愛される学校づくり研究会

★人間には誰にも知的好奇心があります。仕事のため、趣味のため、実益のためなど、様々な目的で我々は学びます。学校のころから勉強が好きだった人も、社会人になってから学ぶ楽しさを感じた人もあるでしょう。ここでは、その楽しさを感じることになったきっかけを振り返り、学ぶことの楽しさを教えてくれた人やことについて紹介します。

【 第7回 】理科好きの少年になったわけ
〜新城市教育委員会学校教育課 参事 牧野 暢二〜

私が教育実習で市内の小学校にお世話になっていたとき、教頭先生(A先生)から、「子供が、知りたくて、わかりたくて、たまらなくなるようにしてやるのが教師の仕事です」と指導をいただきました。その言葉の印象は強烈で、自分の教師生活30年、そんなことを胸に努力してきたものですが、それほどまでの授業ができたかどうか甚だ疑問です。

さて、私が小学生の時、A先生は隣のクラスの担任の先生でした。当時新城市立八名小学校はソニーの理科教育助成を受けており、理科がご専門であったA先生は学校の中心としてご活躍で、他のクラスの実験を指導されたこともありました。
 そのおかげもあって、理科の授業は実験がたくさん組み込まれ、実験好きの自分にはとても楽しい時間でした。美しいパイレックスのフラスコや、ぴかぴか光る金属の器具、スイッチやメーターが並んだ機械を見るだけでわくわくしました。

1年生の時から実験観察手法を学んだ我々は、高学年になるにつれて、自らの力で実験方法を考えることを求められました。
 そんな中で、私は小学6年生の時に、「知りたくて、わかりたくて、たまらない」状態になったことがあります。「カビは、どのようなときに繁殖するか」という問題でした。当時の教科書にはカビが教材になっていたのでしょうか、40年も前のことなのでわかりませんが、一生懸命追究した記憶があります。
 最初の実験でパンをカビさせてみると、温度と水が関係していることはすぐにわかりました。しかし、最適な温度と湿気はどのくらいなのか、光はあった方がいいのか、ない方がいいのか、様々な疑問が浮かんできました。温度は高すぎてはいけないし、湿気も水浸しではいけないような気がしました。光は予想もつきませんでした。
 これらを場合分けして、一気に実験しないと次の授業に間に合いませんでした。そこで、土曜日の午後を実験に当てることにしました。自分の班のメンバー6人でやろうとしたところ、理科好きの友達も1人手伝ってくれました。

<場合分けの条件>(記憶の範囲で)
  温度・光  冷蔵庫、教室(日なた、日なた暗箱、日陰)
  湿気    なし、少しあり、水没
  空気    入れ替わる、少し入れ替わる、入れ替わらない

実験は、食パンを切ったものを給食のプリンカップを洗ったものに入れて行いました。
  熱した鉄串でカップに穴を開けて、空気が少しだけ入れ替わるものを作ったり、メスシリンダーで水分の量を微妙に変えたり、パンの下に脱脂綿をひいて水浸しにならないようにしたり、様々な準備ができました。これらを理科室内の様々な場所において、月曜日を楽しみに帰宅しました。
  月曜日には結果は出ていませんでしたが、1週間程度で見事に結果が出ていたように思います。実験結果を班で模造紙にまとめて発表したときに、クラスのみんなが驚いて大きな拍手をしてくれたことは、今でも記憶にあります。それからますます実験好きの小学生になっていったことは間違いありません。

このときの担任の先生はB先生です。B先生も私が教員になったとき「子供が、知りたくて、わかりたくて、たまらなくなるようにしてやるのが教師の仕事です」と同じことをおっしゃいました。
 おそらくA先生とB先生は常々そんな会話をしていたのだろうと思うのです。この先生方に、私は学ぶことの楽しさを教えていただきました。

(2014年11月25日)

学ぶ楽しさ

●牧野 暢二
(まきの・ようじ)

昭和60年4月より新城市の小学校で教員生活を開始。小学校教諭、愛知教育大学附属養護学校教官、新城市教育委員会学校教育課指導主事、教頭、新城市立作手中学校長を経て新城市教育委員会学校教育課参事として勤めている。 2度目の教育委員会勤務であるが、立場を変えて、教師力の向上、授業力の向上はいかに進めるべきか思案中。指導主事時代には教育の情報化を担当し、今も現場からは情報化についての相談をいただいている。デジタルとアナログのよさを生かしていきたいと常々思っている。