愛される学校づくり研究会

授業改善

★愛される学校づくり研究会では、昨年度までの授業研究に引き続き、より広い視点で授業改善についてこの1年間研究していくことになりました。「楽しく授業研究をしよう」と同じく、研究会と連携しながら学校の授業改善を日常的に行う方法について考えていきます。今回は「楽しく」だけでなく、いかに「手軽に」行うかという点でも提案できることを目指します。授業改善を通じて、学校経営や学校の活性化についても触れていくことができればと思っています。

【第2回】「伝える授業」を公開する

学校全体で授業研究を行うのはそれなりに準備等が大変です。そのため、全体での検討会などを行わずに授業公開だけを行っている学校があります。授業を見て学び合う機会をつくるには手軽な方法です。授業を見た方には学ぶことはたくさんありますが、検討会がないため公開した方が得るものがあまりありません。そこで、検討会の代わりに授業への感想などを書くことを義務付けるのが普通ですが、それはそれで負担になりますし、せっかく公開してもおざなりの意見や感想しかもらえなければあまりうれしくはありません。特に準備をせずに公開するのであれば負担は少ないのですが、積極的に公開したいという気持ちになりにくいのも事実です。

発想を変えて、先生方に何かを伝えることだけに目的を絞って授業を公開するというやり方があります。例えば、「授業規律を意識して授業を進めてください」、「子どもとの関係をつくることを大切にしましょう」、4月当初、教務主任や管理職がこのようなことを先生方に伝えることはよくあることだと思います。しかし、こう言ったからできるのであれば、誰も苦労はしません。若い先生などは、どのようにすればよいのか具体的に伝えなければ、実際には何も変わりません。とはいえ、打ち合わせで具体的な話をする時間もとれませんし、本を読むように言っても、なかなかその余裕もありません。いろいろな授業技術を整理して読みやすくまとめたものを配っている管理職もいますが、読んだだけではピンと来ないのが現実です。そこで、伝えることを意識した授業を公開しようというわけです。授業は管理職や教務主任、力のあるベテランの方が行います。授業を見た感想やフィードバックは期待しません。指導案なども用意しなくてもよいでしょう。もし、準備するのであれば、せいぜい「こういうことを意図して授業をします」という簡単なメモを配るくらいで十分です。授業を見てもらって、そこで具体的にどのようにすればよいのか学んでもらうのです。

私が授業アドバイスをしている学校で、5月のゴールデンウィークの真最中に教務主任が授業を公開しました。この先生は4月当初より野中信行先生の3・7・30の法則のことなどを先生方に向けて話してこられましたが、今一つ手ごたえがなかったようです。事実、今年初めて担任を持った先生に、3・7・30の法則のことを聞いてみたところよくわかっていませんでした。無理もありません、右も左もよくわからない状態で、毎日の担任業務をこなすので精一杯の状態です。この時期に勉強する余裕はないでしょう。悩んだ教務主任は、自分自身も忙しくて余裕のない状態でしたが授業を公開することにしました。先生方に、具体的にどのようにして授業規律を確立するのか、どのような対応で子どもたちとの人間関係をつくるのかを伝えるためです。

授業開始の挨拶では、しっかり子どもたちと目線を合わせ、全員が自分に集中したのを確認してから礼をします。若い先生にもわかるようにゆっくり目線を動かし、間も大きめにとります。プリントを配る時には、「ありがとうと言えるといいね」と授業を見ている先生に聞こえるような声で一言そえます。授業者は、子どもたちの発言を満面の笑みで大げさなくらい大きくうなずきながら聞きます。子どもたちはうれしそうな表情で意見を発表します。ちょっとしゃべりたそうにしている子どもの様子を見て、「○○君、何かわかっているね」と声をかけます。子どものちょっとした仕草や表情をとらえて、固有名詞で評価する場面を意図的にたくさん見せます。その子どものまわりの子どもたちも明るい表情になってくれるので、このような働きかけが子どもたちとの関係づくりによい影響があることがよくわかります。調べたことをノートに書く作業を指示しますが、時間が来たのでまだ作業中でしたがすぐに止めさせました。「1つは書いているよね」と確認したところ、手が挙がらない子どもがいます。授業者はその子どものノートを確認して、「なんか書いてあるじゃない」と発表させます。ほとんどの子どもが手を挙げているからこそ、手を挙げていない子どもに目を向けることが大切です。できていない子どもも活躍させようと考えているから、途中でも躊躇なく止められます。子どもたちの発言に対して「ありがとう」と返すことで発言をしやすい雰囲気をつくり、「わからない人いない?」と子どもたちにたずね、全員が理解することを目指す授業はどのようなものかを具体的に示しました。

この先生の日ごろの授業を知っている私から見れば、少々わざとらしいところもありますが、伝えるための授業とはこういうものだと思います。大切にすべきことを日ごろから意識している先生であれば、そのことを意図的に伝える授業が可能だと思います。百聞は一見に如かずと言いますが、こういう授業を見せることで、経験の少ない方にもよく伝わります。もちろん若手の横にベテランがついて、一つひとつの場面を解説するとより効果的ですが……。

このやり方は、授業を公開するだけですから特段の準備は要りません(もちろん公開するのですから、それなりの準備は必要かもしれませんが……)。手軽に授業技術を伝えたり、授業改善を意識してもらったりするための一つの方法です。実際に若手を育てるのに、「いつ見に来てもいいよ」と声をかけ、見に来たらすかさず伝えるための授業をしている教頭もいます。校内の授業改善を進める立場になった方は、伝える授業という視点を持っていただければと思います。

次回は「伝える授業」をみんなでつくるということについてお伝えしたいと思います。

(2014年6月2日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。