愛される学校づくり研究会

【第5回】学校の「2004年問題」を考える

■学校の「2004年問題」ってご存知ですか?■■■

昨年末、ある小学校の校長先生と話をしていて、不意に言われました。初耳でした。
 「週5日制になって授業時間数を確保するのに苦労していて、ようやくなんとかなっていたのに、来年度はついに年間授業日数が200日を切ってしまうんです。今どこの学校も教育課程編成で頭が痛いと思いますよ」
 週5日制になってから、授業時間数と学校行事削減の話題はよく耳にしていましたが、総授業「日」数の話は初めてでした。これまで長い間、現場の先生方と話してきた中でも記憶にありません。
 校長先生はさらに続けました。
 「来年から2学期制を始める地域では、このことも意識したんだと思いますよ」
 暦の関係で授業日数が多少増減することは想像できますが、それだけの問題ではなさそうです。しかし、情けないことに「200日を切る」ことがどのくらい深刻なのかが実感できません。学校の裏方を目指す身として恥ずかしく思いました。
 

年間授業日数が前年度より6日も少ない!

2004(H16)年度の年間授業日数は、果たして何日なのか。学校から戻って、さっそく調べてみました。
 年間授業日数は「休日でない日」だから「1年の日数」−「その年の休日の合計」で計算できるはずです。夏冬春などの長期休暇の期間は地域によっても違うようです。仮に夏42日、冬14日、春11日、合計67日として試算してみました。
 

  2004(H16)年度の日数  365日
− 休日の合計           166日
--------------------------------------------------
  年間授業日数          199日
        (試算詳細は※1)

この試算では確かに200日を切っています。しかし、どのくらい少ないのか実感がわきません。そこで今度は、今年度(H15)を計算してみました。

  2003(H15)年度の日数  366日
− 休日の合計           161日
--------------------------------------------------
  年間授業日数          205日
        (試算詳細は※2)

205日(2003年度) − 199日(2004年度)= 6日
     → 2004年度の年間授業日数は、2003年度より 6日少なくなる。

 

原因は祝日

なんと、2003年度より6日も少ないとは・・・。そのうち4日分は祝日が原因です。2004年度の祝日はほとんど土日と重ならないのです。そのため、1学期は、5月のゴールデンウイークで休日が2日多くなります。

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その後も、2学期は9月の秋分の日で、3学期は3月の春分の日で、休日がそれぞれ1日ずつ増え、年間では計4日、授業日数が減ることになります。
 

前年度通りでは計画できない

2、3日ならまだしも、6日の差は重い。先生方一人ひとりが学年末に調整できるレベルではないでしょう。となると、来年度の年間計画を学校全体として決めるこの時期に何とかしておかねばなりません。
 週5日制で学校行事を見直し、2年間試行錯誤しながらようやく定着しかけた年間計画を、さらに見直さざるを得なくなった学校も少なくないでしょう。この年末年始、頭を抱えていらした教務主任の先生がたくさんいらっしゃるに違いありません。事態の深刻さがやっと分かってきました。
 

■どこで2学期制とつながるの?■■■

ただ、この「2004年問題」が深刻だとしても、だから「2学期制」とは話が大きすぎるのではないでしょうか。
 確かに2学期制になれば始業式と終業式が少なくなって、授業日数が2日は増えます。しかしそれ以上に、年間を通して多くの行事の見直しや通知表や面談・教育相談など評価関係の見直しが必要になります。保護者に説明し、地域の理解を求めるためにも大変なエネルギーが必要です。しかも一度2学期制に変えてしまったら、簡単に3学期制に戻せません。そこまでする必要があるのでしょうか。
 暦が原因なら、授業日数は毎年増減するはずです。2004年度に6日減るとしても、2005年度には増えるかもしれません。来年1年間だけの問題ならば、何も「2学期制」にしなくても別の方法があるのでは・・・。
 

2005年度以降も「少ない年」が続く?

どうもおかしい。何か見逃していることがあるはずです。もしやと思って、2006年度以降の総授業日数も試算してみました。

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なんと2005年度の授業日数も199日です。2004年度と変わりません。2006年度と2007年度も201日です。2日増えてはいますが、2003年度の205日はもちろん、2002年度の202日よりも少ないのです。
 その先を見ても、2014年度の204日が最高です。今回試算した16年間で、2003年度は最も多い年でした。何のことはない。2004年度が「年間授業日数が少ない」だけでなく、2003年度もまれに見る「年間授業日数が多い年度」だったのです。
 

「授業時間不足の学校拡大」への危機感か

いずれにしても、2004年度から2007年度までの4年間は、週5日制導入後の2年間に比べて「年間授業日数が少ない」状態が続くことになります。
 そう言えば昨年は、中学校を中心に「年間授業時間数が足りない学校」が話題になりました。「このままでは2004年度以降、授業時間数不足の学校が大幅に増えてしまう・・・」といった危機感から「2学期制に変えるなら早い方がよい」と判断した地域もあったとしたら・・・。やっと話がつながりました。
 しかし、かえってわからなくなりました。完全週5日制で、2004年度以降も必要な年間授業時間数を確保するには、他に方法はないのでしょうか。2学期制だけで、学校が抱えている問題が解決するわけでもないはずです。
 

「学校を見る目」が変わる節目の年に

2学期制導入を、全てを見直すチャンスととらえ、授業や行事の新しい形をつくり出せた学校では、子どもたちにプラスになるかもしれません。どのくらいの学校がそこまでできるか。学校による差が大きくなっていくのかもしれません。
 「2学期制」に限らず「学校の動き」が多くなりそうな2004年は、子どもたちや保護者・地域の「学校を見る目」が変わる「節目の年」にもなりそうです。
 今年も、学校現場の目線で、前向きに取り組む先生方の本音をお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いします。
 

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(2004年1月12日)

後藤真一さんcolumn3_title.gif

●後藤 真一
(ごとう・しんいち)

教育コンサルタント。教材出版社で中学校向け教材作りに16年間たずさわった後、独立。学校と地域や専門家をつなぐ「学校の裏方」をめざす。現在は、学校現場を歩き、自分を磨く修行の日々を送っている。岡山県在住。