愛される学校づくり研究会

今、愛される学校づくりは

★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。

【 第8回 】当たり前の継続で全体の質の向上を
〜春日井市立高森台中学校長 田中雅也〜

「当たり前のことがあっても、継続や習慣化ができるかが結局の分かれ道である」。今の学校に赴任して3年目。日々噛みしめている言葉である。

出勤したあと、毎朝欠かさず行っていることがある。
 まずは、片手に交通安全旗、片手にゴミ袋と火ばさみ(ゴミばさみ)を持って、校地周辺の道を右回りに一周する。外靴に履き替え、玄関を出ると、既に部活動の朝練習に取りかかる様子がある。私の姿を生徒の誰かが見つけ「あいさつー、おはようございます」の合図に合わせて「おはようございます」の声が響く。部活動のまとまりごとに、それまで行っていた活動を中断して体をこちらに向け、遠くからでもあいさつが届く。もちろんこちらかも大きな声であいさつを返す。活動している部活の数だけ、繰り返し朝のグランドにあいさつが響き渡る。ひとしきりのあいさつタイムを終えて、正門を出る。周辺の歩道では、犬の散歩や、朝のウォーキングをしている顔なじみの地域の方々と、いつも通りあいさつを交わす。「今日も元気な声が響いとるね」。自転車に乗った卒業生が後ろから追い越しながら笑顔で「おはようございます、行ってきます」「気をつけてなぁ」。路上駐車が多い学校の南側には、たばこの吸い殻などが絶えない。多分地域の大人だと思われるが、時にはゴミ袋に入りきれないほどゴミが捨ててある。そんな時は少々落ち込むが、見逃さず拾いきる。これでも3年前に比べれば随分よくなったと、生徒会が作成してくれた「ごみをなくそう」の看板を見ながら実感する。

一周して戻ってきたら、校舎内を回り渡り廊下と昇降口の解錠をして生徒の登校受入れ準備。既に各階・各教室の廊下の窓は学年担当により開いている。教室の前面黒板には担任から生徒達へのメッセージが書かれている学級がいくつかある。先輩教員を見習って若手教員が真似しているのである。毎日続けられている様子を確認して玄関へ。そこで玄関の掃き掃除をして朝の活動を終える。
 校長がすべきことであるかどうか反論もあろうが、毎朝のルーティンである。外向きには学校の顔・姿勢を示すことで、何かあればよいこともそうでないことも声を届けてもらえることにつながるのではという意図。内向きには当たり前を大事にする姿勢を行動で示す意図で、無理なく継続・習慣化している。

校内の日常の様子として、こんな様子がある。
 朝の読書タイム。「みんなでやる」「毎日やる」「好きな本を読む」「ただ読むだけ」の4つの原則のもとで、全校で取り組む。担任も読書。毎朝実施している本校の大事な場面である。
 休み時間や教室移動。生徒は、廊下ですれ違う教師に対して「こんにちは」を繰り返す。教職員も生徒に対しても教職員同士でも「こんにちは」。教職員は職員室に戻ってこない。いつでも生徒と話ができる距離にいる。生徒に寄り添い、生徒の安定に強く寄与している。「見張っている」という構えでは続かない。そんな教職員の姿勢と実行力に日々感謝している。

校長からの生徒や教職員へのメッセージはほぼいつも同じである。
 この3年間、生徒には、当たり前を大事にすること、継続すること、あきらめない・ねばり強く取り組むことの意義について、繰り返しメッセージを伝えてきた。幸いなことに、本校は本年度創立40周年を迎える。伝統として継続されていることがあって今があることが実感できる。
 一方、教職員には、「いつも通り」をキーワードに、当たり前なこと、日常を大事にする、日常の改善の継続について繰り返し伝えてきた。こちらも幸いなことに、平成28・29年度、愛日地方教育事務協議会・春日井市教育委員会より「学習指導」の研究委嘱を受け、全校で同じ方向に向かって取り組む使命を頂き、本年度11月8日に研究発表会を実施する。ただし、特別に凄い研究や実践をしているわけではない。研究発表後も無理なく継続し、本校の文化として根ざすことを目指し、研究テーマ「ねばり強く主体的に学習する生徒の育成〜ていねいで魅力ある日常の授業の実現を通して〜」のもと、外部講師からの指導・助言や多くの方々の支援を頂きながら、毎日の授業での「集中させる」「しっかり教える」「つなげて考えさせる」場面や活動を中心に、日々の授業改善の仕組みづくりや全校の体制の見直しを行い、地道に取り組んできたところである。そして、当たり前のことをこそ、きちんとやりきっていくこと・継続していくことを大事にしてきたつもりである。まだまだ十分ではないが、生徒や授業の様子から、少しずつ全体の質の向上につながりつつあるのではないかという手応えを感じている。

きっとどの学校でも当たり前のこととして行われていること、また、きっとどの校長先生方も当たり前のこととして行っていることを、今の学校、今の自分は真似をしているに過ぎない。特別なことは何もない。それでよいと実感している。当たり前のことを継続してやりきっていくことで、学校や地域に愛着を持つ生徒を育成し、学校全体の質の向上が図られ、信頼される学校、愛される学校につながるのではないかと考える今日この頃である。

(2017年6月19日)

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執筆者プロフィール

●田中雅也
(たなか・まさや)

昭和60年4月より春日井市の中学校を皮切りに教員生活をスタート。その後、名古屋、春日井市の小学校での勤務、4年間の市教委指導主事、研究委嘱校での教頭職を経て、平成25年度より再び市教委指導主事として勤務。そして平成27年4月より現在の学校に赴任し日々の授業改善を中心とした学校経営に取り組んでいる。