算数の授業で言葉にこだわることを考える

遅くなりましたが、1月に訪問した小学校の話です。市内の全小中学校での授業アドバイスの一環です。小規模の学校で、全学年での算数の授業アドバイスを行いました。この学校は子どもたちが学び合う姿を目指しています。学校全体で子どもたちのよい表情や姿を見ることができました。先生と子どもたちとの基本的な関係がどの学級もしっかりとしていると感じました。

1年生は3桁までの数の大小を考える授業でした。
最初に復習で2桁の数の大小クイズを行います。ここで気になったのが、授業者が2桁の「数字」と言っていることでした。私もうっかりすると言ってしまうので偉そうなことは言えないのですが、正しくは「数」です。例えば、21の2という「数字」は20という「数」を表わしているのです。これが位取り記数法の基本的な考え方です。「数字」の大小ではなく、「数」の大小を考えていることを意識しておくことが必要です。

子どもたちはよい表情で大小を答えます。ただ、いつも全員で答えるのではなく、時々意図的に指名をして個別に答えさせることも必要です。まわりの子どもの答えを聞いて少し遅れて答える子どももいます。個別に答えさせることできちんと理解できているか確認したり、ほめることで自信を持たせたりすることが大切です。

授業者は数の大小を考えるのに「どういうことに気をつける」と問いかけますが、子どもたちは反応できません。「どういうことに気をつける」と聞かれても、何を答えていいのかわからないのです。授業者は「ヒント」と言って「○けたのかずより○けたのかずが小さい」と板書します。「ヒント」をこのような答(結論)の形の穴埋めで出すと、子どもたちは教師の求める答探しをするようになります。できるだけ子どもの言葉で、考える過程を大切にして発言させたいところです。
子どもたちにペアで相談させますが、ちょっとテンションが高いのが気になりました。1年生なので、具体的に相談とはどのようなことをするのかといったことが明確になっていないのかもしれません。また、「どういうこと」という言葉は発言しやすい問いかけでもあります。全体では正解を言わなければと答えにくいことも、子ども同士になると言いやすくなったのかもしれません。
1年生ですが、相談を止める指示には素早く反応して授業者に集中します。授業規律はよくできています。
子どもを指名しますが、どこを見るといった手順を発表します。挙手でよいかどうかを確認すると、全員が挙手します。しかし、これもまわりにつられている可能性があります。何人かを指名して発言させることで、本当に納得できているのか確認したいところでした。
ここでも、3桁の「数字」、十の位の「数」と「数字」と「数」が混乱しているのが気になりました。「3桁の数は百の位を比べる」とまとめますが、「一番大きい桁」であることを意識させてから、この結論を確認したいところでした。「最初にどこ(何)を比べる?」といった問いかけから、「数字」「どこの数字?」といったやり取りをしながら、「位が違えば数字の表わす数の大きさが違う」という位取り記数法の本質を意識させるような展開をするとよかったと思います。

次の課題のワークシートを配って読ませますが、授業者は拡大コピーを準備していたので、まずそれを使って説明するとよかったと思います。授業者が説明している時に、子どもたちの顔が上がらなかったのが残念でした。
子どもたちによい姿勢をとらせるのに、よい姿勢とはどういうものかを順番に言わせて確認します。4月の段階では「背筋を伸ばす」「手は膝の上」といった確認は大切になりますが、この時期であればもう必要はないはずです。たとえ1年生でも、「どんな姿勢をとればいいかな?」「先生は次にどんなことを言うと思う?」「次はどうすればいいかな?」と、直接指示をしなくても、だんだん子どもたちが自分で考えて行動できるようにしたいものです。

前にやった大きい順に並べる方法を確認せずに、小さい順に数を並べる課題に取り組ませます。ここは、子どもたちに見通しを持たせてから取り組ませたいところでした。子どもが考えるための足場をつくってあげることを意識してほしいと思いました。

小学校の算数は、大人にとっては当たり前のこと、少々言葉がおかしかったり抜けたりしていてもわかるはずのことばかりです。言葉が雑になってしまいやすい教科です。だからこそ、言葉にこだわる必要があります。子どもが考え活動しやすい言葉で発問つくることや、子どもに伝わりやすい言葉を選んで説明することが大切です。このことをいつも意識してほしいと思いました。

この続きは明日の日記で。
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31