相手との関係を意識したコミュニケーション

昨年末に行なった介護関連の研修の話です。今回は、当初の予定を変更して、相手との関係を意識したコミュニケーションについて考えていただきました。

きっかけとなったのが、中学生の新聞の投書でした。バスで高齢者に席を譲ろうとしたら「ふざけるな」と怒鳴られてしまったという内容で、「モンスター老人」の話題としてその後に大きな反響があったものです。こちらの言ったことや思いを相手に上手く伝えることの難しさについて考えてもらいたいと思い、話題がホットなうちに取り上げさせていただきました。

この話に関連して私が親しい同僚として尊敬していた先輩との話をさせていただきました。彼は当時流行っていた芸人と下の名前が同じだったので、親しみを込めてその芸人が呼ばれていたように「○○ちゃん」とちゃん付けで呼んでいました。決してバカにしているつもりも、下に見ているつもりもなかったのですが、ある日「私は君の先輩だよ。ちゃん付けは失礼じゃないのか」と厳しい表情で諫められました。彼には私が尊敬している気持ちは通じているものだと思っていたので、大きな衝撃を受けました。私は親しい「同僚」と思っていたのですが、彼は親しい「後輩」と思っていたのです。
また、知り合いの学校出入りの図書教材を扱う会社の社長の話もお話しました。当時学校に行くと先生方から、「おい、○○」と呼び捨てにされていたそうです。笑顔で「はい」と答えていたが、悔しくて悔しくてしょうがなかったそうです。自分がサービスを受ける側であれば、相手が例え年上であってもぞんざいな口調なってしまうことがあります。言われた方は相手より立場は下なので我慢していますが、自分の方が年上なのにと腹の中では悔しく思っているのかもしれません。
このように互いに相手の関係をどのように思っているかを意識しないと表面上は問題ないように見えても、その裏で軋轢が起こっていることもあるのです。それが別の場面で噴出することもあります。このことを理解してコミュニケーションを取ることが必要になります。

このような例も踏まえた上で、参加者の皆さんには、プライベートを含めて自分とかかわる人たちを具体的に書きだしていただきました。自分は相手をどのように見ているか、上か下か、それとも対等かを書き足してもらい、その上でその相手は自分をどう見ているかを想像してもらいました。この後、グループで感じたことを聞きあっていただきました。普段何気なく接している方との関係をこうやって見直してみると、相手が必ずしも自分が思っているのと同じような関係だと見ているわけではないと気づかれたようです。
参加者は、素直に自分の感じたことを話していただけます。こうして研修を含め自分の思っていることを気軽に話し合える関係は素晴らしいのですが、だからこそ、他の方々との関係も同じように思って接してしまうと思わぬトラブルになることもあります。コミュニケーションのあり方を見直すきっかけになっていただけたのではないかと思います。
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