本日、西成小学校第70回卒業式を滞りなく挙行することができました。
卒業生56名の巣立ちをお見送りいただきまして、ありがとうございました。
(式 辞)
柔らかな陽の光とともに、伝統のエノキ、千歳の松、ふるさとのイチョウの木々も新芽が伸び始め、春の息吹が感じられるよき日となりました。
本日、平成二十八年度、第七十回卒業式を挙行いたしましたところ、公務ご多用な中、多くのご来賓のご臨席を賜り誠にありがとうございます。高い所からではございますが、児童、教職員を代表いたしまして、心からお礼申し上げます。
五十六名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。先ほど、小学校六年間の課程を終えた証しである卒業証書を、一人一人に手渡しました。皆さんは小学校六年間で、心身ともに目を見張る成長をしました。ここまで成長できたのは、ご家族をはじめ、先生、地域の方々や皆さんをとりまく周りの人たちの支えがあったことを忘れてはなりません。
さて、思い起こせば、私が卒業生の皆さんと出会ったのは、皆さんが四年生のときでした。四年生になったばかりのころの皆さんは、まだあどけなさも残り、元気一杯なのだけれども、まだまだ自分のことで精一杯、という印象でした。しかし、今日、この立派な姿から大きな飛躍が感じられ、感無量です。
このように心身ともに大きな飛躍をしたのには、皆さんが三つの力を身につけてきたからだと、私は思っています。
まず、相手の気持ちを思いやる「想像力」です。皆さんは、仲間をとても大切にする集団であり、下級生や特別支援学校の友だちに優しく接することができるようになりました。
次に、互いの意見を取入れ、よりよい方法をみつけていく「問題解決力」です。皆さんは、日々の授業も活気にあふれていました。積極的に意見を発表し、友だちの意見を素直に聞き入れ、さらに意見を出し合って解決しようとしていました。
最後に、自分のもてる力を最大限に発揮する「表現力」です。皆さんは元気で明るく、常に率先して挨拶をしてくれました。運動会や学芸会などでは、演技や歌、劇などでとても素晴らしいパフォーマンスを見せ、部活動の大会でも大活躍をしました。
そんな数々の素晴らしい力をつけてきた皆さんに、さらに身につけてほしい力があります。それはもう一つの「創造力」、「新しいものを生み出す力」です。
「創造力」といえば、昨年の十二月十日にノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんのことが記憶に新しいと思います。
大隅教授は「オートファジー(細胞の自食作用)」の仕組みを発見し、がんや神経の病気の新しい治療法開発に道を開いたことで受賞されました。
大隅教授は、この研究を二十八年もの間、地道に取り組まれ、その成果が認められました。後に「私は競争が得意な人間ではなかったが、顕微鏡をのぞいて観察する時間だけは誰よりも長かった」とおっしゃっています。しかも、「研究仲間に恵まれ、仲間の努力のたまもの」とも述べておられます。
大隅教授は、チャレンジすることが科学の精神、という信念のもと、誰もやらないこと、新しい分野への挑戦をし続けました。そして、これからの若者に対して「科学に限らず、人と違うことを恐れずに、自分の興味、抱いた疑問を大事にしてほしい」そして「人と違う好きなことをやって新たな発見をする。それが科学の本質である」と創造的研究の大切さを説きました。
卒業生の皆さん、皆さんがこれから進む新しい時代は、光輝いています。失敗を恐れず、自分を信じて、未来を切り拓いていってほしいと思います。それには、「新しいものを生み出す力」すなわち「創造力」が必要です。疑問や気づきを大切にし、自分の考えをしっかりともって、簡単にあきらめたりせず、チャレンジし続けてください。そして、大隅教授のように、仲間を大切にしながら、自分の信念を貫ける人になってほしいと願います。
保護者の皆さまにおかれましては、本日のお子様のご卒業、誠におめでとうございます。卒業証書を受け取る我が子の姿に感慨ひとしおではと、ご推察いたします。皆様の、今日までの本校に対するご支援、ご協力に感謝申し上げますとともに、卒業生五十六名の皆さんの前途に幸多きことを祈念いたしまして、式辞といたします。
平成二十九年三月十六日
一宮市立西成小学校長 稲垣 淳子