愛される学校づくり研究会

授業改善

★愛される学校づくり研究会では、昨年度までの授業研究に引き続き、より広い視点で授業改善についてこの1年間研究していくことになりました。「楽しく授業研究をしよう」と同じく、研究会と連携しながら学校の授業改善を日常的に行う方法について考えていきます。今回は「楽しく」だけでなく、いかに「手軽に」行うかという点でも提案できることを目指します。授業改善を通じて、学校経営や学校の活性化についても触れていくことができればと思っています。

【 第12回 】楽しく、手軽に授業改善しよう!

2月21日に行われた「愛される学校づくりフォーラム 2015 in大阪」の午後の部「楽しく、手軽に授業改善しよう」でのまとめのパネルディスカッションは、私以外の登壇者はすべて校長でした。そこで、校長として学校の授業改善にどのように取り組んでいるかが話題となりました。やはり、授業研究に力を入れるということが挙がってきます。「3+1授業検討法」を取り入れている校長の話からは、検討会が批判一辺倒にならない雰囲気づくりを意識していると感じました。「楽しく」というと言いすぎかもしれませんが、先生方が前向きな気持ちになることを大切にしています。前向きな気持ちという視点では、全体での授業研究にこだわらず、普段から先生方の授業を観察して、上手にフィードバックしていることも共通していました。授業について直接アドバイスをするときには、写真や時には動画を使って具体的場面を見せて伝えるといった工夫をされています。教室で起こった事実を見せることで、授業者自身で気づくことができます。ここがいけないと言われるよりも前向きになれます。できるだけよいところを見つけてほめることも忘れません。かつて、ある校長に「ほめようのない授業もあるでしょう」と言ったところ、「1時間見ていれば1つくらいはほめるところがある」と返されたことを思いだします。

学校ホームページも前向きにするための重要な道具です。自分の授業のよいところをほめる記事を載せてもらえば、頑張ろうという気持ちになります。欠点を指摘しなくても、よりよくしようとすることで授業は改善されていきます。また、校長自ら授業を公開することもされています。言葉で言ってもわからないことを、授業の中で意図的に見せることで伝えようというのです。校長だからこそできることです。

ところで、ここで話題になった校長の取り組みは今回のテーマの一つである、「手軽」と言えるものなのでしょうか?こういった取り組みを紹介すると、なかなか余裕がなくてできないという校長もいらっしゃいます。しかし、登壇された校長からはたいへんなことをやっているといった気負いを感じられませんでした。みなさん自然体です。先生方の授業を見ることは、ちょっとした時間が空いた時にやればいいのです。授業研究は指導案の作成などの負担の少ないやり方を工夫すれば回数を増やすことができます。ホームページは写真と共に短い言葉で端的に紹介すれば十分その役割を果たします。「手軽」かどうかというのは、こちらの気の持ち方次第のように思えます。

この連載や今回のフォーラムでは、「楽しく、手軽に授業改善しよう」というテーマを学校としての取り組みとして考えてきました。しかし、授業改善そのものは先生方一人ひとりの問題でもあります。連載の最後に、先生方が「楽しく」「手軽」に授業改善する方法について少し述べたいと思います。

まずは、授業について先生同士で話をすることです。「この単元はどうやって教えている?」「子どもたちはどんなところでつまずいている?」「どんな課題をやらせた?」といった情報を日常的に交換するのです。自分一人で考えているとどうしても視野が狭くなり、行き詰まってしまいます。気軽に相談し合うことが大切なのです。小学校では、授業の進め方を同じ学年の先生で教科ごとに分担して考えている例もあります。それぞれが教材研究したものを伝え合い、互いにやってみることで自然に授業研究が行われます。授業について話し合うことは楽しいことでもあります。上手くいかない時は、一緒に悩むことで苦しさも軽減されます。中学校であれば、同じ教科の先生で相談し合うことが多いと思いますが、同じ学級を担当している先生同士で、子どもたちの様子を話し合うこともよい方法です。授業によって子どもたちの姿は変わります。自分の授業とは違った子どもの姿を互いに知ることで、授業改善のヒントが見つかることもよくあるのです。

日々の自分の授業から改善点を見つけることもとても大切なことです。ポイントの一つは、毎時間の授業で子どものどんな姿を見たいかを意識して教壇に立つことです。この姿を考えること自体、立派な授業改善の第一歩です。そして、目指す姿と子どもたちの実際の姿とのずれを知ることで自然に授業改善につながっていきます。ずれに気づいてもどうしたらよいかわからない時もあります。そういう時は同僚の先生方に相談すればよいのです。

宣伝になって恐縮ですが、先生方の授業アドバイスを通じて学んだ授業改善の秘訣をまとめた本を “授業アドバイザーが教える「授業改善」30の秘訣”として、4月に明治図書出版から発刊することになりました。手に取っていただければこれほどうれしいことはありません。

今回でこの連載を終わりますが、愛される学校づくり研究会ではこれからも授業や授業検討についての研究を続けていきます。これまでの研究を通じて開発されたICTを活用した「授業検討ツール」については、現場での活用を通じてより実用的なものにしていきたいと考えています。今後の「愛される学校づくりフォーラム」でも、授業検討のツールとして進化した姿をお見せできることと思います。その時を楽しみにしています。

(2015年3月30日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。