愛される学校づくり研究会

★日々行われている授業には、私たち教師に「元気」や「気づき」を与えてくれるすばらしい風景がたくさんあります。そんな風景を体全体で感じる時、そこには必ず素敵なほほえましい子どもの姿があります。大成功を収めた授業、大失敗に終わった授業、意外な展開に胸が高鳴った授業など、それぞれの教師が伝えたい心に残る授業の一コマや、授業があることで輝く学校現場の風景などを紹介します。

【 第1回 】学ぶ意義を問いかける授業開き
〜大府市立大府中学校 近藤肖匡〜

中学校において、新しい学級・そして授業開きを始めるときに、担任として、または教科担当として、「こんな学級にしたい。こんな授業にしたい」と一方的に話す教師が多いと思います。この1年、どのような学級、さらにはどんな授業を目指すかを子どもと共有することはとても大切なことです。でも、授業に出会う仕掛けを変えることで、子どもの期待感が大きく変わる授業開きを紹介します。

中学2年国語での授業開き。
 教師が、チャイムが鳴ってすぐに、簡単に自己紹介をします。そしてすぐに「明日」と板書します。その後、紙を配り、「明日から連想するものをできるだけ多く書きなさい。」と指示をします。緊張感のある初めての担当の授業ですから、突然の指示に従います。5分ほど教師は、時間をとり、子どもがどんなことを連想するのか全員の紙を視てまわります。5分後、教師は次の指示を出します。「列ごとに立って、黒板に前から順番に、『明日』について連想したことを書いてもらいます。前から2番目の人は、前の人が連想したこと以外を書きます。3番目以降はそれを繰り返します。2分間で多く書けた列にシールをプレゼントします。」するとどうでしょう。この指示で、さらなる緊張感とともに、前後の子ども同士の関わりを増やし、さらには競争心も駆り立てます。子どもは前後の紙を見ながら、必死に「明日」について連想します。2分後、教師は全員席に着かせると、連想したものをクラスで共有しました。「へえ。」「あっそうか。」「なるほど。」の感嘆の声があちこちから聞こえます。

全体の共有が終わるとすかさず教師は、
「紙だけでは自分の考えは広がらない。みんなの考えを伝えたり、感じたりするからこそ教室は必要であり、授業をする意味があるんだ。」

この言葉に、教室のさまざまなところから拍手がおきました。さらに、教師は次のことを仕掛けます。机の下から、ミクロスコープを取り出しました。反応の良い子どもが、「先生、今は国語の授業でしょ?理科の授業と違うよ。」と突っ込みを入れました。すると、教師は「列ごとに一人ずつミクロスコープをのぞきます。待っている間に教科書の『明日』という詩を構成を考えながらノートに写します。」と指示を出します。ミクロスコープをのぞく子どもは、「何か書いてある」「文字が書いてある。」「詩だ。」「うそ?うそ?」とまた驚きの声がミクロスコープをのぞく生徒から続々と出ます。

「実はプレパラートには、みんながノートに写した詩を書いた谷川俊太郎さんの詩が刻まれています。次の時間からは、ミクロスコープでのぞいたように、『明日』という詩の行間を感じながら、次の授業をしていきます。」と言って、授業が終わりました。

授業開きというと、「ルール」や「規律」、さらには「評価」、ときには「連絡事項」になってしまいがちですが、安心して授業を受けたいと思うような、子どもの鼓動が高鳴る学級開きにしたいものです。

《参考》授業で使ったミクロスコープとは、ポエミクロというもの。

(2014年4月21日)

準備中

●近藤 肖匡
(こんどう・ゆきまさ)

平成8年に教職をスタート。中学校で17年勤務。現在は大府市立大府中学校でホームページ担当。現職主任。専門は数学。「生徒が、そして学校が元気になる」仕掛けづくりを奮闘中。平成17年に文部科学省で研修してから、ユニバーサルデザインを意識した授業づくりに目覚めた。特別支援教育に関わる著書もいくつか手がけている。