算数の授業で用語や根拠の大切さを考える

遅くなりましたが、1月に訪問した小学校の話です。市内の全小中学校での授業アドバイスの一環です。この日は若手を中心に6人の授業アドバイスを行ってきました。

2年生の担任の初任者の授業は算数の100cmを超える長さでした。
子どもたちとの関係は良好で、指示もきちんと通ります。子どもたちが指示に従えた時にほめることもできます。

前時の復習で両手を広げた時の長さが100cmを越えていたこと確認します。指名した子どもが答えた時に子どもたちがハンドサインを出すのですが、数人です。ハンドサインを利用するのであれば全員にきちんと意志表示させることが必要です。
同じ質問を複数の子どもにした時に、子どもたちが「同じです」と答えます。授業者はそれを許してしまいますが、ここは「もう一度言ってくれる?」と本人の言葉で言い直させたいところです。同じといっても全く同じことはまず言いません。微妙に表現が違っていたり、言葉を足してくれたりします。その違いをクローズアップすることで考えが深まったり広がったりします。日ごろから「同じです」を許さないようにしたいものです。

30cmの定規がたくさん必要だったこと、測ったら120cmくらいだったことを思い出させようと問いかけますが、すぐに指名をしていきます。子どもたちが振り返って考える間がありません。ついていけない子どもは戸惑っています。この日は120cmの別の表し方を知ることをめあてとして説明しますが、別の「表し方」という言葉が腑に落ちていない子どもも目立ちます。

板書中に子どもが質問の手を挙げましたが、黒板ばかり見ているので授業者は見落としてしまいます。また、ノートを使わない場面でノートに書いている子どもがいましたが、そのことに気づかずに指示が遅れてしまいました。初任者で仕方がないのですが、ちょっと余裕がなかったようです。子どもの様子を常に意識して見ることを忘れないでほしいと思います。

板書を写し終れば、授業者の方を見るように指示をします。この時期であれば、こういった指示はしないでも自然によい姿勢をとって、授業者に集中するようになってほしいところです。指示が通るようになれば、早い時期に「先生は次に何を言うと思う?」「次はどうすればいいかな?」と子どもたちが指示を待たずに自分で判断してよい行動がとれるようにしていくことが大切です。一つひとつ指示をして子どもたちを動かしていると、指示待ちの子どもが育ってしまいます。指示がきちんととるようになったら、次のステップとしてこのことを意識してほしいと思います。

長さの単位について問いかけますが、子どもたちは「単位」がよくわかっていないようです。何を答えていいのかわからない子どもが目につきました。「単位」といった用語は日ごろから定義を確認して、きちんと定着させておくことが大切です。
「センチ」という答を修正せずにそのまま使います。というよりも、授業者自身が「cm」を「センチ」と読んでいます。日常生活では「c」や「m(ミリ)」を補助単位(接頭辞)として使うのは長さの場合が多いためにm(メートル)を省略することが多いのですが、算数では省略することは避けるべきです。高学年で「m」「c」「d」「da」「h」「k」などの補助単位(接頭辞)を学ぶ時に混乱する恐れもあります。きちんと「センチ」「メートル」と言うことで単位の構造を意識させることが必要です。
続いて、新しい単位として「m」を導入し、書き方を練習します。ここで「cm」の「m」と同じであることを押さえて、「cm」の書き方と関連づけたいところです。こうすることも単位の構造を意識することにつながります。

120cmの別の表し方を考えるために、「cm」と「mm」の関係を復習します。「1cmは何mm?」「12mmは?」と問いかけます。ここでも「mm」を「ミリ」と読んでしまいました。問いかけに対して、「10mm」「1cm2mm」と答を確認するだけで、どうしてそうなのかは押さえません。「1cm」が「10mm」となるのは定義(規則、約束)です。「12mm」は「10mm」と「2mm」なので「1cm2mm」です。「10mmは1cmだから、1cmと2mmで1cm2mmになるんだね」といった言葉がほしかったところです。
算数は根拠がとても大切な教科です。「定義」なのか「性質」なのかといったことも意識する必要があります。答だけを提示することがないようにしてほしいと思います。

この続きは明日の日記で。
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