活動の目標やゴールを明確に

ずいぶん遅くなりましたが、2月に訪問した中学校の話です。若手を中心に授業アドバイスを行いました。初任者を含め少経験者の多い学校でした。

1年生の美術の授業は、2年目の先生で、作品を互いに鑑賞する場面でした。
子どもたちの表情はにこやかですが、授業者は緊張しているのか表情が少し固いようでした。授業者が学級をコントロールできていないように感じる場面がいくつかありました。子どもたちは、授業者が正面を向いている時は顔を上げて見ているのですが、板書を始めると雑談を始めます。ワークシートを配りはじめると名前を書く前に口を開きます。授業者がこういった場面で子どもたちに集中を求めていないことを知っているようでした。
美術室なので子どもたちの体は正面を向きません。説明を聞かせる時に体ごと前を向くように指示します。こういった指示はできるのですが、子どもたちの集中はすぐに切れてしまいます。一方的にしゃべるだけで、問いかけたりすることがないので子どもたちが受け身になってしまうからです。細かい場面ごとに子どもたちにどうあってほしいかを意識して、どのように働きかければいいのかを考えることが大切です。

子どもたちは友だちの絵を見て互いによいところをグループで伝え合いますが、テンションが上がりがちなのが気になります。
続いて、全体での発表です。友だちの作品のよいところや感想を前に出て発表します。子ども同士の関係はよいのでしょう。友だちの発表をよく聞こうとしています。しかし、発表を聞いてどうするのかという、この活動の目標やゴールがはっきりしないので、途中でどうしてもゆるんでいきます。また、作品は実物投影機でディスプレイに映しますが、ディスプレイと発表者が離れています。絵のよいところを具体的に伝えても、直接指し示すことができないので今一つよくわかりません。ディスプレイの横に立って発表させるべきだったでしょう。このことも子どもたちが次第に集中力を失くす要因になっています。
「色の明暗で表現されている」といった具体的なよい言葉がでてきますが、一方的な発表で終わってしまいます。その言葉を拾って、価値付けしたり他の子どもにつないで広げたりすることが必要です。授業者は教室の後方から見ていましたが、他の子どもたちの反応を見るためにも教室の前方から見るようにするとよかったでしょう。

発表が終わるとみんなが拍手をしますが、具体的な評価はありません。中にはほとんど聞いていないのに拍手だけする子どももいます。また、作者についても何の評価もありません。発表を通じて、発表者と作者をきちんと評価することが大切です。発表や作品から学ぶという視点が明確になっていません。「発表者が指摘するよいところは作者がどのようなことを意識して具体的にどのような技法を使ったのか」「発表や作品からどのようなことが参考になったのか」といったことを学級全体で共有することが必要です。こういった発表のゴールや目標を明確にしていれば、子どもたちの集中ももう少し続いたと思います。

子どもたちがよいので、なんとなく授業は成り立っているように見えますが、ただ活動をさせているだけで、どのような力をつけたいのか、ついているのかがはっきりしません。また、子どもたちの方は、どこまで好きにやっても許されるのかを上手に測りながら行動しているようにも見えます。授業者が目指す子どもの姿を明確にして、そのために何をすべきかを意識して授業に臨むことが大切です。

この続きは次回の日記で。
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