愛される学校づくり研究会

今、愛される学校づくりは

★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。

【 第10回 】定点調査で分かること
〜岩倉市立岩倉中学校長 野木森広〜

下のグラフは、本校体育大会時に行った保護者アンケートの経年変化です。本校に赴任して5年目、行事ごとに電子アンケートを行っていますが、おかげでどの行事でも年々肯定的な評価の割合が増える傾向にあります。いただいた自由記述にWeb上で丁寧に答えたり、指摘を取り入れて小さな改善を重ねたりした結果だと受け止めています。学校への理解を深めていただいている保護者の皆様に感謝です。

定点調査1

この評価システムを考案したのは、本「愛される学校づくり研究会」です。本会は、もともと平成19年の学校評価の義務化を受けて「学校評価をどのように進めるか」を検討するための自主的な集まりでした。当時広く試行されていた学校評価は、年度末に紙媒体でまとめてアンケートを取り、手集計を行うという膨大な作業を伴うものでした。学校現場の負担もさることながら、保護者にとってもアンケート内容が抽象的な上に結果は忘れたころに返ってくるという、意義の感じ難いものでした。

そこで考えられたのが、行事などで保護者が来校するたびに行う「小刻み評価」と、それを集計するための電子アンケートでした。「小刻み評価」は保護者が学校の様子を見た直後に行うので回答しやすく、また、電子アンケートは即座に集計されるので結果をタイムリーに知らせることが可能です。これにより評価・改善のサイクルが早くなるという利点があると考えました。

実際行ってみると、行事ごとの評価を即座に把握でき、それを職員で共有することで、毎回貴重な反省材料を得ることができました。さらに、結果を公表したり、小さな改善をしたりすることを続けると、上記のように評価が上向くという手ごたえも感じることができました。そして何よりも、同じデータを毎年集積することで、学校の取組の是非を判断することができるという、定点調査の重要性を再認識することができました。

下に示す2つ目のグラフは、本校生徒を対象とした自己肯定感アンケートの経年変化です。どの学年も、学年が進むにつれて自己肯定感が低くなっていく傾向は全国と同じ結果ですが、年度間で比較すると、同じ学年では年を追うごとに自己肯定感が少しずつ高くなっています。比較可能なのは、同じ質問項目で調査を行った3年間だけですが、それ以前に行っていた類似の質問項目でもほぼ同様の結果が見られました。

定点調査2

私が赴任してからの5年間、なぜこのように自己肯定感が上昇を続けているのでしょうか。特別なことをしている自覚はないので、その要因をずっと考え続けていました。

そうした折に、『愛知のPTA』に連載されている、スクールカウンセラーの山口力氏による『子育ては温度』というコラムが目に止まりました。以下、一部引用します。

・・(前略)・・子育てで最も重要なのは温度です。何故なら、温度が子どもの自信を育むからです。自信がなければ子どもは自力で外の世界に出ていくことができません。自信があるからこそ子どもたちは外の世界に自ら一人で出ていくことができるのです。

温度ある子育てで大切なこととして、褒めることがあげられます。褒めることで最も大切なことは日常で褒めること、日常を褒めることです。何かで一番をとった時、一等賞をとった時に褒めることは、特別な場面を褒めています。特別な場面を強烈に褒めることは、適温ではなく、高すぎる温度になります。高すぎる温度は、強い刺激となり「また一番を取らないと」「また特別なポジションをとらなければいけない」「褒められることをしなければ」といった具合に、子どもにとっては強いプレッシャーになり、今よりも、未来・結果が重要になってしまいます。

褒めるコツは、日常を大切にすることです。・・(中略)・・日常のほんの些細でさりげない場面、ちいさな事柄を一つ一つ褒めていくことで子どもの心はじわりじわりと変わっていきます。・・(中略)・・大切なのは子どもの記憶に残る褒め方ではなく、褒められても子どもが気にも留めないような事柄を見逃さずに褒めることです。当たり前のことを当たり前の日常で一つ一つ褒めていくことがとても大切です。答えはいつも当たり前と日常にあります。・・(後略)・・

これを読んで、はっと気付いたことがあります。それは、私が継続してきた「ABCDの原則」と自己肯定感との関係です。「ABCDの原則」とは、「A:当たり前のことを、B:ばかにしないで、C:ちゃんとやれる人こそ、D:できる人」という意味です。「誰にでもできる当たり前のことを誰にも真似できないほど非凡に徹底しよう」という呼びかけの基、生徒はあいさつや整頓、身だしなみなど当たり前のことを意識するようになりました。職員も当たり前のことを褒めるようになったに違いありません。当たり前を褒めた結果、自己肯定感が伸びたのだとしたら…?

私の頭の中に「当たり前のことを褒めれば、自己肯定感が高まる」という壮大な仮説が思い浮かびました。この仮説を職員に話したのは、本年7月のことです。今後、職員がこれを意識して実行し、自己肯定感の高まりがこの先数年続くようであれば、この仮説は本物だと言えるかもしれません。

定点調査を行うことで、なかなか見えない学校経営の成果が見えたり、重要な知見につながるような仮説に気付いたりすることができたと思っています。

愛される学校にするにはどうしたらよいか、暗中模索をする中でいろいろなことが見えてくるからこそ「学校づくりは面白い」と感じているこの頃です。

(2017年10月2日)

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執筆者プロフィール

●野木森 広
(のぎもり・ひろし)

昭和55年、教員生活スタート。小学校教諭23年、教頭4年、愛知県教育委員会義務教育課指導主事、扶桑町立扶桑中学校校長、愛知県教育委員会尾張教育事務所指導第一課管理主事を経て、現在、岩倉市立岩倉中学校校長。専門は理科。附属小では初めての総合学習公開授業者、義務教育課では初めての全国学力・学習状況調査の担当、校長として初めての中学校勤務、そして直近では愛知県小中学校長会の主任庶務として最初で最後の名古屋市との分離問題に関わるなど、なぜが大きな転換点に立ち、刺激的な環境をいただいている。