愛される学校づくり研究会

今、愛される学校づくりは

★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。

【 第5回 】南風学舎よ、心のふるさとに!
〜津島市立南小学校長 浅井 厚視〜

私は自分の勤務する学校を南風学舎と呼んでいます。少し古めかしい言い方ですが、津島市立南小の「南」をとり、校長室だよりを「南風(なんぷう)」、学校地域支援本部を「南風(みなみかぜ)」と命名しています。南風は、他の方位の風と違って、何となく明るく、暖かく、人を育てるフォローのイメージをもつ風。そんな明るい学舎を、いつでも訪ねられる心のふるさとにしたいと願っています。
 「愛される学校」とはどんな学校でしょうか。私は「親しみ」をもち、いつでも或いはいつか「かかわり」や「つながり」をもちたいと思う、まちの「ほこり」の学校。「愛される学校」とは、子どもたちにとって通いたくなる学校であり、保護者にとって通わせたくなる学校、教職員にとって働きやすい学校であり、地域の方にとって「おらがまちの学校」。まさに「心のふるさ」だと思います。愛される学校づくりとは、一生涯を通しての「心のふるさと」づくりと考えています。

私は「愛される学校づくり」をめざして、二つのストラテジーを中心に進めています。
 一つ目は「教師力をアップすること」。「授業研究」を行い、授業を通して、どのように発問し、子どもたちを支援していくかについて考えたいと思っています。私は「教師力」とは、様々な場面(子どもたちの状況)で教師が考えをもちながら、子どものことを第一義として、できるだけ間違いを少なく判断し、自分の思いを伝える力のことだと思っています。この力を養うためには、授業研究が一番です。玉置 崇先生を現職教育の講師とし、教職員全員の一歩前進を目指して取り組んでいます。また子どもとの「教育相談」や保護者との面談、「アイアイ集会」や「人権新聞」など本校独自の「人権教育」に関する様々な実践の中で、自分の思いを伝えられる教師力をアップできるよう取り組んでいます。
 二つ目は「外部人材の積極的な活用」です。津南小では、今年度から「学校支援地域本部 南風」を立ち上げました。本部長・コーディネーターと相談して、外部人材の利活用を進めています。「学校支援ネットワーク会議」を開催し、学校にかかわる各団体が集まりました。各団体が「学校のために何ができるのか」を真剣に議論しました。
 平成の初めから、「人権総合学習」の出前授業の講師を地域の方に務めていただいて20年。大学生ボランティアを学校に入れて3年。地域スタッフには出前授業のほか、校外学習の付き添いや福祉実践教室の受付・接待、学校内外の花壇整備・施設整備をお願いしています。また学生スタッフは、8人の大学生が曜日を決め、毎日誰かが来校しています。主に個別の支援を要する子どものサポートを進めています。
 今年から大学生スタッフをメンバーとした「ラクラク算数教室・ドキドキ文化教室」を夏休みに3日間、冬休みに2日間開催しています。対象は4・5・6年の希望者。学校の近くにある津島南文化センターを会場にして行いました。午前・午後3時間、算数2時間・文化教室1時間を単位としました。算数は3年・4年・5年の復習を、プリントを使って行いました。文化教室では、「古墳・銅鐸づくり」「台湾の家庭料理を食べよう」「俳句教室」「ペーパークラフト」教室を行いました。
 夏休みの学習会では、子どもたちが20名〜25名、大学生が12名〜15名の参加がありました。大学生と子どもの比は、1対1から1対3の学習会となりました。3日間通して参加した子どもは「人生の中でこんなに勉強したのは初めて。算数が大好きになった」と感想を書いていました。

私は地域スタッフ・学生スタッフに円滑な教育活動をしてもらうため、ギブアンドテイクを大切にしたいと考えています。それが相互連携。地域や学生の求めに応じ、地域行事に参加したり、大学の講義やイベントにうかがったりしています。また地域で歴史の講演会を引き受けたり、大学との共同研究に参加したりしています。大学生の卒業論文の相談や就職のための学習会の開催もお手伝いしています。このような双方向性のあるつながりが、外部人材の積極的な活用には大切だと分かってきました。

私も退職まであと2年と半年。少しずつ先にあるものが気になるようになりました。「南風学舎よ、心のふるさとに!」この2つのストラテジーをもとに、地域に開かれた愛される学校づくりを加速させていきたいと思います。それが次の世代の教師たちへ、教師魂と教職の技術のバトンを渡す仕事になってくれることを願っています。

(2016年10月4日)

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執筆者プロフィール

●浅井厚視
(あさい・あつし)

今年の4月から思い切って佛教大学の通信課程の大学院生に。休みには、京都の宿坊への宿泊が楽しみ。津島市立南小学校長として勤務して3年目。最近は、人権教育にかかわる歴史講演会の講師を務める機会も増えてきた。執筆した『尾張津島見聞録』(津島の達人公式テキスト)』は増刷を重ねている。『津島の達人ジュニアテキスト』『あま市ものしりジュニア読本』など郷土の歴史読本を多数出版。また津島市・あま市の『ふるさと検定』の問題を作成中。趣味は相撲。現在、愛知県相撲連盟理事。相撲3段。津島市・あま市・弥富市の文化財保護審議委員も務める。