愛される学校づくり研究会

★日々行われている授業には、私たち教師に「元気」や「気づき」を与えてくれるすばらしい風景がたくさんあります。そんな風景を体全体で感じる時、そこには必ず素敵なほほえましい子どもの姿があります。大成功を収めた授業、大失敗に終わった授業、意外な展開に胸が高鳴った授業など、それぞれの教師が伝えたい心に残る授業の一コマや、授業があることで輝く学校現場の風景などを紹介します。

【 第10回 】ストーリー性を重視して数学をつくり上げる授業
〜小牧市立岩崎中学校 石川 学〜

授業をつくることに腐心し続けた教師生活である。端から見ればそんなことと言われるかもしれないが、それを追い求めてやってきたことには違いない。

私は、中学校の数学教師である。数学と言うと、生徒たちにとっては厄介で難しい教科の一つであることが多い。だからこそ、生徒たちにとって理解しやすい、いい授業がしたいと思い続け、日々の授業実践を愚直に行ってきた。

そんな中で、大切にしてきたことは、ストーリー性を重視した指導をすることであったり、生徒自身が数学をつくり上げる授業をすることであったりした。ストーリー性もつくり上げることも、どちらも同じようなことであると考えるが、要は流れを重視した指導である。
 教科書にあるから、その内容を教えるのは当たり前のことである。しかし、そこにストーリー性がなければ、1時間の授業は点にしかならない。その1時間ずつの授業をつなぎ、線として機能させることが大切であり、それをつなぐのがストーリー性である。そうでなければ、授業はブチブチと切れたものになり、何ともつまらないものになる可能性が高いものである。
 また、教科書にあることを一方的に教えられるような授業では、生徒たちにとっては受け身にしかならず、参加意欲も低くなる。数学を考えながら新たな知識を得たり、考えたことを自分たちでまとめ上げていったりするような授業は、生徒たちにとっては能動的でおもしろみを感じるものになる可能性が高いものである。

2年生の多角形の導入での指導を例にすると、最初に「いろいろな2直線を書きましょう」と投げかける。すると、交わる2直線と平行な2直線になる。平行な2直線は何かを考えることはできないが、交わる2直線は対頂角の性質を考えることができる。次に、「その2つの図に1直線を加えて、いろいろな図を書きましょう」と投げかける。平行な2直線からは、3直線が平行な図と2直線に1直線が交わる図ができる。交わる2直線からは、3直線が1点、2点、3点で交わる図ができる。2つを統合すると、3直線の交点が0点から3点までの図ができる。0点の図では平行線が増えただけで何も考えられない。1点の図では対頂角の拡張を考えることができる。2点の図では平行線の性質である同位角や錯角の関係を考えることができる。3点の図では三角形の性質を考えることができる。このように、流れやストーリー性を意識して指導することで、1時間1時間の授業が切れたものではなく、つながったものとして生徒たちは認識したり、自分たちで数学をつくり上げたりしているような授業づくりができるものである。
 また、1年生の平面図形の指導を例にすると、「1点を通る線をたくさん書きましょう」と投げかける。すると、直線や曲線がたくさん書かれるはずである。次に、「2点を通る線をたくさん書きましょう」と投げかけると、曲線はたくさん書けても、直線は1本しか書けない。教師が「2点を通る直線は1本しかない」と単にことばだけで教えるよりも、生徒自身で1本しか書けないことを体感し、そのことを生徒のことばを引き出しながら文にまとめていけば、数学をつくり上げていくような過程を経ながら授業づくりをすることも可能である。

若手の先生の授業を見ていると、1時間の授業をするのに必死で、単元の流れなどを意識した指導になっていない授業がある。上記の例のように、ストーリー性を意識した授業をつくり上げることを考えていってほしいと願う。それが、生徒たちの目が輝き、意欲的に授業参加したり、数学的考え方をも自然に身につけていったりするような授業になるものと信じる。

(2015年3月23日)

準備中

●石川学
(いしかわ・まなぶ)

1981年に教員となり、小牧市内の中学校で、数学、特活、進路、生徒指導に邁進。2000年から4年間市教委指導主事を務め、生徒指導、いじめ・不登校対策、外国人児童生徒教育、英語教育など多方面に尽力。中学校長を務めた後、2010年より市教委学校教育課長。2013年より市内の中学校長として学校経営の充実に邁進中である。