全員参加を目指したい

昨日の日記の続きです。

6年生の授業は単位の接頭語学習でした。
デジタル教科書を使って授業を進めますが、子どもたちの発言を残しておくためにはディスプレイは扱いづらいところがあります。その場でちょっと書き留めるのに黒板はすぐれた道具ですが、デジタル教科書を使ったせいか授業者はほとんど黒板を使っていませんでした。うまく板書と使い分けができるとよかったと思います。
また、デジタル教科書を使うと、黒板であれば子どもの様子を見ようとする方でも、ディスプレイを見て説明をすることが多いように思います。意識して子どもたちを見るようにすることが必要です。

d(デシ)やc(センチ)、m(ミリ)といった単位の接頭語がつくとどうなるかをグループで考えさせます。「子どもたちが今まで学習したことから規則性を類推させたい」という授業者の考えはわからないでもありませんが、これはルール(定義)です。これまでに単位の学習を通じて個別には教えられていたことだと思います。グループの学習で「わかり合えた?」と確認しますが、何をわかり合えたかは聞きません。子どもたちに発言させて明確にしたいところでした。
この時間では、これまでの知識を元にそのルールを明確にして、どの基準単位に対しても、増加方向にda(デカ)、h(ヘクト)、k(キロ)、減少方向にc(センチ)、d(デシ)、m(ミリ)といった接頭辞をつけることで○倍、○/倍とするルールをきちんと教えることが大切です。その上でこのルールを元に接頭語のついた単位を自由に変換できるようにすることが重要です。kは「×1000」、mは「×1/1000」というように置き換えることで簡単に変換できる、接頭語を利用することで見やすい、わかりやすい数値で表すことができるといったよさに気づかせたいところです。
例えば20km=20×1000m=20000m、20mm=20×1/1000m=2/100m=0.02mというように接頭語を置き換えて計算ができることを教え、表記を比べて見ることで接頭語のよさを伝えてもよかったと思います。

余談ですが、減少方向の接頭語はすべて小文字ですが、増加方向の接頭語はM(メガ)より後はすべて大文字です。小学校では扱いませんがこういったことも気をつけておくとよいでしょう。また、大文字のK(キロ)は情報の世界で特別な扱いをするものなので注意が必要です。
教えなければいけないという訳ではありませんが、子どもたちのまわりでもM、G、Tやμといった接頭語が見られるようになってきました。「メガ○○」といった言葉も使われます。少し触れてもよかったかもしれません。合わせて、k(キロ)やm(ミリ)の後は、1000が基準になっていることも押さえておくとよいでしょう。

接頭語を使った単位を変換する課題に取り組みますが、その計算の仕方の説明があいまいです。「ここにこれがあるから」と接頭語を指して計算の理由とします。「接頭語が○倍を示すもの」ということがルールとしてきちんと押さえられていません。
こういった授業者とのやり取りに参加しない子どもの姿が目立ちます。一部の子ども(仕切り屋?)と先生とで話が進んでいることと無関係ではないように思えます。子どもが意見を「言い合う」関係ではなく、「聞き合う」関係を大切にしてほしいと思います。力の強い子の発言を押さえつつ、他の子どもの意見を聞きながら、全員が参加できるようにしたいものです。

授業終了の挨拶の時に、子どもが姿勢などをチェックして注意しますが、上から目線で指摘しているように見えました。授業者としては、先生が注意するより子ども同士で気をつけ合う方がよいと考えてのことだと思いますが、「いやだ」と感じる子どももいるのではないかと気になりました。子ども同士の関係が今一つよくないように感じたことと無関係でないかもしれません。

この学校全体としては、学級経営や授業の基盤となる先生と子どもたちの関係はできていると思います。子ども同士の学び合いを進めていくためには、子ども同士をどうつなぐかということが次の課題です。子ども同士がかかわり合う必然性のある課題をつくることを含めて、学校全体の課題として取り組むことが重要です。小規模の学校だからこそ、互いに授業を見合い、学び合いながら授業改善を進めてほしいと思います。

この市の全小中学校に対して2年間(中学校は1年間)授業アドバイスを行ってきましたが、この日が最後となりました。小学校は私が思った以上に、先生方が授業改善に前向きに取り組んでいただけたと思います。どの学校も子どもたちと先生方との関係はとてもよくなったように感じます。だからこそ、次への課題が明確になっていると思います。一つは、子ども同士をつなぐことです。子どもたちの言葉を受容することはできますが、それを受けて先生が説明をしてしまう授業が目立ちます。子どもたち自身で考えを深める場面がまだまだ少ないように思います。ペアやグループを取り入れるだけでできることではありません。考えた結果ではなく、その過程や根拠を共有することが大切です。また、子どもの発言を切り返したり、他の子どもにつないだりして考えを深めたり、広げることも必要になります。
もう一つが、教材研究です。子どもたちが前向きに授業に参加するようになったからこそ、何を課題としてどのような活動をさせるかが問われます。「子どもたちは一生懸命授業に参加したが力はつかなかった」といったことがないように、してほしいと思います。
中学校は、どの学校でも子どもたちは落ち着いています。だからと言ってどの子どもも授業に積極的に参加しているわけではありません。ワークシートの穴埋めをして、それが勉強だと思っている子どもも目立ちます。残念なことは、先生方の授業を改善しようとする意欲をあまり感じないことです。管理職がまず自分の学校の授業の課題をとらえ、改善しようとする意志を明確に持つことが必要です。中学校では学校全体で研修する時間を持つのもなかなか大変です。だからこそ、管理職の強い意志がなければ変わらないのです。学校経営の視点からも、一考してほしいと思います。

この2年間でたくさんの授業を見せていただきました。先生方と子どもたちから本当に多くを学ぶことができました。このような機会をいただけたことを深く感謝いたします。
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