愛される学校づくり研究会

校長塾 経営力を高めるためのポイント

★このコラムは、平成25年3月から9月まで、26回にわたり、日本教育新聞に連載をしてきた「校長塾 経営力を高める最重要ポイント」の続きです。「ぜひ継続を」という声をいただき、この場をお借りすることにしました。校長としての様々な実践事例を紹介しながら、私が考える学校経営力を高めるためのポイントを示していきたいと思います。主な対象は、若手管理職やミドルリーダーのみなさんです。「なるほど!こういう方法があるのか」「このようなことに心掛けるべきなのか」と、心の中にストンと落としていただけるコラムになるようにいたします。どうぞよろしくお願いします。

【 第5回 】思い切って悩みを相談
      ―真の連携を実感した出来事―

前回に続いて小牧市立光ヶ丘中学校長のときの出来事です。

「職場体験」は県内どこの中学校でも行われています。しかし、200名を超える生徒の受け入れ事業所を確保したり、事業所と段取りしたりすることは大変なことです。例年、引き続き受け入れていただける事業所はたくさんあるのですが、学校から出向き、生徒の活動の詳細について相談する時間は、毎年必要です。事情により、「今年は、受け入れは難しい」という事業所もありますので、新規開拓をする必要もあります。

こうした準備を担当学年職員は授業後に行います。通常であれば部活動の指導をしている時間です。事業所担当者の方の都合もありますので、学校の都合ばかりをいうわけにはいきません。「職場体験」はとても価値ある行事ですが、こうした大変さをあらためて職員から聞き、校長として細部まで心が及んでいなかったことを反省しました。他に同じような価値を生み出す行事はできないものかとも考えました。

小牧市では学校と地域を結ぶ役目を担う「地域コーディネータ」という立場の人を、学校が地域の方にお願いすることができます。思案しているときに地域コーディネータさんにお会いする機会がありました。頻繁にお会いしているので、私の顔色が優れないことはお見通しです。「職場体験」そのものを中止しようと考えたことも含めて、悩みを率直に話しました。返ってきた言葉に驚きました。

「なぜ、そういうことを私に相談していただけないのですか。先生方の大変さはよくわかります。お母さん方でチームを組んで事業所を回りますよ。受け入れ先に聞いておかなければならない質問項目を教えてください。それと、あと何人の生徒さんの受け入れ先が必要なのですか。地域の人に声をかけて確保してみます」という言葉が返ってきたのです。学校の行事ですから、学校で準備をしなければならないと思い込んでいましたので、まさかの返答でした。もちろん喜んでお願いしたことは言うまでもありません。

依頼から一か月ほどの時間が経ったと思います。すべての事業所と連絡がとれ、すべての生徒の受け入れ先が決まりました。担当学年職員も動きはしましたが、それまでかかっていた時間とは比べものになりません。自分たちが出かけるのではなく、地域コーディネータさんから進行状況を聞くことが仕事となったのですから。

私は職場体験中にいくつかの事業所を回りました。数人の社長さんから同じように言われました。「お宅の学校だけだよ、お母さん方が頼みに来たのは。親が学校のことをよく分かっているというのはいいことだねえ」と。

地域コーディネータさんに思い切って悩みを打ち明けてよかったとつくづく思いました。真の連携を実感できた出来事でした。

(2013年12月9日)

準備中

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1956年生まれ。1979年教員スタート。小学校、中学校教諭を経て、1998年教頭、2004年校長に就任。2007年より愛知県教育委員会指導主事、主査、海部教育事務所長を経て、2012年に小牧市立小牧中学校長に就任。学び続ける子供を育てるために、地域・保護者と一体となって「親子で学ぶ小牧中特別講座」など独自の取り組み実践中。
著書には、「玉置流・学校が元気になるICT活用術―ICTは学校力向上ツール 」(プラネクサス)「学校を応援する人のための学校がよくわかる本(1)(2)」(プラネクサス)「スペシャリスト直伝!中学校数学授業成功の極意」(明治図書)など多数。
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