愛される学校づくり研究会

【第3回】学校はどのように情報化していくべきか(第3回)

※インタビュー形式で、3回に分けてお伝えします。
 

Q.最近、学校によってはコンピュータアドバイザーが入ったことで、「その人にやってもらえばいい」というスタンスの先生が見受けられ、デメリットになっているという話も聞きますが。

interview_face.gif先生の中には、何かをがんばってやってくれた人がいたとして、その人が抜けるとその人が悪いというふうに考える人もいるんですね。その人はがんばったのだから決して悪くないですよね。そのがんばっている人の横でやらなかった自分が悪いんだということに気づかない人がいるんです。強いては、その人をそういうかたちでしか使っていない管理職が悪いということになる。
 だからアウトソーシングしていい仕事と、いけない仕事があって、それで失敗しているところと、大成功しているところがあるわけです。
 教員とティームティーチングするときは教員がT1になる、研修会では、誰か教員がリーダーシップをとり、その人に決断に入ってもらう、というふうにやればいいんです。デメリットになっているという場合も確かにありますが、強い決断のもとでやっているところはいくつもあります。
 

Q.コンピュータ担当の先生も同じで、コンピュータができる人にすべて負担がいってしまうようですね。

interview_face.gif例えば学校のホームページに、情報を載せていくとなると、それは誰の仕事になっていると思いますか。数年前から教頭や教務主任の仕事になっているんです。学校発信の情報の責任者は校長だけど、責任を持って作るのは教務主任なんです。でも実際はコンピュータのできる人が担当になっているところもある。コンピュータができる若い先生が、責任ある情報を発信していいのかどうか。情報の責任とITが使えるということを混同しているんです。
 コンピュータに強いから担当になればいいということではないんですね。それを誤解している地区では、コンピュータ主任なる意味不明の役職がある。校務情報化主任とか、情報教育主任といった名前にすべきですね。コンピュータ業者との折衝から何から、すべてをその人がやる。そこに詳しい人がいるうちはまだいいんですが…。それも含めて、組織をきちんと動かしていくのが管理職の課題だと思います。
 

Q.学校の情報化を動かしていくのは、教頭や教務主任ということですか。

interview_face.gifそうです。情報化にはどうしても最初に壁があるんです。その壁が高いからみな嫌になってしまうんですね。
 例えば調べ学習ですが、はじめはいい情報に当たらない。だから調べるのに2時間も3時間もかかる。そんなに時間がかかっていたら少ない授業時間の中でやりたくなくなるわけです。でもそこががまんのしどころ。はじめに2、3時間かかってでも力をつけさせさえすれば、そこから後は随分時間が得するんです。そういうことを考える算出基準がないんですね。目先の壁に弱いから。だから強い決意、つまり管理職のリーダーシップが必要になるというわけです。
 

Q.中学校に比べ、小学校では子どもとかかわっている時間が多いため、職員室でパソコンにさわる時間がないと聞きますが。

interview_face.gifコンピュータにさわる時間がないというのは、そういうつもりがない学校でしょう。コンピュータにさわる時間はたくさんあります。ただそれが、小学校では、教育の情報化の3つのうち、3番目の「校務の情報化」に費やされることがほとんどない、ということは言えます。それが小学校の特徴です。
 なぜ小学校で「校務の情報化」が進まないかというと、子どものことは、担任の自分が一番知っているからなのです。自分がデータベースだから、ほかに情報をあげる必要がないんです。1番目の「情報教育」と2番目の「教科におけるIT活用」については、中学校より小学校のほうがはるかに進んでいます。
 

Q.学校業務を支援するソフトウェアを導入しても、公式文書として印刷物が活用できないのでは、といった意見も聞かれますが。

interview_face.gif行政の情報化を進めるのは、ここ数年の国の課題です。公立学校から発行される文書等も、公文書です。情報化は当然です。いまどきこれを手計算していたり、転記に次ぐ転記を繰り返していては、ミスが生じるばかりでなく人件費の面から見ても、コスト上問題があります。
 教員の多くは、これらの書類が大切な書類であることを知っています。そのため、ミスをしないよう、何度も見直し、数時間あるいは数日かけて対応しています。提出後は保管され、まれに参照されるだけの書類に対して、忙しくて授業準備にあまり時間を割けない教師がこうやって時間を使っている現状は、教育全体のコストから見てもまったく合理的ではありません。
  

Q.最後に、学校にパソコンやネットワークを導入するにあたって、気をつけるべきことはどんなことでしょう。

interview_face.gif組織にグループウェアを導入するということは、多かれ少なかれ組織の仕事の仕方を変えるということになります。それは、よりよい組織のかたちを求める上で必要不可欠な努力ですが、これを回避していてはいいかたちにはなりません。利用する学校側に、この決意が必要です。具体的には、管理職のリーダーシップにかかっています。
 システムの側にも問題があります。学校現場のニーズにあった、現実的で使いやすいシステムの提案が必要です。やみくもに機能ばかりが多く、活用度が低いシステムでは、価値がありません。
 いいシステムを導入し、学校が努力したいときに、今度はサポートの小回りが大切になります。生じている問題は組織の運用の問題か、機能の問題か、などの切り分けが必要です。しかしいずれの問題であっても、それは組織にシステムがピッタリになっていないということの証です。そこを埋めるためのチューニングをする、学校をよく知った小回りのきいたサポートが大切です。これからはサービスの時代だということを念頭においた導入を考える必要があります。
 

(2003年9月29日)

堀田 龍也先生column2_title.gif

●堀田 龍也
(ほりた・たつや)

静岡大学情報学部情報社会学科助教授。学校現場での情報教育の授業研究、カリキュラム開発、情報教育教材の開発などにかかわる。大学の研究室にいる時間よりも、学校現場に出かけていたり、政策会議に参加したりしている時間の方が長い。