この時期はまず聞くことを大切にしてほしい

今週の頭、中学校の授業参観日に訪問しました。4月当初の子どもたちの様子を見せていただくためです。

どの学年も子どもたちは落ち着いていて、人間関係も良好でした。先生方も笑顔が多く、柔らかい雰囲気の教室が多く見られました。1年生と3年生は学級活動だったことも影響しているかもしれません。
全体的に気になったのは子どもたちの視線です。発言者の方を向いていない子どもが多いのです。全体の発表では、顔が上がらない、上がってもだれもいないところを見ていたり、先生や黒板の方を見ていたりして視線がバラバラです。グループでも仲間が発言している時に自分のメモを見ていて顔が上がらない子どもが目立ちます。

この時期はまず授業規律を確立することが大切です。授業規律と言っても先生の指示に従い少しも姿勢が乱れないようにするといったものではありません。授業に向かう基本的な約束事を身につけると言ってもよいかもしれません、その一番は聞くことです。先生の話はもちろん、友だちの発言を相手の目を見て受容しながら聞く姿勢を身につけさせるのです。新年度が始まってすぐに子どもたちに意識させれば、意外と簡単にできるようになるはずです。ところが、今回見せていただいた先生方は発表者の方を向いて発言を受容していますが、他の子どもたちの様子を見ている方は非常に少ないのです。また、発表者が先生に向かって発言し、友だちの方を向いていなくてもそれが当然だと思っているようにも見えます。
1年生では学年共通で授業のルールが決められていましたが、聞く姿勢に関するものが無かったのが残念です。

今ならまだ間に合いますが、このまま連休に突入してしまうとこの状況がヒドゥンカリキュラムとして定着してしまいます。この時期は、授業規律に限らず子どもたちに何を求めるのかを先生が意識し、子どもたちにどう意識させ、どう評価していくかを考えることが大切です。そのためにも先生が子どもたち一人ひとりに視線を落とすこと常に忘れないでほしいと思います。

涙が止まらなかった本

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子どものための「命の授業」という本をいただきました。娘さんを小児がんで亡くされた鈴木中人さんの著書です。鈴木中人さんと娘さんのことは以前から聞き及んでいましたので、自分なりに鈴木さんの思いは理解しているつもりでした。しかし、あらためていただいた本を読んで、鈴木さんの娘さんへの思い、「いのち」への思いの深さに涙が止まらず、わかった気になっていた自分を恥ずかしく思いました。
私がこの本についていくら述べても、その思いはとても伝わるものではありません。一人でも多くの方に読んでいただけることを願います。

「授業と学び研究所(所長 玉置崇)」「いのちをバトンタッチする会(代表 鈴木中人)」の主催で、「いのちの授業」づくり実践セミナーが開かれます。鈴木中人さんと娘さんの実話をもとにした道徳の模擬授業とパネルディスカッションを通じて道徳授業の実践力を高めるものです。子どもたちに「いのち」について深く考えさせたい、「いのち」の大切さに気づかせたいとお思いの先生方に強く参加をお勧めします。

グループ活動の前に自分の考えを持たせることを考える

グループ活動に入る前に個人で考える時間を与える授業をよく目にします。自分の考えを持たないとグループ活動で意見を言えないので参加できないと考えるからです。かつて私もそのように考えていた時期がありました。
しかし、実際の授業では、課題がよく理解できなかったり、手がかりがなかったりして、途中で考える意欲をなくしてしまう子どもをよく目にします。そういう子どもはグループで「発表」や「話し合い」する場面で自分の考えを発表することができませんので、ますます参加意欲を無くしてしまいます。

では、どう考えればよいのでしょうか。
一つは自分の考えを持てるようにすることです。「どの子どもも自分の考えや意見が持てるような課題や発問にする」、「興味をもって主体的に取り組むような活動にして、参加意欲を高める」というように課題や活動を工夫することが大切になります。また、最初からグループの形にして、手詰まりになった子どもが他の子どもに相談できるようにするのもよい方法です。授業者は困っている子どもに教えるのではなく、「友だちに聞いてごらん」と子ども同士をつなぐようにするのです。子ども同士の関係ができていれば、教師が声をかけなくても自然と相談する姿を目にします。

これとは逆の発想もあります。個人の考えを持つためにグループを使うのです。課題を与えた後、まずグループで相談させます。自分の考えを主張しやすい、比較的学力の高い子どもも、すぐに自分の答を持てるわけではありませんので、「こうかな?」「○○を調べるとわかるんじゃない?」と主張ではなく相談モードになります。友だちの考えや意見を聞き合うことで考えるための足場ができます。そこで、「では、聞き合ったことをもとに自分の考えをまとめて」と個人の活動に切りかえるのです。こうすることで、例え友だちの意見をもとにしたとしても、自分の考えを持ちやすくなります。
この後は、もう一度グループにして結論を聞き合ってもよいでしょうし、全体で個人の考えを聞き合い、「どんな考えが参考になった?」「何をしたら上手くいった?」とメタ認知を働かせるような場面を作ってもよいでしょう。

どのやり方が正解というわけではありません。子どもたちの実態や学習内容に合わせて使い分ければよいのです。グループの話し合いの前には自分の考えを持たせなければいけないと思い込まずに、引出しを増やして柔軟に対応してほしいと思います。

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