第2回 教育と笑いの会

昨年末に開催された「第2回 教育と笑いの会」は、前回に引き続き大盛況となりました。今回私は「故・有田和正先生の授業におけるユーモアを学ぶ」というコーナーの司会という大役でした。

開始5分ほど前から玉置崇先生が会場を温めます。さすが落語会を数十年にわたって運営してきた方です。開会する時には、すっかり観客の皆さんが話を聞く雰囲気になっていました。
まずは、「野口芳宏・玉置崇の教育漫才」です。
玉置先生が事前にネタの打ち合わせを野口先生にお願いしたところ、その必要はないとの返事だったそうです。しかし、さすがに台本なしではと思い、玉置先生はどのように進めようかと前日の晩はろく眠れなかったそうです。当日は、さすがに野口先生も不安になったのか、「ちょっと打ち合わせをしておこうか」と言われたそうです。いかにも野口先生らしい、とぼけたお話しです。
玉置先生が野口先生にあこがれていた時の出会いや、昨今の教育事情のネタは教師の枠を超えて笑えるものでした。ぶっつけ本番とは思えないほどのできでした。

続いては、志水廣先生の教育漫談です。
さすがは関西出身者、「綾小路きみまろ」ならぬ「綾小路しみまろ」として、服装から髪型まで、ここまでやるかという演出。前の方に陣取った志水先生ファンならずともしっかりと笑わせていただけました。

池田修先生の「『こんな時どう言い返す』ユーモア返答術講座」は、ワークショップ形式で、こんな時どう言い返すか、参加者の方にも考えていただきました。皆さん隣の方と楽しそうに言いあっていらっしゃいます。しかし何といっても面白かったのは、池田先生が関西の先生方から聞かれた切り返しの例です。言葉ではうまく説明できませんが、いかにも笑いの本場関西と言えるものです。また、それを見事に再現する池田先生。関西出身でないとは信じられないほどです。
まじめな子どもにこんな言葉で言い返したら、怒ってしまいそうな例もありますが、先生と子どもとの人間関係によってその効果は変わってくるのだろうと思います。ユーモアは相手との関係に大きく影響されるものであることを改めて意識させられるワークシップでした。

ここからは、落語が2席続きます。協賛してくださっているEDUCOMのスッタフの皆さんが準備してくれた見事な高座で、本格的な落語を楽しみます。
1席目は、「校長もできる落語家月の輪熊八」こと小林幹政先生の「黄金の大黒」。
いやあ、びっくりしました。どこから見てもプロの落語家。声といい間といい、ほれぼれします。この後、プロの桂雀太師匠はやりにくいのではないかと思うほどです。すっかり先生の落語のファンになりました。

2席目は、昨年もお願いした桂雀太師匠の、「代書屋」です。
さすが、プロ。エネルギッシュでそれでいて細やかな、「これが雀太です。個性とはこういうものです」と主張しているような一席でした。一気に師匠の世界に引き込まれました。次の自分の出番も忘れて、噺を楽しんでしまいました。

最後は、「故・有田和正先生の授業におけるユーモアを学ぶ」と題した、野口先生、志水先生、桂雀太師匠、玉置先生に、有田先生から多くを学び、これからの社会科教育をけん引する一人である佐藤正寿先生を加えて、ユーモアとその効用に関して語り合うコーナーです。
最初に、「愛される学校づくりフォーラム2013 in東京」での有田先生の模擬授業を20分ほどに編集したビデオを皆さんに見ていただきました。有田先生の絶妙のユーモアと素晴らしい授業内容に皆さんが引き込まれているのがよくわかります。
ビデオを見終わってから、いよいよ本番です。登壇者にお話を聞く前に、この日有田先生の体調はとても悪く、フォーラム終了後すぐに入院することになったにも関わらず、模擬授業では終始笑顔を絶やされなかったことを紹介させていただきました。ビデオの音声に注意すると、有田先生が舞台を移動する時に苦しい息遣いをしているのが聞こえてきます。胸に迫るものがありました。
話の口火は、佐藤先生にお願いしました。「1時間の授業の中に笑いがない教師は警察に逮捕させろ」という名言がある有田先生から、教材研究や授業技術だけでなく、ユーモアの大切さも学ばれました。佐藤先生の授業は常に笑顔を絶やしません。有田先生のユーモア精神は、次の世代の多くの先生に引き継がれているように思います。
志水先生からは、筑波大学附属小学校時代の同僚としてのエピソードを披露していただきました。授業だけでなく学年主任として保護者に対してお話しする時もそのユーモアで場の雰囲気を和ませていたそうです。
玉置先生に助けていただきながら、「緊張と弛緩」という視点が明確になっていきました。質問の答や課題を考え緊張している時、笑いで場が弛む、ほっとして教室の雰囲気が和む、これがユーモアの効用であり、意識すべきことです。
笑いのプロである雀太師匠からは、有田先生の笑いを「いやらしい」という言葉で評されました。その真意は、自分の笑いやその間をよくわかっていて、確実に笑いを起こすことができるので、ちょっと「いやらしい」ということでした。また、笑わせようとしてはダメだという言葉に、プロとしての笑わせることの難しさと奥深さを感じました。
笑いは子どもとの関係性が大切になるということに関連して、野口先生からは、「笑いは残酷なものである」という話がされました。「失敗するからおかしい。失敗して笑われる者はつらい」、だから笑いは残酷なのです。みんなが笑えるということは、笑われる立場の者も含めて笑える関係になっていなければなりません。笑いのある教室をつくるということはそういう人間関係をつくることと同じなのです。「失敗しても笑われない学級づくり」の一歩先にある「失敗を笑い飛ばせる学級づくり」です。
拙い司会でしたが、すばらしい登壇者のおかげで、有田先生を偲びながらユーモアについていろいろと考え学ぶことができました。

裏方を引き受けてくださったEDUCOMのスタッフのみなさんの協力のおかげで、プログラムは滞りなく修了しました。参加された方々の満足そうな表情に一安心でした。
「来年も開催しましょう」という野口先生の一言で、第3回の開催も決定しました。詳細が決まり次第、この日記でお伝えしたいと思います。
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