示しました。すぐにまわりとかかわれる子どもと自分一人で考える子どもとに分かれてしまいます。後ろの子どもが前に座っている子どもの背中を軽くたたいて参加を求めることがあったのですが、無視されました。授業者は子ども同士をかかわらせることを意識して進めているのですが、苦しい場面が続きます。子どもたちの様子をしっかりと観察していましたが、特に個別に働きかけはしません。難しい局面ですが、まわりとかかわらない子どもに声をかけるといったことが必要だったかもしれません(うまくかかわってくれるという保証はないのですが……)。

相談を止めて挙手させますが、また3人ほどです。授業者は子どもたちの様子をよく観察していたので、相談していた様子から、「○○さんよく聞いていたけれど、どんな話が出た?」と話の内容を問いかけるとよかったと思います。
子どもの発言を全体で確認しながらまとめていくのですが、一部の子どもしか反応せず、板書を写すことに注力している子どもがほとんどでした。

季節風の影響で夏に雨が多いことの説明を板書してくれるように求めますが、子どもたちは反応しません。手元でまとめたわけではないので、板書するのは敷居が高いのです。そこで、授業者は地形の断面の略図を書いて、この図を使って説明するようにと問いかけ直しました。こういった柔軟な対応をするのですが、それでも挙手は数人です。子どもたちが発言しやすい雰囲気をどうつくるのかが大きな課題となっています。
授業者はこの問題をいったん置いておいて、上越の雨温図に移りました。無理に発言させずに、先に進んだのはよい判断だと思います。

今度も挙手する子どもは数人です。一人を指名したところ、この日ずっと手を挙げていた子どもが、また指名されなかったと机を軽くたたいて悔しがっていました。授業者は続いて「さっきから元気よく手を挙げていた○○さん」とその子ども指名しました。できる子どもが活躍の場がないために教室の雰囲気を壊すことがよくあります。よい判断だと思います。
この子どもの発言は、正しいのですが、非常に詳しすぎてとても長くなってしまいます。よくわからないと最初から思っているのでしょうか、まわりの子どもたちはまったく反応しません。隣同士で発言と関係なく説明し合っている子どももいます。授業者は「めちゃ長い説明だったけどわかった?」と発言者の隣の子どもに問いかけます。言われた子どもは困ったように笑って答えられません。授業者もよく整理できなかったと返します。すると、発言者が図をかいて説明したいと前に出ていきます。
図をかき始めると、子どもたちの顔が上がります。今度は説明をよく聞こうとしています。発表のさせ方も子どもたちを集中させるための大きな要素だと思いました。
先ほど「わかった?」と聞かれた子どもが小さく拍手をし続けています。よく分かったのでしょう。「しっかり聞いていたね。よくわかったみたいだね」と聞いている子どもをほめ、「わかってもらえてよかったね」と発言者も評価したいところでした。

その後、授業者がまとめていきますが、また子どもたちの顔が下がります。子どもかいた図に言葉を少し足していくだけなので、写すこともほとんどしませんでした。
季節風と地形の関係をからいつ雨が降るかを、先ほどとばした2つの都市について授業者が説明していきます。根拠となる知識を後から説明しています。
課題の解決のために必要な知識をどのように整理して与えるかを考える必要があります。授業者は用意した資料で十分だと考えたのかもしれませんが、結局資料の説明を自分がしています。そうであれば、課題に取り組む前にきちんと押さえておく必要がありました。理科でも学習したはずですので、最初に確認しておけばもっとすっきりしたと思います。
地形と季節風どちらかに絞って説明しておくという方法もあります。湿気を含んだ雲が山にぶつかって上昇すると雨が降るという事実を確認しておいて、季節風の影響については子どもたちに考えさせるということです。
思考の流れをどの程度コントロールするかという判断は難しいのですが、途中で作業を止めて、考えの根拠となることを焦点化することも必要だったと思います。

授業者は子ども同士をかかわらせたり、つないだりすることを意識していますが、なかなかかかわってくれません。聞くことをほめる、困ったことを共有する、間違いを価値付けするといったことを学校全体で取り組むことが必要だと、強く感じました。

この続きは次回の日記で。
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