2月に入りました。 東京都教育委員会では毎年6月と11月、そして、この2月の3ヶ月間を 『 ふれあい月間 』 と定め、いじめや暴力などの問題行動防止に、各学校が普段以上に力を入れて取り組むよう求めています。
そこで、今日は、遠い中東の国で起きた過激派組織 「 イスラム国 」 による暴力の話をさせてください。 ただし、場所は離れていても、実は皆さんにとって身近な暴力の話でもあることを、あらかじめ伝えておきます。
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先月の湯川遥菜さんに続き、今月1日、ジャーナリスト・後藤健二さんの殺害された映像が、「 イスラム国 」 の手によってネットに公開されました。 その映像がいかに残虐で凄惨かは、今さら言うまでもないでしょう。
だからといって私は、今ここで 「 『 イスラム国 』 とは何か? 」 を説明するつもりはありません。 また、生前の後藤健二さんについて語ることも話の趣旨とずれてしまうので、ここではあえて避けたいと思います。
この件に関して私たちがまず認識すべきことは、なぜ 「 イスラム国 」 は、あのおぞましい映像をネットに公開したかということです。 知ってのとおり 「 イスラム国 」 は、国を名乗っていますが、実態はテロリストの集団です。
では、皆さんは、テロリストの 「 テロ 」 の意味を知っているでしょうか? もとは 「 Terror ( テロル )」 というラテン語で 「 恐怖 」 を意味する言葉です。 つまり、「 テロ 」 とは、暴力の恐怖によって相手を支配することなのです。
「 イスラム国 」 は、相手を支配するために2種類の暴力を使い分けています。 一つは兵器 ・ 武器という名の暴力、そしてもう一つは、自分たちの残虐性を全世界に発信するための暴力 … そう 「 インターネット 」 です。
私たちは、前者 … つまり、兵器や武器による暴力には、同じ手段を用いて抗うことはできません。 しかし、インターネットを使った暴力に対しては、同じネットを通してささやかな抵抗を試みることができます。
例えば、後藤健二さんが殺される前、Facebook ( フェイスブック ) の呼びかけに応じ、後藤さんの解放を願う世界中の人々が、『 I am KENJI 』 と書いたプラカードを胸に掲げ、その写真をネットに投稿しました。
また、後藤さんが殺害された直後には、やはりネット上の呼びかけに応じた200名以上のヨルダン人が、現地の日本大使館前に集まりました。 そして、繰り返し 「 We are KENJI GOTO 」 と声を上げたそうです。
その一方で、残念ながらこんな悲しいニュースも目にしました。 あのおぞましい映像をコピーして、ネット上で面白半分に拡散している人がいるというのです。 一体その人は、何を目的にそんなことをするのでしょうか?
今、私は 「 面白半分 」 と言いましたが、それは 「 ウケねらい 」 や 「 冗談 」 では済まされません。 なぜなら、結果としてその人は、映像の恐怖によって相手を支配しようとするテロリストの、代弁者になってしまっているからです。
インターネットは、使い方一つで生活を豊かにする便利なツールにもなれば、人を傷つける危険な凶器にもなります。
だからこそ私たちは、その映像をネットにあげたらどうなるか、その言葉をネットでつぶやいたらどうなるか、それらの映像や言葉が、誰かを傷つける暴力になりはしないかを、常に想像しなければならないのです。
もし、その程度の想像力も働かせられないというのであれば、その人は自らの手でネットを遮断するべきでしょう。 自分で自分を小さなテロリストに貶めてしまわないための、それが最後の理性だと思います。