愛される学校づくり研究会

学校を離れて観ると

★学校に直接携わっている立場と、一歩、学校を離れた立場から観る学校現場は、ひと味違った受け止め方があるはずです。長きにわたり、教員・校長として学校に携わられた中林先生、平林先生、神戸先生、小西先生、和田先生、山田先生それぞれの視点から、現在の学校、教育について、率直な意見を示して頂きます。

【 第12回 】もったいない
〜授業と学び研究所 和田裕枝〜

学校側から依頼されて訪問するときには、必ず窓口の方がいらっしゃいます。教務主任、研究主任、教頭、校長などが主な窓口となって話が進みます。

A研究主任の場合
 現職教育で「これが本校の授業だ。みんなで〇〇な子を育てよう」という意識をもたせたい。指導案の形式やめざす子ども像は示したが、具体的にどんな授業をめざしていくのかが見えずに何となく1年が過ぎている。
 「本校での方向性を職員に教えてほしい」という依頼でした。

B教務主任の場合
 若手の先生が日々の仕事に追われて授業力アップができていない。子どもがいきいきと活動する授業をしたいと思っているが、授業を見せてくださいとベテランの先生に頼んでも「私なんかの授業を見ても…」と断られてしまう。
 「何とか先生方が元気になってほしい」という依頼でした。

C教頭の場合
 校内で授業研究することに否定的(不真面目なわけではなく、他者からの指導を拒む)で、まして学校外の講師から自分の授業を参観してもらうことには抵抗感がある。
 「若手の先生は自分の授業を見てもらって指導をしてもらいたいと思っているが一部の先生が否定的でチャンスがない。この雰囲気を脱却したい」という依頼でした。

D校長の場合
 職員はやる気があって教務主任に相談にくる。だが、研究主任や教務は「頑張って学年で相談して」と他者に押し付ける傾向がある。
  「教務や教頭が教職員を指導できるようになってほしい」という依頼でした。

A先生もB先生もC先生も、自校の校長先生に自らお願いをして講師を招聘している意欲的な方でした。この学校をよくしたい、先生方の力になりたい。でも、一人ではなかなか前に進めないので、応援団として講師の先生を探し出したということが共通でした。D校長先生をはじめとして4人の方はみなさん元気です。笑顔満載です。実情を伝えようとよくしゃべります。
 このような方と一緒に勤務していることは「運がいい」と思うのです。そして、この方々のエネルギーを吸収しないのは「もったいない」のです。

事前打ち合わせを充実させて効果アップを

(1)教材研究の相談を

授業について一人で悩んで指導案を作成していることもよくあります。教材研究不足のために、せっかくの授業力が発揮できていないことが多いです。本時の目標、子どもの実態などを講師と検討するだけでも教師の学びが増えます。研究授業は発表会ではありません。頑張った成果を見てもらって評価を受けると捉えるのではなく、授業当日までにいろいろと受けた支援や指導がその後の授業力アップの糧となると考えてほしいのです。過程の段階で講師を交えた学びの時間を多く確保できると教師の笑顔が増え、学校の雰囲気が変わります。

(2)授業検討会の相談を

研究授業の参加のさせ方、研究授業後の協議会のもち方は主に教務主任レベルの方の力量発揮のときです。「講師の先生、お願いします」と日程調整をするだけでは教師の意識向上は期待できません。講師との出会いが明日につながる時間にしてほしいと思います。例えば、授業を参観するときにもちょっとしたことで教師の力量が倍増します。

★何気なく参観している→ 協議会では個人の感想が多く、教師間の意見交流にならない。めざす子ども像を意識できていないので、子ども達が進級しても積み重ねが少ないので、学校全体のレベルがアップしにくい。
★参観の観点が決まっている→ 参観者が即時評価をし、協議会でも焦点化したグループ討議ができる。自分の授業と比べながら次にめざす目標を決める研究授業となり、学校全体の底上げにつながる。


 自分の学級を自習にしてまで参観するわけですから、その時間は先生の勉強の時間です。「今日の3組の授業を見てきたら、友達同士が〜のような話し合いができていて素晴らしかった。このクラスでもきっと…」と自分で学んだことを子どもに語れる参観にしたいです。授業者本人だけでなく、学年も学校内の教師も養護教諭もスクールカウンセラーも伸びる機会にしないと「もったいない」です。

≪職員室の声≫
研修後、「明日から〜してみよう」「今までのやり方にプラスすればいいね」「今度の指導案からやり方を変えてみよう」などの声が職員室で聞こえてきました。大きな声で笑いながら話しています。

こういうメールをいただくことがあります。研修を学校行事の一環としてとらえるのではなく、研修目標を全職員で共通理解した学校だからこそ出る声でしょう。こういう学校は「もったいない」ではなく「一石二鳥」の活動が増えて学校全体が元気になるようです。

(2018年1月15日)

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執筆者プロフィール

●和田 裕枝
(わだ・ひろえ)

1979年 豊田市にて小学校教諭となる。小学校教務主任、県、市の指導主事、教頭、校長を経て2017年3月に退職。教務主任時代から市内外の学校より要請を受けて授業づくりや教師力アップについての講師を務めてきました。授業と学び研究所フェローとして模擬授業を中心とした実践的な授業づくりを通して教師が笑顔になる支援がしたいと思っています。