愛される学校づくり研究会

授業改善

★愛される学校づくり研究会では、昨年度までの授業研究に引き続き、より広い視点で授業改善についてこの1年間研究していくことになりました。「楽しく授業研究をしよう」と同じく、研究会と連携しながら学校の授業改善を日常的に行う方法について考えていきます。今回は「楽しく」だけでなく、いかに「手軽に」行うかという点でも提案できることを目指します。授業改善を通じて、学校経営や学校の活性化についても触れていくことができればと思っています。

【 第8回 】授業改善が上手く進む学校の特徴

毎年多くの学校で授業改善のお手伝いをさせていただいていますが、授業改善の取り組みが全体に広がり上手く進んでいる学校には共通の特徴があるように思います。また、小学校と中学校ではその進み方の様子に違いもあるようです。

授業改善のお手伝いを始めた当初は、中学校より小学校の方が授業改善は速く進むと考えていました。小学校は学級担任制なので担任の先生がその気になれば子どもたちの変化はすぐに現れるからです。ところが実際には、中学校の方が学校全体の変化が速いように感じるのです。
  例え研究指定校であっても、先生方全員が同じように授業改善に取り組むことはなかなか難しいことです。どうしても温度差があるのです。しかし、中学校は教科担任制なので、何人かの先生が授業改善に取り組むと、多くの学級に影響が出てきます。全部の授業が変わらなくても、ある程度の数の授業がよい方向へ変われば子どもたちもよい状態になっていきます。子どもたちのよい変化が、先生に関係なく多くの授業でも見られるようになるのです。特に何もしない先生であっても子どもたちによい変化が現れれば、授業はよくなっていきます。また、例え自分の授業で子どもたちに変化がみられなくても、授業研究で担当している学級の子どもたちのよい変化に気づけば、授業改善に対して前向きな姿勢に変わっていきます。結果として、学校全体の授業がよくなっていくのです。授業改善が進んでいる中学校では、授業研究の視点は教科の指導内容ではなく「子どもの姿」を中心としたものになっていることが多いのですが、その理由がわかります。核となる先生方をうまくつくることができれば、子どもの姿に視点をあてた授業研究を行うことで学校全体に授業改善を広げることができるのです。

一方小学校では、自分が担任している子どもの姿を授業研究で見ることはあまりありません。授業で見せる子どもの姿の違いは、授業の質ではなく子どもの質の違いだと考えて、なかなか授業改善に前向きになってくれないことがあります。よい取り組みが個人レベルから学校全体になかなか広がりにくいのです。
  では、小学校では授業改善が上手くいかないかというとそんなことはありません。最近、学校全体の雰囲気が短期間で変わることをいくつもの学校で経験しています。それらの学校に共通しているのが、管理職や教務主任が示す強制力です。これだけは共通して取り組もうということに絞って具体化し、そのことを全員に求めるのです。小学校ではよい取り組みが自然に広がりにくいので、強制的にやらせるのです。取り組み始めれば学級担任制なので、中学校よりも変化は早く現れます。子どもたちのよい変化を目の当たりすれば、授業改善に自然に取り組んでくれるようになります。また、授業研究などの後に、その授業を通じて学んだことやこれから意識して取り組みたいことをレポートとしてまとめることを全員に課している学校もあります。そのレポートを学校全体で共有するのです。
  こういったことは特に授業規律に関する取り組みに関して有効です。学校全体で共通の授業規律をつくって取り組めば、翌年学級編成が変わっても1から指導をやり直す必要がありません。取り組みが積み上がっていくのです。

もちろん小中学校の別に関係なく有効な取り組みもたくさんあります。その1つがチームで授業改善に取り組むことです。学校の実情にあわせて、学年、教科、若手、若手とベテランというように、小人数で授業改善に取り組むのです。例えば小学校であれば、学年で教科ごとの主担当を決め、新しい単元に入るたびに担当の教科の進め方を提案し、それを全員で共有し検討するといったやり方です。こうすることで、自然に日々の授業について情報交換をするようになりますし、互いの授業を見あったり、時には学級を交換して授業をしたりといった交流も増えてきます。同様に、中学校であれば、学年を越えて教科で単元構想を話し合ったりして、授業の情報を交換するといったやり方があります。若手同士であれば、教科を越えて授業規律や授業技術の視点で授業を見合うことや、研究授業に際して指導案を教科に関係なく検討し合ったり、模擬授業を行って子どもの視点で意見を出し合ったりするといったことが多いようです。ただ、若手だけだとどうしても視野が狭くなりがちなので、そこにベテランが加わるとより効果的なようです。
  互いに助け合い学び合うことで、授業改善が孤独な取り組みでなくなり、授業について気軽に相談できる関係が生まれてきます。日常的に授業改善する雰囲気づくりの核ができてくるのです。こういった取り組みを通して授業改善が進んでいけば、実践例とそこに至る過程がチームの中に蓄積されていきます。その内容を全体で共有することで、授業改善を個人の問題ではなく組織的な取り組みとすることができます。学校全体に広げていくのもそれほど難しいことではなくなっていきます。

さて、こういった取り組みが自然発生的に起こることは、実は稀です。積極的に授業改善をしましょうと呼びかけるだけでは、何も起こりません。管理職や教務主任が積極的に声をかけて、先生同士をつなぐことが必要です。学年主任や教科主任が音頭を取っているように見えても、管理職や教務主任が裏で彼らに働きかけていることもよくあります。これまでにも授業改善のためのいくつかの方法を紹介しました。小中学校の別や学校の実情によって、取り組み方やアプローチは異なるかもしれませんが、授業改善が進んでいる学校の共通の特徴は、管理職や教務主任が積極的に仕掛けていることです。あたりまえのことかもしれませんが、学校レベルでの授業改善は、管理職や教務主任にかかっているのです。

次回は、来年2月の「愛される学校づくりフォーラム」に向けての取り組みを紹介したいと思います。

(2014年12月1日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。