体育でペアをどう活かすかを考える

前回の日記の続きです。

11月の授業研究は体育の若手教師の授業でした。1年生男子の長距離走の記録測定の場面で、2学級の合同です。
準備運動でグラウンドをランニングします。この時の様子で気になったのが一方の学級で列が伸びていたことです。前を走っているもう一方の学級の倍近く伸びています。この状況は学級経営面でも何かあるのではないかと気になるところです。授業者がまわりの子どもに働きかけ、遅れている子どもへ声をかけさせて、同じペースで走るようにすることが必要だと思います。
ランニングの後整列して準備運動に入りますが、子どもたちの動きが悪いことが気になります。授業者はそのことを気にしているようには見えませんでした。
体育の係の子どもたちが前に出て準備運動をリードします。大きな声を出してテンションを上げていますが、他の子どもはそれについていきません。何拍も遅れて動いている子どもが目につきます。中には、何度も靴ひもを結び直して参加しない子どももいます。どうにも全体の動きがちぐはぐに感じます。子どもたちの一体感といったものが感じられないのが残念でした。

この日の長距離走の目標について確認、説明をしますが、子どもたちの顔が上がりません。それぞれがつくったペース表をもとに走るように指示しても、ペース表を確認しません。ペース表を意識して走ろうという意欲を感じませんでした。
ペアをつくって交代で走るのですが、相手は毎時間異なるようです。いろいろな相手とかかわる機会をつくるという考えでしょうが、長距離走の間は同じペアの方がよいように思います。互いのペースがわかりますし、進歩もきちんと評価することができるからです。
ペアをつくるまでに少し時間がかかります。授業者が次の指示をするのですが、子どもたちの動きが遅く、ムダな時間が多いことが気になります。しかし、授業者はそのことあまり頓着していないようです。授業者が求めていないのですから、当然、子どもたちの状態はよい方向へ変容していきません。

ペースの確認のために全員でグラウンドを一周します。子どもたちはリアルタイムに時間を知ることができないので、ペースの確認はそれほど簡単ではありません。グランド1週の時間はそれほどかかりませんから2回に分け、ペアの相手が「いいペースだよ」「ちょっと遅れているよ」とチェックするとよいと思います。

本番の測定では、走っているペアの様子を見ている姿が気になりました。ラップの記録を取る以外、ペアの姿をきちんと追っていないのです。よい記録を出せるために何かをしようという意志を感じません。ペアの関係ができていれば指示や励ましの声が出るはずですが、ゴール前にさしかかっても、「ラストスパート!」「頑張れ!」「あと○○秒」といった声は聞こえませんでした。
ゴールした後、すぐに止まってペアの心拍数を測ります。これも単に記録を取ることです。ペアの頑張りをたたえたり、走りに関して何か話したりするわけでもありません。伴走してしばらくクールダウンをさせながら、コミュニケーションを取るような場面がほしいと思いました。自分の走りに対して仲間から認められたり、声をかけられたりすることは、個人競技ではとても大切なことだと思います。これでは、孤独に走るだけになってしまいます。
授業者は子どもたちどうあってほしかったのでしょうか。思いが伝わってきませんでした。

最後に、反省を書かせましたが、反省よりもできるようになったこと、進歩したことを大切にしてほしいと思います。その上で、次回は何を意識して取り組むのか、活動の計画を立てるのです。できなかったことばかりを振り返れば、苦手な子どもは自信がなくなります。振り返るにも、一生懸命であればあるほど自分のことはよく見えません。ペアがよかったところ、進歩を伝えることが必要だと思います。
個人競技だからこそ、友だちとのかかわりを大切にしてほしいと思います。

体育の先生方による授業検討会では、先輩教師から、自分の授業での工夫を教えていただけました。私にとっても大いに参考になるものばかりです。しかし、その中で少し気になることがありました。座学は苦手だが運動ができる子どもを、体育の授業で活躍させたいというのです。体育の係にして全体を引っ張らせるそうです。たしかに、子どもたちが学校生活のどこかに輝く場所を持つことはとても大切です。しかし、運動の得意な子どもを体育の時間に活躍させるというのは、運動ができた人の発想でしょう。運動や音楽、何か人より特に優れているものを持たない子どももいます。体育の時間だからこそ、運動が苦手な子どもが評価されることを大切にしてほしいと思います。例え係にしなくても、得意な人は必ず活躍して評価されるものです。だからこそ、そうでない子どもにどうやってスポットを当てるか考えてほしいのです。私からはこのことを体育の先生方にお願いしました。

力のある体育の先輩がたくさんいる学校ですので、多くのことを学べると思います。授業者のこれからの成長が楽しみです。
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