愛される学校づくり研究会

地域とともにある学校づくり

★このコラムは、愛知県一宮市の公立小中学校長を歴任された平林哲也先生によるものです。平林先生は「発信なければ受信なし」の理念のもと、校長としての思いを学校ホームページに毎日発信していらっしゃいました。アクセス数が増えるのに伴って強くなる保護者や地域との絆。さまざまな実践を工夫されてきた平林先生に、学校と家庭・地域との結びつきはどうあるべきかについて語っていただきます。

【 第4回 】学校支援ボランティアとの連携

学校支援ボランティアの活躍

最近は、どの学校でも地域や保護者などで結成される学校支援ボランティアが活発に活動しています。学校を開くという観点からも、学校支援ボランティアはとても重要な存在です。
  例えば、小学生の登下校時の安全確保のために地域のお年寄りを中心に組織された「見守り隊」、小中学校の行事協力や環境整備を積極的進める「おやじの会」、小中学生が読書に親しめるようにサポートする「読み聞かせグループ」、家庭科授業でミシンや調理などの実技をサポートする「授業支援ボランティア」などがあります。

頼れる「おやじの力」

私が勤務していた一宮市立木曽川中学校の「おやじの会」は、その会員には在校生の父親だけでなく、かつての保護者も多く、中には将来の保護者さえも名を連ねています。会員の多くは卒業生の一人でもあり、いわば世代を超えた父親の「同窓会」的な雰囲気を持っています。
 主な活動は、学校行事の際の駐車場整理や会場警備、定期的な除草活動、各種部活動との交流試合などがありますが、これはどこの学校でも同じでしょう。特色ある活動としては、将来中学生となる地域の小学生のための行事を企画・運営し、地域人として小学生親子に接する活動が挙げられます。ここ数年は、中学校の施設を使いながら「ペットボトル水ロケット大会」を開催し、楽しんでもらっています。
 また、代表者の方にはコミュニティ・スクール学校運営協議会のメンバーにも入っていただき、毎回、活動を通して感じた忌憚のない意見もいただくことができました。
 年齢や職業は違っても、会員のだれもが学校に対する愛着が人一倍強く、学校や生徒のためになるのならば、時間を割いてさまざまなリクエストに快く応えていただけます。時には、校長のわがままを聞いていただいたこともあります。
 ある時、平日の学校参観日には仕事の関係でなかなか足を運べない会員から、「最近はどんな授業が行われているのか興味がある。機会があれば、ぜひ一度、授業を見てみたい。」という声が上がりました。私は即座に「見るだけでなく、実際に授業を受ける機会を作ったら来ていただけますか?」と答えました。若手教師グループが勤務時間終了後に計画していた道徳のシミュレーション授業の生徒役を思いついたからです。当日は生徒役になりきって、さまざまな反応をしていただきましたし、授業後、授業者は保護者として、あるいは職業人としての意見や要望をお聞きすることができました。
 またある時は、キャリア教育の一つとして、会員のみなさんに授業をしていただいたこともあります。それぞれの職業のプロばかりですから、なぜその職業に就いたのか、自分の仕事に対するプライドや苦労などを熱く語っていただきました。生徒たちも身近な人たちのお話を聞きながら、真剣に自分の将来を考える機会となりました。

「PTAさんかく倶楽部」の結成

どの学校のPTA役員にも任期があります。任期中は学校との関わりが強く、管理職との連携も密になりますが、任期を終えると、学校とのつながりを持ち続けることは難しいものです。
 そんな状況から、一宮市立木曽川中学校には「PTAさんかく倶楽部」が結成されました。これは、PTA役員経験者が中心となってPTA活動や学校運営を支えようとするものです。
  多くの学校では、PTA役員が校区の地区割りで決定されます。なかなか担い手が見つからないという学校もありますが、中にはやりたいと思っていても人数の関係で選ばれないケースもあります。この組織はそんな人たちをも取り込み、まさしく活動に「参画」しようとするものです。
 チャンスがあれば「参画」したいという気持ちを持つ人たちが、どの学校の保護者や地域の中にもいるものです。そんな人たちには、学校支援ボランティアとして大きな力を発揮していただけるものです。学校経営を進めるのに、そんな人たちの力を取り込まない手はありません。

支援者の力を取り込む学校経営を

今では、このような学校支援ボランティアの活動を抜きにしては学校経営が成り立たない時代になっています。コミュニティ・スクールであるか否かに関わりなく、地域の中の学校として存立するためには、この学校支援ボランティアの活動は欠かせない視点です。
 要は管理職の「開かれた学校づくり」に対する考え方一つです。地域コミュニティの中での学校を考えるならば、積極的に協力していただける方の力をどう取り込み、どう活かすのか、視野を広く持って考える、さまざまな仕掛けをする姿勢が求められます。
  管理職は、活躍の場や機会を創造するために、積極的に地域や保護者にはたらきかけ、協力を要請する経営センスが求められているのです。

(2015年7月13日)

平林先生

●平林 哲也
(ひらばやし・てつや)

1977年一宮市にて小学校教諭となる。小学校教諭・教頭・校長18年、中学校教諭・校長20年を経験し、2015年3月定年退職。校長在任中は、「発信なければ受信なし」をモットーに、学校ホームページを通して児童生徒の様子、学校や校長としての思い・考えを、趣味の写真とともに365日掲載。現在、一宮市教育センター・副センター長として各種の教員研修をコーディネートしている。