愛される学校づくり研究会

1人1台情報端末をもつ時代を見据えて

★学校ICTはどこに向かうのか、そこにどう向かっていくべきなのか、研究者や学校経営、教育課程や情報教育担当者、更に学校の情報化を支えるサポート業者等のそれぞれの立場から、豊福先生、芳賀先生、水谷先生、川本先生、古田先生、EDUCOM社より情報発信して頂きます。考え方は一つでないところが本研究会のよさです。

【 第3回 】ICTと教員養成

はじめに

当コラムをお読みのみなさん、はじめまして。岐阜聖徳学園大学(ぎふしょうとくがくえんだいがく)という私立大学の教員養成系教育学部の教員をしている芳賀と申します。よろしくお願いいたします。

 さて、本年度の「愛される学校づくり研究会」の第1回ミーティングで配布されたウェブコラム(リレーコラム)計画に、自分の名前が掲載されているのを見て、私は大変困惑しました。
 私の許諾なしに勝手に私の名前がリレーコラム計画に掲載されていたから戸惑ったわけではありません。私はそういう大きなことには、ほとんどこだわりません。そうではなく、もっと小さいこと―つまり、私が担当するリレーコラムのテーマが「学校ICTの未来」だったからです。
 「学校ICTの未来」というタイトルの響きは、どことなく最善説(オプティミズム)を想起させ、「明るい未来」や「感動した話」を書かねばならないというプレッシャーを感じます。でも、「学校ICTの未来」について、私はとてもそのような心境にはなれません。
 なので、リレーコラムを書くならば別のテーマにさせていただこうと思ったのです………私はこういう小さいことにはとことんこだわるタイプなので。

 しかし、考えてみれば、そもそも、この研究会の「愛される学校」というネーミング自体…【ココには読者がお好きな文章をご自由に入れてください】…なので、それからしたら「学校ICTの未来」が明るかろうが暗かろうが、そんなことはとても大きなことだと思い直し、あまりこだわらずにお引き受けすることにしました。
 他の方のコラムよりもだいぶ長いかもしれませんがお許しください。

1.「若い人はICTが得意」はほとんど都市伝説

まず、下のグラフをご覧ください(図1)。
 これは、2016年7月に私が大学で学生(大学1年生70名と3年生約160名)に実施した調査の結果です。つまり、このコラムをお読みになる方からすれば「若い人たち」に対する調査です。
 このグラフは、「あなたが現時点でICTに関してもっとも当てはまるものを選んでください」という質問に対する単数選択の回答を集計(数値は%)しています。選択肢はICTが「得意である」、「苦手である」、「得意でも苦手でもない」の三択です。有効回答数は1年生69、3年生134です。

図1:ICTの得手不得手

図1:ICTの得手不得手(%)

大学1年生は「ICT基礎」、3年生は「教育情報方法論」の授業後の調査です。「謙遜」もあるかもしれませんが、いずれも、42%の学生が「ICTは苦手である」と答えています。
 この結果に驚かれる方は多いかもしれません。なぜなら、一般的には「若い人」はICTが得意だと思われているからです。
 私の講義を受講する学生が教育実習に行くと、現場の先生方から「自分はあまりわからないけれども、若い人たちはICTをどんどん使ってよ」とか、「若い人はできるだろうからICTを使ってみてください」と、少なからず言われることがあるそうです。
 しかし、この調査からは、その「若い人たち」の4割がICTを「苦手」としているのが実状で、もしかしたら、現場の先生方が「わからない」のと同程度、彼らもまたICTについては「わからない」かもしれません。
 ただ、図1を見るかぎりでは、現3年生(教育実習直前)の「得意である」は7%しかいませんので、単純に考えると、「ICTが得意な学生は今後増えていくかもしれない」と楽観視できなくもありません。
 しかし、私の現場感覚からすると、とてもそんな楽観視はできません。

2.学生はICT利活用の「量の増加」に慎重、または消極的

じつは、私も中学校の教員をしていたときには「若い人はICTが得意で、教育利活用にも積極的なのだろう」と考えていた口です。たぶん、自分が若かりし頃にそうだったからでしょう。
 ですが、4年前に大学の教員となり、小中学校現場や教員を目指す学生の「ICT利活用の捉え方」を知る機会が増えると、その考えを改めざるをえなくなりました。
 図1のようにICTを苦手とする学生が多いこともそうですが、学生がICTの教育利活用に対する冷めた態度や慎重すぎる姿勢を見せることを、私はとても危惧しています。

 図2は、「現時点で教育(授業/学習)にICTを利活用することについてどのように思いますか?」という質問に対する回答の集計結果(数値は%)です。

図2:現時点でのICTの教育利活用に対する考え(%)

図2:現時点でのICTの教育利活用に対する考え(%)

「積極的に活用すべき」は、1年生が26%、3年生が23%で、やや1年生が高いですが、一方で「教科によっては積極的に活用すべき」は1年生が57%、3年生が67%と、3年生が10ポイント高く、「少し、たまに活用すべき」は1年生が14%、3年生が9%で、1年生が5ポイント高い結果となっています。3年生よりも1年生のほうがやや消極的に見えます。
 ただ、この結果からは、ICTの教育利活用に対する冷めた態度や慎重さ、消極性は、それほどは認められません。

 しかし、つぎの図3を見てください。
 図3は「将来 教育実習や授業(学習指導)にICTを活用したいと思いますか?」という質問に対する回答の集計結果です。
 「積極的に使いたい」は図2とほぼ同率です。しかし、「少しは使いたい」がともに約60%と高率になってしまいました。

図3:将来ICTを教育(教育実習等)で利活用することについて(%)

図3:将来ICTを教育(教育実習等)で利活用することについて(%)

図2と図3どちらを信用すべきか判断に迷いますが、図2と図3の「積極的に」がほぼ同率であることと、図2の「(現時点では)教科によっては積極的に活用すべきと思う」と、図3の「(将来は)少しは使いたい」もまたほぼ同率であることに鍵がありそうです。

 では、図2と図3のクロス集計を見てみましょう(表1)。

表1:現時点での考えと将来の展望のクロス集計(%)
<上:現時点の考え→将来  下:将来→現時点の考え>

表1:現時点での考えと将来の展望のクロス集計(%)

『現時点の考え→将来』のクロス集計では、「(現時点で)積極的に使うべきだ」と答えた学生を100としたとき、1年生は67%、3年生は57%が「将来、積極的に使いたい」と答えています。 しかし、1年生の33%、3年生の43%が「将来、少しは使いたい」と答えています。 同じく、「(現時点では)教科によっては積極的に使うべきだ」と答えた学生のうち、1年生、3年生ともに約20%が「将来、積極的に使いたい」と答えたものの、1年生の74%、3年生の66.3%の学生は、「将来、少しは使いたい」と答えています。

 つぎに表2は、現時点では「積極的」と思われる学生のみをクロス集計(数値は%)したものです。1年生と3年生を合算しています。

表2:現時点で積極的な学生の将来の展望(%)

表2 現時点で積極的な学生の将来の展望(%)

このように、現時点ではICTの教育利活用に積極的と思われる学生であっても、その6割は、将来、教育実習等で授業をすることを想像すると「少しは」のように消極的になってしまいます。
 とくに、「(現時点では)教科によっては積極的に活用すべき」と答えた学生のうちの7割が「少しは」と答えています。ある特定の教科でICT利活用はすべきだろうけれども、学校教育のあらゆる場面にICTを使うことには慎重である、ということなのかもしれません。
 あるいは、本学教育学部の学生はみな国語、社会、体育などの教科(専修)に属しており、専門教科をもっていますので、もしかしたら、自分の専門教科の学習指導では「ICTは少し使う」けれども、他の教科では「積極的に使うべきだ」と他人事として押しつけてしまっている……という見方は、あまりに乱暴でしょうか。

 私は昨年から、教育実習を終えた全学生(毎年400名弱)にもICTの利活用に関して調査を行っていますので、そのあたりのことはまた詳しく調査してみたいと思います。

3.消極性の原因は何か

ICTの利活用に対する消極性の原因はなんなのでしょうか。
 やはり、ICTの得手不得手が関係しているのでしょうか。

 表3、表4に、図1(ICTの得手不得手)と図2、図3のクロス集計を示します。なお、表4は、1年生と3年生の合算です。
 まず、表3と表4の<上表:得手不得手と現時点の考え>のクロス集計を見る限りは、ICTが得意と答えた学生は、やはりICTの利活用に積極的で、ICTを苦手とする学生は消極的である傾向が認められます。

表3:ICTの得手不得手と積極性のクロス集計(%)
<上:得手不得手→現時点の考え  下:得手不得手→将来>

表3 ICTの得手不得手と積極性のクロス集計(%)

表4:積極性とICTの得手不得手のクロス集計(%)(1年生と3年生合算)
<上:現時点の考え→得手不得手  下:将来→得手不得手>

表4 積極性とICTの得手不得手のクロス集計(%)(1年生と3年生合算)

たとえば、表3<上:得手不得手→現時点の考え>では、ICTが「得意」な学生は、1年生も3年生もすべて「(現時点では)積極的に活用すべき」か、「(現時点では)教科によっては積極的に活用すべき」と答えています。また、表4<上:現時点の考え→得手不得手>では、「(現時点で)少し、たまに活用すべき」と答えた学生に、「得意」な学生はいません。さらに、表4でも、「(現時点では)少し、たまに活用すべき」と答えた学生の81%が「苦手」な学生ですので、やはり、「苦手」な学生は消極的な傾向があると言ってよいでしょう。

 しかし、図1のように「得意」と答えた学生は、1年生で17%、3年生が7%(総計で12%=有効回答数計200名中24名)しかおらず、「苦手」と「苦手でも得意でもない」学生が約9割います。ICTの得手不得手と積極性に関する考察には、むしろ「苦手」と「苦手でも得意でもない」学生の意識の考察がより重要かもしれません。

 表3では、「苦手」だけれども「(現時点では)積極的に活用すべき」と答えた学生が20%程度います。そして、「苦手でも得意でもない」けれども「(現時点では)積極的に活用すべき」と答えた学生(3年生)は、「得意」な学生よりも比率的に多くなっています。
 さらに、「苦手」だけれども、「将来、積極的に使いたい」と思う学生は1年生で28%、3年生は14%いますし、「苦手でも得意でもない」学生で、「将来、積極的に使いたい」と答えた学生が1年生で25%、3年生では34%もいます。
 すなわち、ICTが苦手であっても、得意でなくても、ICTの利活用に積極的な学生はいるのです。
 しかし、一方で、「苦手」、「苦手でも得意でもない」学生の6〜7割は、ICTの教育利活用に消極的です。

最後に、大学1年生と大学3年生のICT得手不得手と積極性に関する統計分析を試みます。
 まず、ICTの得手不得手の「得意」を3とし、「得意でも苦手でもない」を2、「苦手」を1という数値に変換します。そして、現時点での考えの「積極的」を5、「教科によって」を4、「少し、たまに」を3、「あまり」を2、「全く使わない」を1とします。また、将来の展望も、「積極的」を5、「少しは」を4、「あまり」を3、「進められれば」を2、「全く」を1とします。
 この場合、それぞれの平均値は表5のようになりました。

表5:ICTの得手不得手と積極性の平均値(大学1年生と大学3年生の比較)

表5:ICTの得手不得手と積極性の平均値

これまで見てきたのと同様に、平均値自体はICTの得手不得手は大学1年生ほうが少し得意、現時点での考えは大学3年生が少し積極的、将来は1年生が少し積極的に見えます。しかし、検定では大学1年生と3年生で有意な差はありませんでした。
 つぎに、「ICTが得意な学生はICTの教育利用に積極的である」と仮定した場合の調査結果の相関を見てみます(表6)。
 このように、ICTの得手不得手と現時点の積極性、将来の積極性の相関係数は、いずれも0.12〜0.25の範囲で、「ほとんど相関が見られません」。ICTの得手不得手は、ICTの教育利活用の積極性/消極性とはあまり関係がないように見えます。

表6:ICTの得手不得手とICTの教育利活用の積極性に関する相関

表6:ICTの得手不得手とICTの教育利活用の積極性に関する相関

ただし、因果関係はあるように思われるのに、相関がでない場合には検定力が不足していることも考えられるため、一概に因果関係がない、相関がないとは断言できません。
 しかし、ICTの得手不得手以外の何らかの別の要因がかなり働いている可能性がありそうです。

長くなりましたが、以上のようなことから、
  「なぜ、若い人や教職経験のない学生に、ICTが苦手な人が多く、
  ICTの教育利活用に消極的な人が多いのか?」 は大変興味深いところなので、今後も研究として取り組んでみたいと思っています。

 また、教員養成の教育実践としては、

  1. ICTが苦手か、得意でない学生のうち、ICTの教育利活用に「消極的な学生」に対して、ICTの教育利活用に「積極的になってもらえる教育」とは何か
  2. ICTが苦手か、得意でない学生のうち、ICTの教育利活用に「積極的な学生」に対して、ICTを「得意になってもらえる教育」とは何か

について検討が必要だと思っています。

 機会があれば、この2点について詳しくレポートしたいと思います。

(2016年9月20日)

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執筆者プロフィール

●芳賀 高洋
(はが・たかひろ)

2012年より教員養成を旨とする岐阜聖徳学園大学教育学部・准教授。2015年より金城学院大学非常勤講師(情報倫理論)。専門は『教育領域の情報倫理学』。2012年までお茶の水女子大学附属中学校・技術科教諭。本務校では情報関連科目のほか、教育実習など教職関連科目の講義を担当。1993年に大学院生の身でありながら千葉大学教育学部附属中学校技術科の非常勤講師としてインターネットの教育利用の実践研究に取り組んだことがこの世界に入るきっかけ。当時は隣接する大学に中学生を引き連れて技術科の授業を行っていた。翌94年には同校のホームページを公開し、その後、他の国立大学附属学校や全国の「100校プロジェクト校」の先生方らとネットでつながる。以来、インターネットの教育利用に関わってきた。