愛される学校づくり研究会

★日々行われている授業には、私たち教師に「元気」や「気づき」を与えてくれるすばらしい風景がたくさんあります。そんな風景を体全体で感じる時、そこには必ず素敵なほほえましい子どもの姿があります。大成功を収めた授業、大失敗に終わった授業、意外な展開に胸が高鳴った授業など、それぞれの教師が伝えたい心に残る授業の一コマや、授業があることで輝く学校現場の風景などを紹介します。

【 第4回 】めざす授業 起承転結
〜大府市立東山小学校 小竹紀代子〜

新任の学校は、道徳教育の指定校でした。「子どもたちの本音を引き出す道徳授業を基盤にして、道徳的な実践力につなげる」というのが研究主題でした。子どもたちが葛藤する資料選定が大事で、資料を選ぶのにも時間を割いていた記憶があります。指定2年目で、10月に発表会をすることになっていました。1年目の積み上げがないところで、それも道徳の授業についてよく分かっていないところで研究授業をすることになりました。見かねた他学年の先生が、私に声をかけてくださいました。「わたしの家に来て、一緒に指導案を考えましょう。」その先生は、毎日一枚文集を発行していました。「一枚文集は、わたしの教室での根底なの。」と話してくださいました。そして、子どもたちの様子を思い描きながら「プリントを配るときに、どんなことが書いてあるかな。なんて、子どもたちに期待感をもたせて配るといいよ。」と具体的に教えてくださいました。新任の学校は、「一枚文集なんて、総ての人ができないことをやるべきではない。」という雰囲気のある学校で、どちらかと言えば学校の中で孤立感のあったその先生の言葉が、心に残っています。
 中堅やベテランの先生に授業を研究指定校の新任ということでよく見せていただきました。いちばんインパクトのあった授業は、教師が一言発問しただけで、子どもたちの発言がつながっていく授業でした。たまに教師の出場があるだけで、子どもたちだけで進めていく授業でした。「すごい。」と思いました。そのとき、めざす授業は「子どもが意欲的に発言し、意見がつながる授業」になりました。

20代で、2回の産休育休をとり、子育てをしながらの30代がはじまりました。子育てが少し落ち着いた30代後半、「自分の教師としての立ち位置」を考えました。「自分の学級に子どもたちに、わたしはどんな力を付けることができるのだろう、自分が子どもたちに保障できることは何か。」。国語科ですので、子どもたちが表現することに重きを置きました。新任で出会ったあの先生のことが心のどこかにありました。また、学生のころ灰谷健次郎さんの「兎の眼」を読んで、そこに出てくる小谷芙美先生のようになりたいと思ったのでした。そして、教職に就いてからは、「1ねん1くみ せんせいあのね」にあるような生き生きとした感性を子どもたちから引き出したいと思っていたのです。一枚文集を発行する日々が続きました。1単位時間での全員発言にこだわったこともありました。今思うと、子どもたちには気の毒なことをしたかな。
 法則化の勉強をしてみえた同じ学校の先生がされた社会科「沖縄のくらしの授業」はインパクトがありました。「沖縄から取り寄せたサトウキビが曲がっていること」から、沖縄の気候について気づきを引き出す授業でした。いい授業のためには、材料が大事だと見せられた授業でした。特別な日の授業を、特別にやることにこだわっていたころでした。

校務主任になってからは、他の先生の授業を見る機会が多くなりました。学校訪問で、特別研究授業をすることになった50代先生の授業を見てあげてほしいと頼まれたのは、いい機会でした。これまで、授業は自分と同じくらいか、自分より上手な人ばかりだと思ってきました。ところが、たいへん不遜な言い方をすれば、「エーッ、これで授業なの」というような普段の授業でした。子どものことを見ないで授業が進んでいく、そうかと言えばたった一人を相手にして他の子が自由にしている授業、そんな印象でした。学校訪問前日の日曜日に、指導案に沿ってどこで発問するか、板書もどこでどう書くか決め、子どもたちの反応について検討し、リハーサルのようなことを行って当日を迎えました。ことのほか、上手く進みました。その先生が「こんなにうまくいった授業は初めてでうれしかったです。」とおっしゃいました。よかったと素直に思いました。
 校長になってからは、ホームページにアップすると職員に伝え、自由に授業を見に行っています。見るのは普段の授業です。日々積み重ねる授業、特別ではない、普段の授業こそが大事だと強く思うようになりました。学習課題を「めあて」札を使って明示し、最後のまとめがある授業。子どもたちが顔をあげている授業。子ども同士の関わりがある授業。分かったという笑顔がある授業。めざす授業に、まだ道半ばですが、子どもたちのために教師が変わらなければと思う今日です。

教員生活、あと4年と8ヶ月。めざす授業が、これから変わるのかどうか不明ですが、研鑽を積んでいこうと心に決めています。「愛される学校づくり研究会」のみなさんが、これからもわたしに与える影響は大きいと思います。

(2014年7月21日)

準備中

●小竹 紀代子
(こたけ・きよこ)

現在、大府市立東山小学校校長。大学時の「小学校国語教育」の授業で取り上げられた「一つの花」に感動し、読解の授業実践をしてきた。1年生の担任をしたときは「1ねん1くみ せんせいあのね」のような文を書かせたいと願い、一枚文集を出してきた。しかし、未だに発展途上である。